宮﨑 博

2024.01.09

富士吉田知ル知ル11「富士山の神様について」

富士吉田姉妹といえば〜

コノハナサクヤヒメとイワナガヒメ

富士吉田市に住んでみてまず最初に思うことがある。

とにかく至る所に神社があって、神様がラッシュアワーの電車の中みたいに溢れているということ。

京都ならわかるけど、人口の少ないこの街にあまりにも多くの神社があるということで昔から住んでいる人たちの信仰心の深さをうかがい知ることができる。

せっかくこの街に来たのだから神様について考えてみようか。

富士山信仰総本山で全国にある浅間神社の主祭神はコノハナサクヤヒメさま。あるいはその姉のイワナガヒメさま。富士山周辺の浅間神社はコノハナサクヤヒメさまが多いが、富士山から離れるとイワナガヒメさまが主流となる。なんとも不思議な話だ。

葛飾北斎/富岳百景 3編より「木花開耶姫命」



富士吉田市にある北口本宮浅間神社に主に祀られているのは、コノハナサクヤヒメさまと旦那さんのニニギノミコトさま、そして、父親のオオヤマツミノカミさま。

音川安親編 万物雛形画譜

出典:大山津見神「タガマヤ村」



旦那さまのニニギノミコトさまといえば、アマテラスさまの孫にあたり、天孫降臨伝説の主人公だ。

神の国である高天原から3種の神器である八咫鏡(ヤタノカガミ)、八尺瓊曲玉(ヤサカ二ノマガタマ)、草薙剣(クサナギノツルギ)を持って地上に降りて来たというあの話である。この3種の神器は今でも天皇家が受け継いでいて、何かの儀式のたびに登場するから皆さんもテレビとかで箱だけは見たことがあることでしょう。

地上に現れたニニギノミコトさまは立派な宮殿を造り、そこで出会った美しい姫様が山の神であるオオヤマツミノカミさまの娘であったコノハナサクヤヒメさま(ちなみに本名は、カムアタツヒメさまという)。

一目惚れしたニニギノミコトさまは彼女の父親に使者を送り結婚を申し込んだ。

父親は喜んで、数々の結納の御品とともにコノハナサクヤヒメさまと姉のイワナガヒメさまも一緒に使わせた。

ところがですよ、妹と比べて姉の容姿があまりにも醜いということで姉だけ追い返しちゃったのです。

この時、父親のオオヤマツミノカミさまは、次のように嘆いたと言います。

「イワナガヒメを妻にすれば岩のように揺るぎない永遠の命が得られ、コノハナサクヤヒメを妻にすれば木の花が咲くような繁栄を手に入れられる。なのに、イワナガヒメを返したために神子の命は華やかではあるが限りあるものになる」と。両方手に入れておけばよかったのにね。

それでも、すぐに妹のコノハナサクヤヒメさまは夫婦になった。しかも、なんと一夜にして児を身ごもったという。そこで、あまりに早すぎたためにニニギノミコトさまは本当に自分の子なのかを疑ったわけだ。

身の潔白を証明するためにコノハナサクヤヒメさまは扉が1つもなく隙間を無くすために内側から泥を塗り固めた産屋を作り、しかもこの児がニニギノミコトさまの児でなければ焼け死ぬであろうと産屋に火を放ちその猛火の中で三つ子を出産。そして、誰も死ぬことがなく無事であったことで身の潔白を証明した。

以後家族として末長く暮らしたという。これみんなが知っている有名な話ですね。

この話からも火に強い神様なのだということがわかる。

このようなことから火を沈めるためにコノハナサクヤヒメさまを浅間神社でお祭りして富士山の鎮火を祈ってきたわけだ。

ちょっと待てよ、同じ富士吉田市の富士山5号目にある富士山小御嶽神社はどうだろう。一般的には「天狗の庭」と呼ばれる場所にあって、天狗さまを祀っている風だけど。なんてったって富士山にある神社だからな〜やっぱり姫さまでしょ。

と、調べてみると〜

な、なんと、ここの祭神はイワナガヒメさま〜。

コノハナサクヤヒメさまじゃない〜〜、ヒェ〜!

富士山小御嶽神社


こうやって神様のことを知っていくと、神社巡りも面白くなってくる。ぜひ一度、神様を感じながら参拝をしてみてくださいね。

富士吉田姉妹の話は次回、富士山と八ヶ岳の話へとさらに続く〜。

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宮﨑 博

編集者・出版プロデューサー

出身地
神戸市

プロフィール
大手出版社社員を経て20年前に2拠点生活を開始。16年前より富士吉田市に完全移住し、リモート生活を実践。現在、富士山に一番近い出版社の編集統括に就任中。

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