「富士吉田市に移住した人は、実際どんな暮らしをしているの?」
「富士吉田移住のリアルライフ」では、富士吉田市へ移住し、仕事・遊び・創作・自然派ライフを楽しむ人たちへの実録インタビューを連載していきます。
File.7
徐笠(じょ りゅう)さん
PROFILE
台湾出身。台湾の大学で工業デザインを専攻し、2017年12月日本へ留学。日本語学学校へ通いながら勉学に励み、2019年4月東京造形大学大学院へ入学。卒業後、もともと交流の深かった富士吉田で過ごすことを決意。2021年〈シーダ株式会社〉へ入社。
台湾から日本のテキスタイルを求めて
Q. 日本に興味を持ったきっかけを教えてください。
日本に留学するまでは、友人たちと共に立ち上げたWEB制作会社を経営していました。その会社で5年ほど経験を積みましたが、「もう一度モノづくりに関わりたい」という想いから、仕事以外の時間で活動するようになりました。シルクスクリーンの機材を自作し、グラフィック制作を行い、マーケットへ出店したりワークショップを開催したりしました。
その時、台北で日本人テキスタイルデザイナーの展示を見て、日本のテキスタイルに興味を持ちました。それが日本に留学したいと思ったきっかけです。
Q. 日本へ留学するまでの経緯を教えてください。
WEB制作会社の経営方針が変わったこともあり「このままでは自分がやりたいデザインの仕事ができなくなる」と思い、退職を決めました。そして興味を持っていた日本へ留学することに。台湾で日本語能力試験N3に合格し、日本への留学を叶えました。東京都葛西区にある日本語学校へ通いながら、大学院への入学準備を進めました。
Q. 日本に来て大変なことはありましたか?
日本語の勉強が一番大変でした。日本語学校でも、最初の3ヵ月間は先生の話を理解するのが難しかったです。
また、大学院入学前に英語でポートフォリオを書きましたが、教授に「日本語で論文を書けないとダメだよ」と言われ、日本語の勉強を頑張りました。
機屋さんと繋がる場所で活動をしたい
Q. 富士吉田との繋がりが生まれたきっかけは何ですか?
大学院在学中に、テキスタイルデザイナー鈴木マサルさんの『フジヤマテキスタイルプロジェクト』に参加させていただきました。市内の機屋さんとコラボして、座布団の制作を行いました。機屋さんと相談しながら制作を進めていく過程が楽しかったです。
Q. 富士吉田へ移住した理由を教えてください。
大学院卒業後は、台湾に戻るという選択肢も考えていました。しかし当時は、コロナウイルス感染拡大の影響で国を跨ぐのが困難な状況でした。「台湾に戻ったら、次はいつ日本へ来られるか分からない」と思い、日本に残ることに決めました。
機屋さんと繋がって活動ができる場所に住みたいと思っていたところ、富士吉田市在住のグラフィックデザイナーの杉原悠太さんを紹介していただき、杉原さんが立ち上げた〈シーダ株式会社〉へ入社しました。
「デザインの仕事をしたい」という夢を叶え、国と国を繋ぐ架け橋へ
Q. 現在のお仕事や活動について教えてください。
主にデザインを担当していますが、イベント運営の補助もしています。今年の『FUJI TEXTILE WEEK』では、海外アーティストのコーディネーターとして、設営補助を担当しました。
また、台湾の人に富士吉田のことを知ってもらえるよう活動しています。僕が中国語で書いた富士吉田についての記事が、台湾のメディアに掲載されています。
Q. 記事に対して、台湾の人からの反応はありますか?
台湾政府の担当者や一般の方から問い合わせをいただくことが増えました。
そういえば、大学院受験の際、志望動機に「自国と外国を繋ぐ架け橋になりたい」とあまり考えずに書いたのですが、思いがけず今それが叶っています(笑)。
Q. 今後挑戦したいことはありますか?
ハタオリマチならではのことに挑戦したいです。具体的には B反(織りムラ、染めムラ、色やけなどちょっとした難点のある織物)を使ったモノづくり。
生地の両端は“捨てみみ”と言い、一般的には捨てられてしまう部分です。昨年はその捨てみみを使ってクリスマスツリーを作成しました。
自然に癒され、仲間を見つけることができる街
Q. 富士吉田の住み心地はどうですか?
僕の育った台湾の桃園(タオユエン)市と同じく、富士吉田も自然豊かな地域なので、親しみやすさを感じます。僕は仕事で悩むと森を散策するのですが、短時間でリフレッシュできるのでオススメです。休日に近隣の湖へ行くのも楽しいです。
驚いた点は冬の寒さと日照時間の短さですね。日が落ちて外が暗くなると、僕の体内時計が「夜ご飯の時間だよ〜」と知らせてくるので、冬は夕方にはお腹が空いてしまいます(笑)。
Q. 富士吉田へ移住を考えている人へアドバイスやコメントはありますか?
富士吉田のいいところは移住者も快く受け入れてくれるところです。僕もイベントを通して徐々に友人が増えました。たとえば、西裏エリアの〈マサドンキッチン〉はオーナーがアメリカ人ということもあり、英語で話したい人にオススメです。外国人観光客から地元の人まで、いろいろな人が集まっています。
また、富士吉田には自分のやりたいことを頑張っている若い人が多いと感じます。やりたいことがある人にとっては、東京より富士吉田の方が仲間を探しやすいかもしれません。