毎朝、小学校への通学路を、息子と娘と一緒に歩いています。
近所に同じ小学校へ通う子どもがいないので、三人でいろいろな話をしながら歩くこの時間は、ちょっとした気持ちのよい散歩です。
数年前、息子が小学1年生の頃、同じように二人で歩いていたときのこと。あるお宅の庭先に、おばあさまがいらっしゃいました。
「おはようございます!」
二人で元気に挨拶をすると、おばあさまは少し緊張した面持ちで、話があると私たちを呼び止めました。
「……御宅の息子さん、うちの庭でうんちをして困るんです。」
どうやら、下校中に急に便意をもよおし、そのお宅の庭でしてしまったようです。後日、菓子折りを持ってお詫びに伺いました。
息子の結婚式スピーチ用にとっておきたい、大切な思い出です。
のどかな地方都市、富士吉田市には、公立の小学校が7校、中学校が4校、私立の中学校が1校あります。
各校では少人数クラスが基本となっており、先生方が一人ひとりの子どもたちにきめ細やかに向き合ってくださっています。
また、それぞれの地域の特色を活かした学びも積極的に取り入れられています。
たとえば地元の特産である織物に関する活動や、神社のお祭りに合わせた休校など、子どもたちの「地域に根ざした学び」を大切にしているのが印象的です。
こうした環境が、子どもたちのアイデンティティの育成にもつながっていると感じます。
(小学校の階段を飾る織物アート)
高等学校は、県立が3校、私立が1校あります。学力を高めたい子、スポーツに打ち込みたい子、地域活動やコミュニケーション能力を伸ばしたい子など、それぞれのご家庭の思いに応えられる、幅広い選択肢が用意されています。
その学びを支える仕組みのひとつに、「NPO法人かえる舎」があります。
「この地域の未来は私たちがつくる」というコンセプトのもと、高校生を主体とした学びの場を提供しています。最近では、高校生が考案した地産品を活かしたおにぎりが、大手コンビニの店頭に並び、話題となりました。子どもたちがワクワクしながら活動できる場が、このまちにはたくさんあります。
また別の日のこと。雨上がりの夕方に、息子が裸足で帰ってきました。
「どうしたの?」と尋ねると、「田んぼに長靴を取られて、側溝に傘を取られた」とのこと。
通学路をたどっていくと、道路脇の側溝に傘が突き刺さり、水の張られた田んぼには、ぽつんと長靴が沈んでいました。
ふと見上げた夕焼け空には、雄大な富士山が静かに微笑んでいました。
「大きくなれよ、息子さん。」