藤崎 仁美

2024.07.30

草木とともにあるくらし28


7月のくらし

6月からつぼみをのばしていた、庭のエキナセア。7月になるとさらにめざましく成長していきました。

エキナセアの花が咲くまでの様子、とても神秘的です。つぼみがだんだんと進化して、うつくしい模様を見せながら、ピンクの花を咲かせていきます。

この、たくましく変化しながら花になっていく過程は、凄みがあって、目を見張るほど。自然の造形物の完璧さには、かなわないなぁと感じます。

緑色の葉っぱみたいだったところから、大輪の花へと変化していく様子は、何度見ても不思議で、パワフルです。

咲いたエキナセアは、真ん中はハリネズミのようにとげとげしていて、茎は産毛がしっかりしていて、かなりまっすぐした茎。ワイルドな強さを感じます。

たくさん咲いてくれたので、少し摘んで、乾燥させることにしました。風邪のひきかけなどに良いハーブティーにしようと思います。

7月は、山開きとともに富士山の山小屋にも電気が灯って、夜空に浮かぶ星座のようになります。夏の風物詩です。

そんな感慨深い日もありましたが、実は6月末に、なにかの虫にさされてしまって、7月はこれまでないくらいに盛大に腫れるというちょっとした異常事態で始まりました。

畑でちょっと無理して作業した夕方、帰ろうと手袋を外したところで話しかけられ、ちょっと立ち話をしていた直後に、左手の小指になにか血がついていることに気づきました。

あれ?と拭いてみるも血豆になってしまって、そこからはぐんぐんと腫れていって、翌日に病院で注射をしてもらったり、それでもおさまらず水ぶくれになってしまい。

熱の勢いがなかなか止まらなくて、点滴をしてもらったり、抗生物質を飲んだりと、しばらく毎日病院通いをしていました。

最初は頭痛もして気分も悪く、手も真っ赤でパンパンで、起きていられないほどでしたが、1週間くらいして、やっと烈火のような勢いが減速していって、あとはやけどのあとみたいになっている傷口が治癒していくのを待つことになりました。

まだ、小指は完全には曲げられていないのですが、ちょっとずつ治癒していっているのを感じています。

利き手ではないものの、小指が曲がらないし保護しているので左手が使いにくく、普段どれほど左手にお世話になっているかを思い知りました。

虫に刺されると腫れやすいと言われたこともあるのに、ちょっと油断していたことを反省しつつ、強制的に休むことになった経緯にもなにか意味があるようにも感じつつ、静養した7月前半でありました。これからはもっと気を付けて畑で作業しようと思っています。

日常生活に支障がそこまでないほどに回復してからは、草木染めも再開して、いろんな試作もしていきました。

7月の草木染め

さて、7月に染めたもののひとつが、畑と庭で育ってくれたブラックマロウの花です。

6月、茎も葉っぱもフレッシュで、花をたくさん収穫できたブラックマロウ。

7月に入って梅雨だったこともあり、雨が続いたせいか、花が一部痛んでしまうことが増えてきました。

また、私が虫に刺されてしばらく畑から足が遠のいているあいだに、葉っぱも少し枯れているものも出てきて、なんとなくマロウの成長のピークを越えたような雰囲気でもあります。

梅雨明けした今、ここからまた元気になってくれたらいいなと思いつつ、今はゆっくりしたペースで、少しずつ花が咲いています。

ちなみに草木染めには乾燥させておいた花も使うことができるので、6月にためておいた分も使えました。

そんなブラックマロウの花の色を早速染めてみることにしました。

煮ているとだんだん、ちょっと黒豆みたいな、さりげない香りがしてきます。

少しとろみのある染液になりました。そして花びらからはだんだん色が抜けていきます。

このときは、手持ちのリネンのストールやシルクのストール、コットンのハンカチなどを染めていきました。

肉眼で見ている方がより綺麗な色なのですが、ブルーグレーというのは撮影の色調節が難しいのでしょうか。なかなか、肉眼で見るように写真に写ってくれないのですが、シルク、リネン、コットンを染めてみたところ、いろんな色味に染まってくれました。

ブルーグレーもあれば、海のようなみどりがかった青など。どの色も大好きです。

摘んだばかりの花でハーブティーも飲んでみました。お湯を注ぐと、グレーがかったブルーから、どんどんと濃く深い色になっていきます。

そこへレモン汁を入れると、さっと色が変わって、混ざりきるまでのあいだ、美しいグラデーションになりました。

ちょうど、少し前に見た夕方の空と同じような色でした。

このブラックマロウの色を分かち合いたいと思い、まずは草木染めの講座をこれまで受けてくださった経験者の皆さん向けに、ブラックマロウ染めのワークショップを開催しました。

