藤崎 仁美

2025.06.30

草木とともにあるくらし39

6月のくらし

6月になると、太陽の光が強くなってきました。富士山に残っていた雪も減り、線のように細くなってきています。

これまでは、富士北麓の6月というのは、寒くてストーブを使うこともあるほど肌寒い季節のイメージでしたが、今年はもうすっかり暑くなりました。

そんな6月の気持ちよく晴れた日、畑ではブラックマロウの花がいくつか咲き始めました。

一昨年に苗を植えて、昨年たくさんの花をつけてくれたブラックマロウ。

そのまま植わっていた株は枯れていきましたが、特に手を加えずにそのままにしておいたところ、今年、再び芽吹いてくれました。
越冬した根っこからまた生えてくれたのかもしれないし、昨年の花から種になったものがこぼれて土へ落ちて、それが芽を出したのかもしれません。

今こうして見ているのがどちらのブラックマロウなのかわからないけれど、またこうしてフレッシュな花が咲く姿が見られて本当に嬉しいです。

すべすべした肉厚な花びらが綺麗なブラックマロウは、つぼみもまた、目を奪われるような存在感があります。

今は、目線より低い高さででつぼみが開いていますが、夏が進むにつれ、どんどん茎を上に伸ばしながら、螺旋状につぼみをつけて背丈を伸ばしていきます。
自然界の神秘を感じさせてくれる植物です。

春にたねまきしてポットで育てていた藍も、ようやく畑に定植しました。

藍がこのまま順調に育ってくれたら、8~9月ごろに藍の生葉染めの単発ワークショップを開催できると思っています。

夏の青空や海のような、澄んだ藍の色に染められるのが今から楽しみです。

さて、6月中旬になると、私は毎年梅干しを仕込みます。

南高梅の梅干しが好きなので、完熟した南高梅を買ってきました。

昨年は、青い梅を自分で追熟して梅干しを仕込んだのですが、追熟するあいだにシワシワになる梅があったり、傷んでしまう梅も多く、追熟って意外と難しいんだなぁと初めて知りました。
あとから調べてみると、どんな梅でも置いておけばいい感じに完熟するわけではないようで、収穫時期が早すぎると追熟もうまくいかないそうです。

そんな昨年も十分梅干しはつくれましたが、傷んでしまう梅が多いと残念なので、今回ははじめから八百屋さんに聞いて、完熟の梅を選びました。
完熟梅を購入すれば、もうその日に軽く梅を洗うだけ。
あとはすぐに仕込めるので、気持ちも楽になります。

わたしの梅干しはとても簡単なもの。
カビるリスクも極力避けたいので、いちばんシンプルな「白梅干し」です。

梅を軽く洗って、水気を拭き取り、少し乾かします。へたは竹串でとって、梅をリカーにくぐらせたらジップロックへ入れていきます。
好きな塩をいれて塩を全体にいきわたらせたら、あとは重みのある本を上からのせるだけ。
1日もすると、梅酢があがってきます。あとはタイミングをみて重しを外して、梅雨明けを待ちます。

この時期に梅シロップを作るのも素敵だけれど、作るときにかなりの砂糖を使うのにびっくりしてしまって‥。もともとあまり甘い飲み物を飲まないこともあり、最近は梅干しだけ仕込むようになりました。
ミネラルが豊富なお気に入りの塩を使って、しっかり塩気と酸味のある梅干しにしているので、常温でも長く保存ができます。

ちょっと体調が不安定なときや、風邪のひき始めには、梅を食べると不思議と身体が落ち着く気がする。
夏はとくに疲労回復にもなって、心強い味方です。

ちなみに「梅はその日の難逃れ」ということわざがあり、朝に一粒食べると、その日の災難から免れるとされています。

そもそも梅の花は、魔除けや厄払いの効果があるとされており、梅の花の強い香りを鬼が嫌うことから、鬼が出入りする鬼門の北東の方角に梅の木を植える風習もあったそうです。

また、梅干しは食中毒や日射病、水あたりに効く、という実際の栄養効果もあり、きっと梅干しがいろんな意味でわたしたちを守ってくれる、そんな信頼感が育まれてきたのかなぁと感じました。

来月の土用干しまでは、しばらく梅との暮らしを楽しもうと思います。

6月の草木染め

4月からはじまった第3期の基礎講座、6月にはその第3回目を開催しました。今月のテーマは、実の色を染めることでした。

染めに使ったのは、くちなしの実。日本で古くから染められてきた色のひとつ。

初回の「枝」とも、2回目の「葉」とはちがう、実のもつ力強さを感じていただけたのではないかと思います。

煮出しているときの香りや、実の触感の変化、そしてくちなしの実はお茶にもなるので、希望される方には煮出した液の味見もしてもらいました。

そして染まったのは、草から染められるような黄色とはまた違った、晴れやかな黄色です。

最初はレモンイエローのように柔らかな色で、後半にはしっかりとした鮮やかな黄色に染まっていきました。

最後の染めあがりはそれぞれお好きなタイミングで決めていただき、みなさんそれぞれのくちなしの色に染めてくださいました。

1回目、2回目と回を重ねるなかで、草木染めの流れが、無理なく少しずつ馴染むようにと構成しています。今回で3回目となり、参加者の皆さんもだんだん草木染めの流れに親しんできてくださったのではないかと思います。

くちなしの色を喜んでいただけて、私もとても嬉しかったです。

こうして月に一度、定点観測のように、季節がめぐっていく明見湖のほとりで、植物と染めをしていると、自分の心境や今の立ち位置がよりわかりやすくなったりします。

そのなかで、植物のいのちや、私たち自身のいのちの動きにも目をむけるような、優しい時間になっていたら嬉しいです。

染めたあとの布が太陽に透け、風にそよぐのを見上げる皆さんの笑顔が嬉しく感じる、そんな6月のひとときでした。

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藤崎 仁美

〈いのちの草木染め〉主宰

出身地
愛知県名古屋市

プロフィール
大学在学中、〈フジファブリック〉のイベントのために、はじめて富士吉田へ訪れる。卒業後は愛知県のエンジニアリング会社で総務・NX(3DCAD)の講師を務める。そのころ、仕事のかたわら週末に京都の学校に半年間通い、草木染めや手織りを体験。染織や自然と親しむ暮らしがしたいと思うようになる。
2015年、〈宮下織物株式会社〉へ入社するために富士吉田市へ移住。未経験から、ジャカード織物の機織り職人として6年間勤務し、2022年春に退職。
富士吉田に移住してからは、ハーブを育てたり草木染めをする暮らしを楽しむ。
2023年から〈いのちの草木染め〉として、草木染めワークショップや基礎講座を開催するほか、作品制作、出張ワークショップなども行っている。

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