藤崎 仁美

2026.10.31

草木とともにあるくらし 55

10月のくらし

天気がずっと悪かった9月とはうってかわって、10月は天気の良い日が多く、富士山もよく見えることが多かったです。

日常のなかで、運転しているときに富士山がきれいに見えていると、用もないのにそのまましばらく運転し続けてしまうのは、私だけでしょうか。

意味もなくしばらくもう一周してみたり、見晴らしのよいところへむかって、富士山が雲に隠れてしまいませんようにと思いながら車を走らせてみたり。

日々、色々考えることはあるのですが、そんななかでも、パソコンの前で考えているのと、どこまでもひろがった空と山を眺めて思いをめぐらすのとでは、なんだかちがうなぁと思います。

空や山を見ていると、窮屈な感じがなくなって、見通しがよくなって、心もすっとしてくる。なんだか、まっさらに自分の心も眺められるような気さえしてきます。

自分よりももっと大きく、自然の摂理にゆだねて堂々としているものたちを前にして、無意識のうちにそこからいろいろ影響を受けているのかもしれません。

なにをするにも、その時々の環境って、案外大きいなと思います。

それは、空とか山だけではなくて、たとえば尊敬できる人の背中が見られることだったり、道端に無邪気に咲く花の無垢さだったり、夜に浮かぶ月に見守られているように感じたり。

いつもその時々に、わたしたちの人生には、それを支え彩る景色があって、その瞬間はそのことに無自覚なんだけど、ふとしたときにあとからその風景をふと思い出したりする。

今月の私には、ただ広がる空と、色々な表情の富士山と遠くの山々が、わたしの視野を広げてくれるような感じがして、よく眺めていました。こういう時間をほんのすこしでも、とることを大事にしたいなと思いました。

さて、そんな10月は、草木染めにつかう植物の収穫へとでかけました。

友人の静岡のご実家の山のほうまで、臭木(クサギ)の実を収穫させてもらいに行ったのでした。

みかんを育てているところの近くに自生しているそうで、私としてはとっても大好きな実なので、こうして収穫させてもらえるのがありがたいです。

当日は友人のお友達も一緒に来られて、木から実のついている部分を刈り取ったり、そこからさらに実をとるのを手伝っていただいたりと、とてもお世話になりました。友人のみかんや、すだちも収穫していました。

何年も前には、ひとりひっそり草木染めしていたのに、こうして協力してくれる人たちがいてくれたり、経験と機会、またそこから素敵な人たちと出会って色々なお話ができたりして、色々な世界をまた知れたりすることが、うれしいなと思います。

臭木の生え具合がどうなっているかを確認してくれたり、色々道具を使わせてくれたり当日まとめてくれた友人とご家族にあらためて感謝です。

臭木の実は、瑠璃色をしていて、煮だすととても美しい青みのある色を見せてくれます。

市販もされておらず、かつ乾燥してしまうと色も出なくなるので、新鮮なものをすぐに冷凍して、少しずつ使っているものです。

たくさん収穫したような気がしても、実をひとつずつ外していくと、かさはとても減るので、そこまでたくさんにはなりません。とても大事なので、特別なときに使っています。

染めた色はまたいつか載せられたらいいなと思いますが、ひとまず、冷凍しています。

さて、10月は草木染めの講座も開催しました。

まず、基礎講座の2回目では、今の季節にちょうどたくさん生えている、コセンダングサを当日は収穫して、みんなでカットするところから染めていきました。

厄介者扱いされやすいコセンダングサ。花が終わり、くっつき虫になると、知らない間に服にたくさんついていたりちょっと痛かったりしてたしかに大変ではありますが、とてもいい色を見せてくれるので、わたしは好きです。

外来種で、畑に生えるとどんどん増えてしまうので、駆除されるのもわかりますが、小さな花も、よーく見てみると、そのなかにまた小さな花があつまっていて、かわいいです。

蜜蜂やいろんな虫が大喜びで蜜を集めにきていて、自然界では厄介者でもなく、秋の顔ぶれのおなじみの一員です。

基礎講座の2回目では、色々な布の種類によって、色が微細に違うということを体験していただけるように構成しています。

今回はシルクだけでなく、コットン、リネンのコースターと、リネンのランチョンマットを染めていただきました。植物繊維は何も処理しないと染まりにくいので、その下処理も一緒に行いました。

また、使う鉱物の種類によっても少しずつ色味に違いがあるので、今回は2つの鉱物を使って色の発色・定着をしていきました。

これはすべて、同じコセンダングサから染まった色たちです。

秋に似合うような、かわいい色たちが染まってくれました。

秋晴れと、コセンダングサの明るくこっくりした秋らしい色が、青空に映えてきれいでした。みなさんにも喜んでいただけて嬉しかったです。

基礎講座にご参加くださった皆さん、ありがとうございました。

そして、応用講座の2回目のほうでは、今回は輪ゴムだけを使う絞り染めをテーマに、植物は五倍子を使っていきました。

ヌルデの木に虫がすみついてできる、虫こぶの五倍子は、漢方としても使われ、かつてお歯黒に使われていたもの。

虫こぶともなると、なじみもあまりなく、ちょっと親近感は感じにくい素材かもしれませんが、とても大人な素敵な色を見せてくれるので、ぜひ皆さんにも体験していただきたくて、応用講座に入れています。

そして絞りも、輪ゴムだけでも色々できるので、一旦できることの広がりをお話したあとには、自由に絞りをつくっていただきました。

まずは一枚作って染めて絞りをほどいてみて仕上がりを確認してから、もう一枚、もう少し大きめのものを絞って染めていきました。合計で2回染めていくので、結構作業量の多い回だったかなと思います。

皆さんが絞りをつくるのにとても集中してくださったり、とても独創的に柄を作ってくださったり。そのクリエイティビティや、無心になって創作される様子がとても素敵でした。

そして、今回は鉄との組み合わせで、色を染めていきました。

五倍子は、かつてお歯黒にもつかわれていたように、鉄との相性が良いのです。

どんな色になるかなと染めていくと、グレーがかった紫のような、雰囲気のある落ち着いた色に染まってくれました。

みなさんそれぞれに素敵な作品をつくってくださいました。

大人には嬉しい色で、わたしも個人的にトップスをこれで染めたり、縫ったエプロンをこれで染めてみたりしています。

応用講座にご参加くださった皆さん、ありがとうございました。

こうして、秋めいてきた自然の景色のおかげで深呼吸したりしながら、秋に似合う色たちを講座の皆さんと染められた、恵み多くうれしい、そんな10月となりました。

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藤崎 仁美

〈いのちの草木染め〉主宰

出身地
愛知県名古屋市

プロフィール
大学在学中、〈フジファブリック〉のイベントのために、はじめて富士吉田へ訪れる。卒業後は愛知県のエンジニアリング会社で総務・NX(3DCAD)の講師を務める。そのころ、仕事のかたわら週末に京都の学校に半年間通い、草木染めや手織りを体験。染織や自然と親しむ暮らしがしたいと思うようになる。
2015年、〈宮下織物株式会社〉へ入社するために富士吉田市へ移住。未経験から、ジャカード織物の機織り職人として6年間勤務し、2022年春に退職。
富士吉田に移住してからは、ハーブを育てたり草木染めをする暮らしを楽しむ。
2023年から〈いのちの草木染め〉として、草木染めワークショップや基礎講座を開催するほか、作品制作、出張ワークショップなども行っている。

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