FUJIYOSHIDA DIARY MAGAZINE

コミュニティ

上田 潤

2022.09.14

上田潤の地域福祉とふじよしだ 26「生きること」

ひとの命や幸せについて、僕は最近よく考えるようになりました。

先日〈宝島〉に、また新しいおばあちゃんが来てくれました。

この方は末期がんで、余命1年と宣告されています。

最近までひとり暮らしだったのですが、病気が見つかって、岩手県から家族のいる富士吉田市へ越してきました。

とても働き者で、倒れる前日までお仕事をされていたといいます。

お料理も得意で、岩手の自宅では、地域の方を招いた食事会を頻繁に開催していたそうな。

明るくて、笑顔が素敵で、他のみなさんともすぐに打ち解けていました。

みんなで食事をとったあと、長年やってきたという民謡を披露してくれました。

「こうやってみんで一緒に、毎日笑って過ごしていれば、あとなん年も生きられるさ」

笑顔でそう話す姿に、長年生きてきた力強さと、しなやかさを感じました。

また、この日は、ボランティアメンバーの中に誕生日の方がいました。

「この日は誕生日だ」と自ら宣言していたので、お祝いしないわけにはいきません。

いつもお世話になっているお返しに、ケーキをサプライズで用意しました。

ただ、本人が台所で洗い物をしたり、コーヒーをみんなに入れたりと

ずっと動きっぱなしだったので、ケーキを隠すのがとても大変でした。

みんなでお祝いすると、この笑顔。

この方と知り合ってから半年以上経ちますが、こんなに素敵な笑顔を、僕は初めて見ました。

「ありがとう。生きててよかった。一生の思い出にします」

一生の思い出をつくれたことは、僕にとっても、みんなにとっても喜ばしいことだと思います。まだまだ一緒に生きていきましょう。これからもよろしくお願いします。

そんな一方で、僕らが住むこの日本は、自殺が多い国として知られています。

令和3年度では、年間21,000人以上の人が自ら命を絶ったというデータがあります。

その中でもとくに、未来を担う若者層で深刻な状況です。

日本の15歳〜40歳までの死因の1位は、病気でも事故でもなく、自殺です。

生きたくても生きられない命がある中で、多くの若者が「この社会で生きていたくない」と命を絶ってしまっているこの状況は、かなりの非常事態だと思っています。

このままではまずい、〈宝島〉でなにかできないだろうか、近頃よく考えています。

かくいう僕も、うつ病で1年間引きこもっていたことがあります。

その期間のことはあんまり覚えていませんが、とにかく「生きているのが辛い」と日々感じていて、「死んでしまったら楽かもしれない」と何度も考えたことは記憶にあります。

父が精神保健福祉士で、理解のある家族が一緒にいてくれたので、僕は今こうして、元気に生きられているんだと思います。

自殺当事者の事情は、千差万別だとは思いますが、共通して、”孤独なこと”が大きく影響しているといわれています。

頼れる人が近くにいる、安心できる居場所があるということが重要なんだと。

生きていれば誰しも、孤独を感じることはあるでしょう。

でもそれが、自分で命を絶つ選択をするまで独りぼっちになる状況は、どうにかすれば、食い止められるのではないかと思います。

〈宝島〉は暮らしが交ざり、つながりが生まれる場所。

仕事のこと、生活のこと、子育てのこと。

1人で考え、悩むのは大変なことだと思います。

僕たちにも、その生きづらさやモヤモヤをぜひ教えてください。

みんなで考えたらなんとかなると思います。

〈宝島〉に、いつでも。

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上田 潤

富士吉田市地域おこし協力隊

山梨県南アルプス市出身。大学進学を機に上京し、数社のジョブホップを経て2020年10月に地域おこし協力隊着任。地域福祉をテーマに、高齢者の生活支援〈じばサポ〉、高齢者との日常を綴るインスタマガジン〈しわじわ〉、自宅を地域へ開放した〈ソーシャルハウス宝島〉の3事業を運営。”共生社会の実現”を目指し、人のつながりで社会課題の解決に向き合う。

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