宮﨑 博

2023.10.18

富士吉田知ル知ル8「昭和の街を歩いてみたら その4 昭和のアートって何だかいい!」

富士吉田の中でも西裏という昭和の街がそのまま息づいている場所は、噛めば噛むほどに味わいがあるといった不思議な魅力がある。

都心からわざわざ昭和アミューズメントパークである、この地を訪れる人も増えている。

今回は、西裏のアートを探してみた。

ちょうど10月の21日と22日に街のビッグイベントである「ハタオリマチフェスティバル(通称:ハタフェス)」がこの辺り一体で開催される。

千年以上前にこの地には機織りという技術が伝えられ様々な時代を通して発展してきた。長年の蓄積から多くの職人と技術を生んできたという。

中でも一番発展したのが昭和時代。そんな街だから、昭和のおもろいアートがそこら中に眠っている。何気なく通り過ぎるのではなく昭和アートを探すお散歩もいいと思った。

まず、ハタフェスについて少しだけ触れておこう。織物の祭典だけあって、古き良き時代の作品や進化した現代アートのような織物作品を実際に見ることができる数少ない機会である。昨年、初めてこのイベントを見に行ってなかなかの好感触だったことを覚えている。

出店者のお店や屋台の飲食点などが軒を連ねているのだけど、テントがおしゃれで統一したカラーと素材で参加者を魅了する。

「なにこれ、なんかいい。ナチュラルなラクダ色のテントが広場を埋め尽くしているぞ」手作りのお祭りにありがちなブルーシートや不揃いのテントではなく統一感があって参加者はお祭りの一体感が心地いい。どこか海賊時代のヨーロッパのマルシェみたいといった感じだ。時間がある人はわざわざ遠くからでも一見の価値があるイベントだろう。

さて、こういったイベントに参加しながら昭和アートを探すというのはどうだろうか。

西裏で隠れた場所に点在するのが「昭和のモザイクタイル・アート壁」そう聞いても思いつかないだろうが、昭和の時代は建物に個性があった。他の家と差別化するために競って壁や床を飾った。それが僅かに街の中に残っている。

モザイクタイルは表面積が数センチの小さいタイルで色とりどりのものを組み合わせて敷き詰めることで壁や床をかっこよくするもの。大体は岐阜県の美濃焼タイルが使われている。

西裏の路地のスナック街をまず歩いてみた。

「ありました〜、何とも言えない幾何学模様の壁〜。色も考えてるね。よく見ると適当に組み合わせているのではなくある法則に則って配列されてるんだね〜」

このようなめんどくさいことを昭和の職人は腕を競って行ったという。

グリーンの濃淡とホワイト、異なるサイズの組み合わせが絶妙


しばらく歩くと、

「おお〜っと、またまた出ました。これはまさにアート作品。すげ〜、いったい誰がやったの〜」

この壁はまるで現代アートの絵画のよう。さらによく見るとただの破片を適当に組み合わせているのではなく、ちゃんと同じ形に削ったタイルを法則的に組み合わせている。

何とも不思議なアート作品。いろんな形やものに見えてしまうのは僕だけだろうか


さらに探索すると、タイルではないが不思議な壁さんに出会った。

「おいおい、これは超現代アートじゃないか。建築家の安藤忠雄もびっくりだよな〜。ようできてるわ」

素焼きのレンガみたいなセメントのような壁。ただの平面でないところが昭和アート

こういうの、もっとないかなと探してみると〜。

「ありました〜。何じゃこりゃ。城壁の石垣のような組み合わせの石たち。だけど〜、なぜか、登ってくださいと言わんばかりの突起石。凝ってるな〜」

ただの城壁じゃ面白くないからこんなん作りました〜ということなんだろうな。

これも現代アート風。昭和の石垣壁

西裏を少し歩くだけでこのような壁が次から次へと姿を現す。この前は上を向いて歩いていたけど、今回はどちらかというとやや下の壁を見て歩いているな。

中には黒い石だけを、しかも平なものを集めて感性だけで組み合わせた壁もあった。

「おいおい、昭和時代に卵の殻を集めて色塗って画用紙に貼って絵を作るのが流行ったよな〜。この壁はまさにその感じのアートだね」

渦巻き状に配列してぐるぐるっとしたい小石のアート



このように手の込んだ壁もたくさんあるが、ちょっと手を抜いちゃったな〜という壁も愛らしい。セメントの真っ平な壁じゃ味気ないと思って、モルタルを漆喰風に盛った感じの壁を発見。

一見荒い仕事に見えるが、よ〜く見ると手が込んでる。ここの前で写真撮って今風の天使の羽になるかもよ


さらに路地裏へ。今は営業していないみたいだけど料理屋さんの外壁が〜。

「おお〜と、これ何? さざれ石かな〜。どっかで拾ってきた石積んで固めてあるぞ」

何だかわからないがすごく狭いスペースで枯山水風にしてある。これも昭和アートだよな。

この壁のすごいところは石の後ろに見えるガラスのタイル壁。ザ・昭和の壁だ


少しメジャーな月江寺大門商店街へ。老舗の喫茶店の〜。

「すごい〜、COFFEEが3Dでレンガ壁に。レンガもいい味出しているけどこのフォント(文字書体)がステキだ」

一枚一枚ていねいに(ある意味雑だが)焼かれたレンガに3D文字。かっこいい


アンティーク風のカフェの軒先には昭和のモザイクタイルが。これは見た人が多いと思うがとても目を惹くもの。小さな真四角のモザイクタイルがさりげなくデザインされていてとてもカワイイ。昭和の職人はいいセンスしていたのだな〜

こんな流し台だったら土のついた野菜洗うのに楽しいだろうな〜


この通りのもう一つのポイントは地面の石畳だ。不可思議な6角形のようなアメーバのような昭和デザインが組み合わさっている。なかなかの地面だからじっくり見てもらいたい。

不可思議な幾何学模様の石畳。昭和の街にピッタリ


と、今回は昭和のアートを探す旅に出たわけだが、ここで番外編。かなり貴重な昭和物を見つけたので紹介したい。この月江寺大門通りには面白い陳列があった。1944年(昭和44年)から福助株式会社が取引先向けにお正月に配った福助人形がなんと3体も鎮座しているではないか。これはかなり珍しい昭和のものですよ。

一番左は干支(多分イノシシ)の年のもの。後の2体は上客に配られたもの


西裏をぶらぶらする時には天を仰ぎ、地に足をつけて、様々な角度から街を見る。そうすると何とも面白いものばかり。そしてナマ昭和を体感することのできる都会から近い街。興味のある人はぜひ探索してもらいたい。


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宮﨑 博

編集者・出版プロデューサー

出身地
神戸市

プロフィール
大手出版社社員を経て20年前に2拠点生活を開始。16年前より富士吉田市に完全移住し、リモート生活を実践。現在、富士山に一番近い出版社の編集統括に就任中。

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