9月になり、朝晩が涼しくなってきました。
まだまだ日中は真夏のように暑い日が続いていますが、夜になると風は涼しくなって肌寒いときも。薄着で寝ていると、明け方寒いこともあります。もう秋になってきたのを感じます。
ほんの少しずつですが、紅葉している葉っぱも見かけるようになってきました。
その年によって紅葉の具合が違うようですが、今年はどんな紅葉が見られるのでしょうか。
紅葉の季節は、あちこちの山がうっとりするほど本当に綺麗なので、今から楽しみでどきどきそわそわしています。
少し前の8月末には、7月から開催している、河口湖町の中央公民館での「草木の色と出会う 草木染め講座」の第2回目を無事に開催させていただきました。
月に1度開催の、4回連続の講座のうちの第2回目。
前回は「さくらんぼの枝染め」。今回は、季節にちょうどぴったりの藍を染めていきました。
私はこの何年かずっと、たねとりを繰り返しながら藍を育ててきました。今年の藍も大きく育ってきてくれたところだったので、講座の当日は、フレッシュな藍の葉っぱを皆さんにお見せすることができました。
藍の葉っぱは、収穫するときの天候によって染まる色が違うといわれています。
曇りの日に収穫した藍の葉は、少し暗みがかった色になる感じがあるのですが、晴れの日、とくに前日から晴れてしっかりとお日様を浴びた藍たちは、とっても元気で美しい色を見せてくれるのです。
今回は幸運なことに、前日も当日も、見事な晴れの日でした。
講座当日の朝、畑で準備万端な藍の葉たちに、「今日はよろしくね」と心の中で話しかけながら、そして「講座のみなさんが喜んでくれますように」と願いながら、藍の茎を一本一本刈り取っていきました。
実際の藍を間近で見た皆さんは、「藍ってこういう植物だったのね!」と驚いてくださったり、興味を持ってくれたり。
日本の藍とのかかわりや、薬草としてのちからのお話を挟んだあと、実際に染めていく時間になりました。
実際に藍に触れながら一枚一枚茎から葉を外していき、染液をつくって、新鮮でないと出来ない、フレッシュな生の藍の葉の色を染めていただきました。
講座後にいただいたご感想からは、「瑞々しい緑の葉から色鮮やかな青に染まっていく様子が、自然のマジックを見るようでとても興味深かったです」、「染色中どんどん色が変わっていくのが神秘的でした」、「とても綺麗な色で驚きました」など喜びの声をいただけて、私もとても嬉しかったです。
葉っぱをとった後の茎を水に差しておくと、根っこが生えてきてまた育ってくれるので、葉っぱを採り終わった茎も皆さんにお土産にお渡ししました。
また葉っぱをとって染めてみてもいいし、お花が咲くまで育てたらお花も楽しめるし、たねとりできたらまた来年たねまきできます。藍たちも、新しい環境へお引越しして喜んでくれそうです。
こうして実際に植物のすがたを見て、手で触れてから染めると、どんな植物から色をもらえたのかが体感としてつながるように感じます。
植物の叡智に出会うことであったり、いのちの共鳴する喜びや実感が味わえるのではないかなと思っています。そんなひとときを共に過ごさせていただけて、感謝の気持ちでいっぱいになりました。
そうした嬉しい時間を経て、この9月に入りました。
9月に入ると、自然の中でいろんな実りを目にすることが増えました。
たとえば、散歩をしていたら落ちている栗に出会いました。
横を見ると、栗の木が。近くに栗の木があるとは知りませんでした。
落ちている栗をつついて触ってみたら、声が出てしまうほど痛くてびっくり。
たくさんのとげをとがらせて実を守っている栗の生命力に驚きつつ、いがぐりのいでたちの可愛いさにはほれぼれします。
落ちて、栗の中身がでているものもありました。
普段は、むいてある甘栗を買ったりするけれど、こうして栗がいがぐりの中に入っているんだなぁとあらためて思いました。
庭のイチイの木にも、実がついてきました。イチイは秋に実がなり、真ん中の種は人にとっては毒があるそうなのですが、鳥たちから人気な果実だそうです。さわると、ちょっとプニプニしていて可愛い実です。
この実をつまんでいる鳥を見たいなと思って、庭に出るときは耳を澄ましていたら、
小鳥が飛んではとまり、また別の小鳥が飛んできてとまっていました。
