2014年、ふじよしだ定住促進センターの前進である(一財)富士吉田みんなの貯金箱財団が企画運営し、富士吉田市でデザインコンペティションが開催された。その名も、「富士吉田地域デザインコンペティション」。
人材不足が叫ばれる地方において、クリエイティブでポジティブな仲間を富士吉田市に集めるための企画として開催された当コンペは、プロダクト部門、物件改装部門、プロジェクト部門の3つの部門に分かれて開催された。
今回ご紹介するのは、物件改装部門を通じて実際に改装が施された「旧富士製氷改修プロジェクト」。
対象物件となった「旧富士製氷」は、当時富士吉田みんなの貯金箱財団が拠点として活用していたスペースであり、元々製氷工場兼倉庫として使われていた迫力のある大規模物件。コンペでは、この施設の一部を保育所やシェアスペース等として活用するための設計案が募集された。
物件改装部門だけでも約120件の応募があり、その中で最優秀賞を獲得したのが東京理科大学坂牛研究室の案であった。
以下、設計メンバーのコメント。
『 閉鎖的な工場にトンネルのような穴を開け、トンネルの壁天井を杉仕上げとし、その仕上げを各階の内部に連続させた。異なる空間への繋がりを重視したデザインである。用途は1階保育所、2階コミュニティキッチン、3階NPOオフィスとなった。機能的にもデザイン的にもより開かれた建築として再生する試みであり、今後日本のいたるところで発生する(している)ビルディングタイプである。』
設計チームのリーダーであった中川宏文さんは、その後地域おこし協力隊として富士吉田市に移住。コンペから生まれた繋がりから、東京理科大学坂牛研究室とふじよしだ定住促進センターとの共同研究プロジェクトが立ち上がるなど、連携は年々広がりを見せている。中川さんを中心に、研究室所属の学生なども富士吉田市に足を運び、市内の物件改修プロジェクトをいくつも手掛けている。
中川さんが主宰する「Fuji Design Lab」では、共同研究などで扱ったプロジェクトが掲載されています。
Former Fuji Ice Plant Conversion – 旧富士製氷改修プロジェクト –
施主:一般財団法人富士吉田みんなの貯金箱財団( 現 ふじよしだ定住促進センター)
設計:東京理科大学坂牛研究室(中川宏文/大村聡一朗/佐河雄介)
施工:株式会社滝口建築
撮影:川崎璃乃