藤崎 仁美

2026.06.05

草木とともにあるくらし 50

5月のくらし

5月になると、冷涼な富士吉田でもあたたかくなってくるので、土仕事がはじまります。

毎年、たねとりを繰り返しながら命をつないできた藍。今年もそのたねまきをしました。
藍のたね自体が小さいので、出る芽も最初はとても小さいのですが、少しずつ育ってきています。

ほかにも、GWのころにはハーブの苗を買いに行くのが毎年の楽しみなのですが、今年もいくつか買い、畑や庭のプランターへ植えてみました。

いつも買うのはハーブばかりでしたが、今回は原種のミニトマトも買ってみました。植えてしばらくすると、小さく実がでてきています。

ほかにも、エディブルフラワーを植えてみたり、染めに使えそうなハーブを植えたり。

今年もこうして、植物たちとのくらしが、日々に親しみとよろこびを与えてくれることが嬉しいです。

4月から始まっている〈いのちの草木染め基礎講座〉。5月はフレッシュなよもぎの茎葉を染めました。

よもぎはいつもは、5月になってようやく芽吹いてきてくれるイメージでしたが、今年は育つのが早く、すでにすっかり背丈が伸びていて、染めるのにも準備万端。

収穫するときには根を残して、途中あたりの部分から刈っていくようにしています。また少しすると、よもぎはすぐに成長してくれます。
そして、冬を越えてもこうして育ってくれているのが嬉しいです。

よもぎは、調べてみるとものすごくたくさんの種類があるそうです。世界には500種類、日本でも40種類にも分かれるそう。時々、見かけるよもぎを見ても、「あれ、うちのよもぎとなんか違うような・・?」と感じたことがあったのですが、種類が微妙に違うよもぎだったのかもしれません。

葉っぱの裏に白く産毛があり、手でこすったときの香りを確認すると、あぁこれはよもぎで合ってるなとほっとします。トリカブトとよく似ているそうなので、それだけは気をつけたいです。

このよもぎの産毛を集めて作られるのがお灸。あらためて、すごい知恵だなと思います。

よもぎは、若い葉っぱを食べてもいいし、ハーブと一緒にお茶として飲んでもいいし、お風呂に入れて入浴剤にしても、焼酎やリカーでチンキにしてもいいし、オイルに入れて使ってもいい。

とても万能なうえ、調べてみるとよもぎは魔除けとして世界中で大切にされてきたことがわかります。
普段、さりげなく道の脇にも生えているよもぎたちは、実はとっても心強い薬草です。
わたしも大好きです。

5月の基礎講座では、その日の講座の直前に摘んだばかりのよもぎを、皆でカットして煮だすところから始めました。

今回は2回染めていき、片方は黄色み、そしてもう片方は肉眼で見ると若草色のような色に染まりました。

こうして、同じよもぎでも異なる色味が染まることや、シルクだけでなくコットンやリネンなど布の繊維の違いにも触れていただき、色の違いや、ご自身の感じ方の違いを知るきっかけになればいいなと思っています。

染めた後は、お茶の時間のあいだに明見湖をながめつつ、少し風にあててあげるようにしています。乾かす意味もありますが、染まった色に風を通してあげるのも見ていて気持ちよいです。

こうして、布の種類の違いで染まる色の違いがあることをわかっていただけたかなと思います。

ご参加くださったみなさん、ありがとうございました。

そして、〈いのちの草木染め応用講座〉では、今月は板を使って柄を染める『板締め』という染め方を体験していただきました。
今回使う植物は、刈安というイネ科のススキに似た植物です。

干し草のようなひなたの香りのする刈安は、じつは平安時代などから重宝されている染色植物です。
有名なのは伊吹山の刈安や八丈島のコブナグサ。

板を使い、自由に絞りを入れて染めていただきました。ユーモラスな柄がとてもかわいいです。

植物の色そのものを楽しむことも好きですが、皆さんが自由に作品を染めてくださる様子を見ていると、仕上がった布にはそれぞれに唯一無二のよさがあることを感じます。こうした瞬間に立ち会えることが、とても嬉しいです。 

自由な柄の布は、使う時、その用途によっても布の表情に変化が生まれたり、見える部分が変わったり。作品を使う楽しみも味わっていただけたらと思います。
ご参加くださった方、ありがとうございました。

そして、この5月は個人的な挑戦もありました。

参加している、富士吉田で日本茜を育てて染めるプロジェクトの一環で、作家3名で日本茜で染めた作品を他県のお店で展示販売させていただくことに。3月の桐生の次として、この5月は、八王子の坂本呉服店さんにお世話になりました。

外観も、お店の中もとても素敵でかわいいお店でした。私も着物を着たいと思っているので、またあらためてお店に伺いたいです。

今回は、和紙作家さんと羊毛作家さんと一緒に展示販売をさせていただきました。

私は普段、作品としてシルク・リネン・コットンの布を主に染めています。
今回は、日本茜の色のシルクの大風呂敷や、コットンサテンの風呂敷、リネンのストールやクロス、シルクのちりめんの帯揚げ、リネンポーチなどをお持ちしました。

素材によっても色合いに違いがあったり、それぞれの素材だからこそ表現できるものが違ったり。他の作家さんとの交流や、呉服店さんとのお話から学ぶこともとても多く、勉強になりました。

そして、期間中には日本茜を染めるワークショップも開催されました。

呉服店の裏の蔵の前で、植栽に囲まれてのワークショップ。こちらでは地下水を汲み上げることができ、八王子の水を使ってのワークショップとなりました。

昨年育てた日本茜から染液をつくっているあいだに、それぞれお好きなシルクの織物を選んでいただき、自由に柄を絞っていただきました。

絞りがおわった布を、日本茜の染液で染めていきます。

布を広げて、それぞれ素敵な作品が染め上がりました。

八王子の皆さんの明るく穏やかな雰囲気と、日本茜の明るい色とがとても良く似合うような、楽しい時間となりました。

坂本呉服店さん、ご参加くださったみなさん、ありがとうございました。

こうして、ワークショップ、展示販売ともに無事終了しました。
坂本呉服店さんのおかげでとても楽しく、たくさん学ばせていただくことができた3日間となりました。

そして、お越しくださった方とお話できたことや、日本茜の作品をお求めくださった方に、その色がとてもお似合いだったのを見ることができたのも嬉しく、本当にありがたい体験でした。  

当日までは制作や準備をしながらドキドキしていたので、逃げ出さずにいて良かったなとあらためてしみじみ感じた、そんなわたしの5月でした。

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藤崎 仁美

〈いのちの草木染め〉主宰

出身地
愛知県名古屋市

プロフィール
大学在学中、〈フジファブリック〉のイベントのために、はじめて富士吉田へ訪れる。卒業後は愛知県のエンジニアリング会社で総務・NX(3DCAD)の講師を務める。そのころ、仕事のかたわら週末に京都の学校に半年間通い、草木染めや手織りを体験。染織や自然と親しむ暮らしがしたいと思うようになる。
2015年、〈宮下織物株式会社〉へ入社するために富士吉田市へ移住。未経験から、ジャカード織物の機織り職人として6年間勤務し、2022年春に退職。
富士吉田に移住してからは、ハーブを育てたり草木染めをする暮らしを楽しむ。
2023年から〈いのちの草木染め〉として、草木染めワークショップや基礎講座を開催するほか、作品制作、出張ワークショップなども行っている。

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