実をつまんではいなかったので、食べるのかはわかりませんが、いつか実を食べている小鳥が見られたらうれしいです。
そして実りといえば、稲穂。今年も稲穂が美しく実っています。
もう稲刈りをしているところもちらほら見られてきました。
この黄金色と青空のコントラストが美しくて、ほれぼれします。
稲作は、水がゆたかな自然環境だからできること。
水がゆたかで、稲穂がゆたかに実る国、日本のこうした風景がどれほど美しくてゆたかなことでうれしいことか・・
今年も富士山と稲穂の黄金色を眺めながら、日本の気候があるからこその恵みに想いを馳せました。
そうして迎えた9月9日。
9月9日は、こよみでは重陽の節句といわれています。
重陽の節句は、平安時代に中国から伝わったもので、家族の無病息災や子孫繁栄、不老長寿を願って、祝いの宴を開いたことが起源とされています。
菊は邪気を払う力があるとされ、不老長寿を願って菊の花を浸け込んだお酒を飲む風習があったり、菊の花を真綿で覆って夜露と香りを綿にうつして、翌朝にその綿で体や顔を拭うなどの風習があったりするといいます。
ほかにも、菊の香りが邪気を払うとして湯船に菊を浮かべたり、菊の花びらを詰めた菊枕で眠って菊の香りをまとう風習もあるそうで、疲れも癒され安眠効果も得られそうです。
また秋の収穫を祝い、栗ご飯を食べる風習もあるとのことだったので、わたしも菊を買ってきて飾り、栗ご飯を炊いて美味しくいただきました。
また、以前から通っている漢方の教室で作成した、菊をブレンドしたお茶があったので、そのお茶を淹れて飲みました。秋をより感じられたような気がします。
こよみを意識すると、日本の季節をより味わえるなぁと思います。
むずかしいことではなく、ささやかな今日をお祝いできる気持ちを大切にしていたいなと改めて思いました。こうした節句があると、なんとなく惰性で毎日を続けてしまうことがなくなる気がして、これから取り入れていきたいなと思いました。
稲穂の黄金色も、ほくほくした美味しい栗も、菊を愛でることも、どれもゆたかさを感じるもの。
秋に体に滋養をたくわえ、美しい色を見て心に潤いとゆたかさを与えてもらって自分をうれしさでいっぱいに満たせるからこそ、これからまた始まっていく静かな冬に、素直に順応していけるのだなと思いました。
今の時期は、身の回りにたっぷりあるゆたかさに目を向けようと思います。
9月の草木染め
先日、河口湖の知人のかたから、河口湖の森のクロモジの枝をいただきました。
何もしなくても、枝自体からさわやかないい香りがします。
クロモジは香木として知られている木で、お茶であったり、茶道などで和菓子の爪楊枝として使われていたり、精油として、また石けんや入浴剤としても使われている木です。
また、漢方の世界でもクロモジの幹と枝は「烏樟(ウショウ)」という生薬とされているそうで、高まった神経や咳を鎮めたり、気管支粘膜の充血をとるなどの効用があるそうです。一時的に血圧を下げる効果として漢方に使われたりもするそうです。
そんな薬効高く香り高いクロモジを、ありがたく染めてみることにしました。
クロモジの枝をじっくり煮出していくと、その香りはさらに強まって、家の中がクロモジのアロマでいっぱいになります。
このままクロモジのお風呂に入りたくなる感じ。とても癒しの時間です。今までの草木染めで、一番いい香りかもしれません。
どんどん煮出していくと、こんな色になってきました。清涼感のある香りが漂います。
そうしていくうちに、だんだんと赤みのある染液になっていきました。
この染液に、ハンカチを入れて染めていきました。
いい香りのなか、ゆっくりじんわりとクロモジの色が染まっていきます。
よく染めたら引きあげて、媒染という工程を経て完成です。
乾いたらこんな色になってくれました。時間差で染めたら、2つの色味の淡いやさしいピンクになりました。
このハンカチでなにかを包んでみたくなり、ちいさい箱を包んでみました。
この色を見ると、染めているあいだのさわやかなクロモジの香りを思い出して、なんだか呼吸が深くなります。
同じ富士北麓で育ったクロモジの色をこうして見ることができて、とても嬉しいです。
そんな、たくさんのゆたかさを感じる9月でした。