馬場 亮河

2026.02.12

ババイズム「フジ・アーカイブ②-2:富士吉田のコモンズ(財産区)」

第二回「フジ・アーカイブ②-2:富士吉田のコモンズ(財産区)」

しかし、それだけが富士吉田のコモンズではありません。
富士吉田には「財産区(ざいさんく)」と呼ばれる、世界的にも稀な形態の地域コモンズが存在します。

・財産区とは

財産区とは、市町村の中にある特別地方公共団体という特殊な組織で、昔から地域の住民が共同で管理してきた山林や土地などの財産を、今も地域で守り続けるための特別な仕組みです。

日本各地で、明治時代に町や村が合併する際「行政は新しい町村で行うが、先祖代々受け継いできた財産はローカルで管理したい」という住民の強い意志と、政府の方針との妥協点として財産区という仕組みは生まれました。財産区は法人格を持つ独立した組織で、その財産は財産区自身のものであり、住民個人や特定の集団のものではありません。そのため、企業のように利益を住民に分配することはできず、あくまで財産の維持管理が主な役割となっています。現代の所有論では考えにくいですが、私的所有と公的所有の間に位置する、いわば<共的所有>をするのが財産区なのです(こうした山を手入れすることは災害などを防ぎ、公共の利益に繋がるので<公>寄りですが)。

要するに財産区は、地域の大切な”自然環境”という共有財産をローカルの人々が責任を持って守り続けるための仕組みなのです。

・富士吉田の財産区

富士吉田市の場合、財産区は主に山林を所有しており「森林の保全・育成を目的」として活動しています(財産区議会資料より)。

現在、富士吉田市には大明見財産区、古屋財産区の2つの財産区があり、それぞれが12名の議員からなる財産区議会を持ち、主に山林の手入れ(薮刈や歩道整備など)を年に最低10回、時に12回程行っています。

富士吉田市の財産区は、明治8年の大明見村と小明見村が合併したことから始まります。そう、現在の富士吉田市は”全く異なる様々な村がくっついて”成り立っているのです!

明治9年の官民有地区分事業(土地を国のモノか個人のモノに分ける事業)で一旦多くの土地が官有地となったものの、住民の強い反発により明治19年に払下げ願を提出し、明治20年に大部分が払い下げられました。「自分たちのものだ」と愛着がとても強かったことがわかります。

明治22年の市制町村制施行(いわゆる自治体という行政が生まれた法律)に伴い、”先祖代々の財産を守りたい住民” VS ”新町村へ財産を統合したい政府”との妥協により、”行政は新しい町村で行うが、財産は旧来の町村で管理できる制度”が確立し、明治26年に旧財産区としての管理が始まりました。その後、昭和23年に明見町となり、昭和26年の富士吉田市制施行に伴い、地方自治法に基づく新財産区として正式に設立認可を受け、現在に至るまで大明見財産区、小明見財産区、古屋財産区の3つの財産区が守られてきました(小明見財産区は2023年に解散してしまいました)。

・・・

私が富士吉田のコモンズ、とりわけ財産区に興味を持ったのは、ある別のリサーチで小明見在住の方から地域から”今はなき風景”について聞き取りをしているときでした。

彼は流暢な(小)明見弁で、

「4月にお祭りがあっただよ。

そこで子供たちに神輿を担がせて通りを流すっちゃけ。

あん時はすごかったよ。

アイチジク幼稚園で盆踊りを習っちゃ通りを流して。

財産区っちゅうのがそこを運営してただよ。

もう幼稚園はなくなっちまったから、お祭りに子供もいなくなっちまっただけどな。

こればっかしはしょうがねえ。」

(2024年5月聞き取り)

と教えてくれました。

そこで、財産区について生まれて初めて知りました。

調べていくうちに、財産区の人たちがお祭りの賑わいを支えていたのかと思うと<コモンズ>が単なる共有資源の管理を指すのではなく、お祭りのような<コミュニティ>を形成する上でも大事な役割を果たすものなのではないかと考えるようになりました。

そして、大学院の修士論文は財産区について書こうと決心しました。

私の研究スタイルは『書を捨てよ街へ出よう』(寺山修司, 1972)スタイルなので、とにかく地域に丸腰でザブン!と飛び込みました。様々な人の”コネ”を伝い、大明見財産区の議員と繋がることができました。そして<オテンマ>と称された財産区議員の共同作業を中心に参加をさせて貰い、観察し、時にはインタビューを行いました。

〜次回に続く〜

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馬場 亮河

富士吉田市地域おこし協力隊/東京大学大学院生

出生地
コロンビア

プロフィール
大学のフィールドワークではじめて富士吉田市を訪れる。その後、大学連携のプロジェクトやHOSTEL SARUYAでの住み込みインターン、東京との二拠点居住の経験を経て2024年3月から地域おこし協力隊に着任。「アーカイブ」をテーマに地域の生活を記録・発信・研究するべく、フィールドワークに励む。

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