FUJIYOSHIDA DIARY MAGAZINE

教育

原田 陽子

2021.07.13

流しの洋裁人の「流れるママ日記」 05

ジャガイモは富士吉田市のソウルフード!?

先日、大家さんがジャガイモを掘らせてくれました。

このジャガイモには個人的に深い思い入れがあります。

4年前、移住したばかりの頃。引っ越しやペーパードライバー講習に有り金をはたいていたので、究極にお金がない状態。その危ない雰囲気が顔に出ていたのか、隣に住む大家さんが「畑にあるジャガイモ、いくらでも掘って食べていい」というまさかのテイクフリーを発令してくださいました。

さすがに気がひけて自ら掘るまではいかないまでも、大量にお裾分けしてくださるので、2週間くらいはジャガイモを電子レンジでチンして塩をかけたもので生きておりました。

市内の方々から仕事を頂いてなんとか生活も安定してきた頃、スーパーに行くと小芋がさかんに売られていました。そして小芋の総菜も並んでいます。

「なんだろう。なぜこんなに小芋が押しなのか? これはきっと食文化か何か所以があるはずだ」と。

そこで大家さんに聞いてみると、富士山にまつわる風習であることがわかりました。当時聞いた話がおぼろげな記憶だったので、こちらに参考資料を。

〈ジャガイモとひじきの煮物〉

富士登山の安全と無事、暑い夏の健康を祈願するものとして、富士山山開きの7月1日に食されている煮物。御師の家では、山開きの日にこの煮物を作って、富士山や神棚に供えており、その習慣が一般家庭にも広まったといわれている(参考*1)

ここからはあくまで私の想像が入りますが、神道系の行事ではよく海のものと山のものを供物するので、ひじきとジャガイモもそれに習ってなのかなと。

でも、なぜジャガイモなのか…大家さんがよく話してくれる作物の話のなかに、「ここらは溶岩がごろごろしていて畑を作るのもひと苦労で、おまけに稲もなかなか育たなかった。ジャガイモはそんな土地でも昔からよく採れたからなぁ」と聞くので、きっと他所でよくある五穀豊穣の感謝をする新嘗祭的な立ち位置もあるのではないかなと思っています(よくご存じの方がいればご意見お寄せください! 調査不足ですみません)。

翻って私の生まれ育った岡山県では富士山もないので、7月にはとくに何もなく、9月には五穀豊穣を感謝する意味で子どもたちがとる奉納相撲があったり、年末には神楽師一団が近隣の街から来て、踊り納めをしてくれたりしていました。

2月には「オオモモテ講」という鬼退治の伝説に基づいて矢を射る行事が執りおこなわれ、大豆をひし形に固めたものや、大根の酢の物、くさぎの煮物などを食べました。同じ日本にいても土地土地で積み重ねた文化があるのだなぁと思います(参考 *2)。

富士山とのつながりを濃く感じるジャガイモ。富士山があるからこそ生まれた富士吉田市ならではの食文化。

そんなわけで、ジャガイモはうどんに次ぐソウルフードなのではないかと思っています。

*1 https://www.pref.yamanashi.jp/shokuhin-st/shokuiku/yamanashinoshoku_tokusen47.html

*2 https://www.okayama-jinjacho.or.jp/search/18294/

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原田 陽子

流しの洋裁人

1984年晴れの国岡山生まれ。武庫川女子大学生活環境学科卒業後、岐阜のアパレルメーカーの営業職に。「服は機械で自動生産されると思っていた」を耳にしたことをきっかけに、全国各地へミシンや裁縫道具を持参し、その場にいる人を巻き込みながら洋裁の光景をつくる活動を、2014年9月から開始。現在、山梨県富士吉田市にベースキャンプを構え、全国へ流している。洋裁という行為を媒介に、人や場、文化の廻船的役割を担うことを目指している。

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