こんにちは。
「地域福祉」という観点からコミュニティデザインを考えている、上田潤です。
前回の連載では、「社会的処方」と「リンクワーカー」について、イギリスを例にとってご紹介しました。その中で、「人と人のつながり」が健康に重要であることにも、少し触れました。
最近よく感じるのは、「オンラインでのつながり」が増えたことに比例して、「リアルな場でのつながりの価値」が高まっているのではないだろうか、ということ。
リアルでだれかと過ごしにくい今だからこそ、あらためて「リアルな場でのつながりの価値」に気づかされているように思います。
僕もかねてより、富士吉田市にリアルなつながりの場をつくりたいと考えてきました。
具体的には年齢、性別、障がい、人種など、すべてがフラットな立場で関わり合える「みんなの家」と呼べるような場をつくりたいと考えています。
今回はそんな「みんなの家」の事例として、僕がとても素敵だと感じている場所を紹介します。
みんなの家タブノキでの日常
長野県小諸市で2020年4月からスタートした〈みんなの家タブノキ(以下タブノキ)〉。
通所介護や生活介護事業などを行っていますが、“地域のつどい場”としての色がはっきり感じられる、僕が今一番参考にさせてもらっているスポットです。
タブノキには、地域のいろんな方がつどいます。
おじいちゃん、おばあちゃん、障がいを持っている方、スタッフの家族、利用者さんの家族、地域のお子さん、赤ちゃん、ボランティアの方など…
「共に生きるという暮らし方の提案をする」という素敵なコンセプトを、まさに体現しているように思います。
写真の右側で素敵な笑顔を見せているのが、代表の深山直樹(みやまなおき)さんです。この風景ひとつをとってみても、タブノキのあたたかい雰囲気が伝わってきます。
もともと介護サービス事業所で働いていた深山さん。事業所で働くスタッフや、利用する高齢者の方々の窮屈さに違和感を感じ「スタッフも利用者も、一緒になって過ごしやすい場所がつくれないか」と考え、タブノキを開所されたそうです。
たしかに、介護や福祉の業界では、いろいろ区切って考えてしまうことがよくあるような気がします。
例えば、こんな具合に。
・ケアする側、ケアされる側
・サービスする側、サービスを受ける側
・要介護度(1~5)、要支援度(1~2)
・障害の等級(身体・精神・知的)
・認知症か否か
・前期高齢者(65歳~74歳)、後期高齢者(75歳以上)
制度の側面として、仕方ない部分もあるかもしれないですが、個人的には、ある一定のラインで線引きして考えることはあまり好きではないです。制度や第三者が「あなたは〇〇だ」って、勝手に分類するのは、尊厳を欠いているように感じるからです。
◯タブノキの理念
タブノキでは「もちつ、もたれつ」がスタンス。
みんなで一緒にその場にいる。一緒にいるそのことで、パワーが生まれて、もちつもたれつでその場が創られていく。サービスを提供する人はいない。受ける人もいない。全員が対等でお互いに支援者。必要なのは「ありがとう」と「助けて」を言えること。
タブノキにいる人はみんな家族という意識がすごく伝わってきます。深山さんは、「家とはなんだろう」ということを、日々考え続けていらっしゃるんでしょう。ここはもう、施設の役割だけではない、地域のあたたかな居場所になっているのかもしれません。
これからの超高齢化社会、こういった「共生の場」が増えてくる傾向にあるとは思いますが、ここまで徹底した世界感を体現することは、熱意と愛情がすごく必要なことだと思います。
僕もタブノキのような「みんなの家」を創りたいと考えています。
来たい人が来たいときに、好きなことを好きな関わり方で、だれかと何をしてもいい、居てもいい、そんな家を。
最後に、
今回の連載に際し、写真や画像をご提供してくださった、タブノキ代表の深山さん、本当にありがとうございました。深山さんに直接ご連絡して、紹介したい旨をお伝えしたところ、快諾してくれました(素敵な家のつくり手は、もちろん素敵な方でした)。これからの活動も応援するとともに、自分も刺激を受けながら、思いをカタチにできるよう励みます。
P.S.
最後と言いながらすいません。来る4月25日(日)に〈みんなの家タブノキ〉さんで、1周年記念イベントが行われます。「暮らしと介護」について、専門家のトークセッションや座談会といったコンテンツに参加できます。僕はもちろん参加しますが、もし少しでも興味をお持ちになった方がいたら、ぜひ一緒に学べたら嬉しいです。(すでにリアルは定員に達しそうとのことですが、オンライン参加は定員なしです)詳しくは下記からご確認ください。
『みんなの家タブノキ一周年イベント〜暮らしとしての介護〜』