会場の明見湖は、蓮が咲き始めて、とても綺麗です。風が通り抜けて、きもちがよいです。

今回のワークショップでは、早朝に摘んできたいくつかの花と、これまで乾燥させておいた花とを合わせて、染液を作っていきました。3人分なのでお花も多めです。

経験者の方には、お好きなものを持ってきて染めても良いということにさせていただいているので(希望がなければこちらで準備しますが)、今回は各自染めたいものをお持ちいただきました。

同じコットンでも、少しずつ染まった色味に違いがありました。コットンとシルクも、また違った色味で、どちらも大人な色合いが素敵でした。

ブラックマロウはこのような綺麗な色に染まってくれました。どの色もとても素敵でした。

今年の、富士北麓で育ったブラックマロウの色。楽しんでいただけていたら嬉しいです。

参加してくださったみなさんに感謝です。

染めたあとには、同じく摘んだ花をドライにしておいたものをハーブティーにして皆で飲みました。とくにあまり癖のないお味です。フレッシュでもドライでも、あまり味に変化はないように思いました。レモンを少し入れると、写真のような鮮やかなムラサキ色になり、この色もまた綺麗でした。

そしてもうひとつ大事なイベントがありました。

4月からはじまった「いのちの草木染め 基礎講座」の4回目の講座を、7月に無事実施することができました。

今回は、最後の4回目ということで、茜の根っこの色を染めていただきました。

一緒に染液からつくりながら、ほかの植物とも違う香り、染まって変化していく色を感じていただけたのではないかなと思います。根っこだからこその、力強さや、安心感なども、もしかしたら感じられたかもしれません。

茜は煮出すとどんどんと赤くなり、まるで血液のようでもあります。

実際に、茜は浄血の作用や解毒・強壮の効能があると言われています。

今回はコットンのマフラーを染めていただきました。

一回目からだんだんと慣れてくると、染める布がだんだん大きくなっても、落ち着いて染めていけると思ったので、講座の最終回は首に巻けるものにしました。

染めたあとには、自然光のもとに出て行って、染まった色を見てみます。

風がふいて、気持ちよさそうに布がそよぐさまは、とても気持ちがよいです。

染め終わりのタイミングは、各自で決めていいことにしているので、少しずつ皆さんの仕上がりも個性があって、とても素敵でした。

これまで、花を咲かせる枝、そしてよもぎの若葉、くちなしの実、さいごに茜の根っこ、と4回にわたって、植物の色々な部位を染めてみる体験をしていただきながら、

それぞれの部位のもつエネルギーの違いであったり、色の違いだったり、感じていただけたのではないかなと思います。

また、ひと月に一度、こうして集まることで、定点観測のように、景色も変わるし、わたしたちの状況や心も変わっていることに気づけたり、人との関係性も育まれたり。

植物から染まった色を、何色と呼ぶのがいいんだろう?と、これまでの色の感覚がより自由なものになっていくことがあったり。

より、植物たちが身近に感じられるような小さなきっかけになっていたらいいな、楽しいものとなっていたらいいな、と願っています。

参加してくださった皆さん、ありがとうございました。

また今後も、経験者向け・初めての方向けのワークショップや、いのちの草木染めの基礎講座の2クール目を計画中です。

もしご興味のある方は、インスタグラムか、公式LINEまでお問い合わせください。

〈イベントのおしらせ〉

案内①:親子向け草木染めワークショップのお知らせ

8月24日に、こどもたちの探究の学び場のつるラボさんと、都留のコワーキングコミュニティのteracoさんとのコラボ・夏休み企画にて、親子向けの草木染めWSの講師をさせていただくことになりました。

夏休みの思い出に、親子で草木染めをしてみませんか?

参加は都留市民の方でなくても大丈夫です。

当日は、ちょうど会場では納涼祭もあるとのことなので、

ワークショップ後も楽しめるのではと思います。

会場のnicotさんはとても綺麗で、風通しのよいあたたかな雰囲気が素敵です。託児所とコワーキングスペース、素敵なカフェもあり、ワークショップ後にランチしていただくことも可能です。

ご興味あるかたは、つるラボさんのイベントページからご確認ください。

(先着順でのご予約となります)

案内②:「藍の生葉染め単発ワークショップ」8・9月開催

藍の成長具合によって変更があるかもしれませんが、藍の生葉染め単発ワークショップを開催予定です。こちらもご興味ある方はお問い合わせください。

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藤崎 仁美

1989年名古屋市生まれ。大学ではフランス語を専攻。大学在学中、〈フジファブリック〉のイベントのために、はじめて富士吉田へ訪れる。卒業後は愛知県のエンジニアリング会社で総務を経て、社内異動によりNX(3DCAD)の講師を務める。
そのころ、仕事のかたわらで週末京都の学校に半年間通い、草木染めや手織りを体験。染織や自然と親しむ暮らしがしたいと思うようになる。そして、2015年、〈宮下織物株式会社〉へ入社するために富士吉田市へ移住。未経験から、ジャカード織物の機織り職人として6年間勤務し、2022年春に退職。
現在は、染料植物を育てて草木染めをしたり、植物と親しむ暮らしを楽しんでいる。

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