藤崎 仁美

2026.04.30

草木とともにあるくらし 49

4月のくらし

4月になり、すっかり春らしくなりました。

富士吉田は冷涼な地域のため、例年、桜はほかの地域よりも一足遅れて咲きますが、今年はいつもより開花が早くて驚きました。

市内でも標高差があるので、下吉田の方から咲き始めて、だんだん上吉田の方へとグラデーションのように桜の開花が推移していくのは、春が順番に訪れているよう。好きな場所がいくつかあるので、もう咲いているかな?と用事や仕事の合間に見に行きました。

あっという間に見頃を逃してしまう年もありましたが、今年は様々な場所で眺めることができて嬉しかったです。

日本全国で、景勝地だけでなく日常のなかのあちらこちらで桜が咲く様子は、本当に綺麗です。
こんなに美しいものを見せてもらえるなんて、いいのでしょうかと、思わず感動してしまいます。

ソメイヨシノから、しだれ桜、八重桜、山桜まで。
薄い色の花びらも、ピンクの花びらも、みんなかわいい。幸せだなぁと嬉しく眺めました。

そして春の富士山は、春霞のなかでふんわり漂うように見えて、幻想的です。
桜も、富士山も、日本に住んでいて良かったなと思わせてくれる大切な存在です。

桜だけでなく、チューリップもどんどんと咲いてきました。

春は、一気に生命の息吹があふれて、すべてを愛でるには追いつかないほど。
花は、咲いてから散るまでが一瞬なので、立ち会えた喜びと、見せてくれてありがとう、という感謝がわいてきます。
久しぶりに畑へ行くと、こちらも春の顔ぶれがたくさん。

植えた覚えはないのだけれど、数年前から気づくと咲いていたチューリップ。そっと隣り合っているのもかわいらしいです。
チューリップは、ひらひらした葉っぱのかたちや質感も素敵だし、茎はすっとのびてしなやかで、まるで白鳥のような美しさ。
花びらは羽のようで、繊細でかわいらしいです。

畑全体としてはまだ枯れているままの印象が強いですが、ホトケノザやよもぎも芽吹いて育っていました。
皆、フリフリした葉っぱがフレッシュでかわいいです。

フェンネルも、無事に越冬し、また春を迎えたようです。

春の点呼確認のように、うろうろと歩きながら、ご挨拶。自生している薬草たちは、どこか凛としていて頼もしいです。

寂しかった冬が終わって、一気に仲間が増えるような春。
こちらにもあちらにも、かわいい植物がいっぱい顔を出していて、それを眺めているだけでも春って好きだなぁ、と感じ入ってしまいます。

4月の草木染め

さて、4月は私にとって、はじまりの月。
『いのちの草木染め基礎講座と応用講座』がはじまりました。
会場としてお借りしている明見湖にも春が訪れ、穏やかで夢心地のような空気が漂っていました。

まだ湖のなかでは、昨年の蓮たちが立ち枯れたままですが、湖畔では桜がそれぞれに咲いていました。
カモなどの鳥たちものんびりと泳ぎ、魚はときどき水面から勢いよく飛び跳ねています。

私が主催している『いのちの草木染め基礎講座』は、今回で5期目となりました。今回は大人11名の方と小学生のお子さま1名がご参加くださっています。
植物とのご縁で、明見湖にこうして素敵な皆さんが集ってくださり、ともに草木の色が染められることは、なんて幸せなのだろうと毎回感じています。
植物との出会いはもちろんのこと、ご参加の皆さん同士の一期一会も、ぜひ楽しんでいただけたら嬉しいです。

基礎講座の初回では、桃の枝を使って皆で色を染めていきました。
布は、国産シルク100%の小風呂敷です。シルクは草木染めと相性がよく、染めている間もとても美しいものです。

染めあがったあとは、明見湖を眺めながら春の風をあててあげて、完成です。

人によって染め上がりの雰囲気や色も微細に違っていたり、花びらではなくて枝から染まるのですね、という皆さんからの素直な驚きやご感想があったり、色々と感じていただけたのではないかと思います。

植物から染まった色は、単なる色見本帖のなかの固定された一色ではなく、何色と呼ぶのがいいのか迷うほどの豊かさがあります。
そしてまた、その色は私たちの個人的な体験とも密接につながっているから、ただ「赤」や「黄」と呼ぶだけでは、なにかが足りないような気もしてきます。

その日、その時だからこそ染まる色があって、そこには無数のグラデーションが広がっている。なんと呼んでもいい、色の自由さがある。
自分で名前をつけたっていいのです。

その色から何を感じるかという、新しい感性もひらいてきます。
それはやっぱり、植物とともにひとときを過ごし、自分で染めた色だからではないかな、と思っています。
生きた色との経験を通して、わたしたちのいのちもまた呼応するような、そんな時間を大切にできたらいいなと思い、場を設けています。

基礎講座にご参加くださった皆さん、ありがとうございました。

そして応用講座は、昨年後半に基礎講座を受けてくださった方に向けた、植物といろかたちを楽しんでいただく講座です。
今回は五倍子という虫こぶの色で、絞り染めをしていきました。

流木のようにも実のようにも見える五倍子は、かつてのお歯黒の材料としても重宝されていたもので、漢方薬としても知られています。
山歩きなどされる方は、見たことがあるかもしれない、ふしぎな虫こぶ。それをしっかり乾燥させたものを使いました。

虫と木が出会ったことで生まれる五倍子の不思議さや、鉄媒染との相性によって変わるアンニュイな色の奥深さを、お伝えできたかなと思います。

柄づくりは、一通りのやり方をお伝えしたあとは、ご自由に絞りを作っていただきました。

イメージ通りに絞ってみるのもよいですし、直感でランダムに絞ることで、思いがけない仕上がりが生まれるのもとても素敵なことです。

そして、皆さんそれぞれにオリジナルの作品が染めあがる様子は、見ていてとても楽しく、嬉しい時間です。
AIがとても身近になった今、すべてが指示通りに完成するというよりも、こうして手指を動かしてつくり、なにか自然の力に預けて完成するようなものの方が、かえって面白いのではないかと感じています。

そして、草木染めは、たとえ同じ綿の布であっても、糸の種類や太さ、織り方などによって、染まる色が微細に変化します。
また植物そのものの個性や状態、季節、水の質や濃さ、染め方、気温、助剤のさじ加減、染める人の気分や染める空間の雰囲気など、すべてが微細に色に反映されているように感じています。

そこには正解がひとつあるわけではなく、たくさんの違いがあって、それが面白い。
色に良い悪いはなく、続けているうちに「あ、わたしはこういうのが好きだな」という自分の好みにも気づいていくこともある。

植物や色との触れ合いによって、あたらしい発見や、そこにある感性がひらかれていくのはとても素敵なことだと思っています。

いつも染め上がったあとは、外の太陽の下で色を見てみます。
色というのは不思議で、蛍光灯の下での見え方もあれば、午前中や午後の日光、晴れた日や曇りの日、そして暗くなってからで、見え方が違ってきます。

その定まらない感じが、また色の不思議でもあり、魅力でもあります。
そうした面白さもお伝えできていたら嬉しいです。

応用講座にご参加くださった皆さん、ありがとうございました。
これから4か月、こうして基礎・応用ともにご参加の皆さんと、植物の色との体験を重ねていけることが嬉しい、そんな思いを感じるはじまりの4月となりました。

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藤崎 仁美

〈いのちの草木染め〉主宰

出身地
愛知県名古屋市

プロフィール
大学在学中、〈フジファブリック〉のイベントのために、はじめて富士吉田へ訪れる。卒業後は愛知県のエンジニアリング会社で総務・NX(3DCAD)の講師を務める。そのころ、仕事のかたわら週末に京都の学校に半年間通い、草木染めや手織りを体験。染織や自然と親しむ暮らしがしたいと思うようになる。
2015年、〈宮下織物株式会社〉へ入社するために富士吉田市へ移住。未経験から、ジャカード織物の機織り職人として6年間勤務し、2022年春に退職。
富士吉田に移住してからは、ハーブを育てたり草木染めをする暮らしを楽しむ。
2023年から〈いのちの草木染め〉として、草木染めワークショップや基礎講座を開催するほか、作品制作、出張ワークショップなども行っている。

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