FUJIYOSHIDA DIARY MAGAZINE

土地・環境

藤崎 仁美

2022.01.24

ハタオリのあるくらし07 「育てて、染めて、織る」

今回は、富士吉田市に移住してから取り組んできた、大好きなことについてのお話です。

畑で染料植物を育てて、染める

私は富士吉田市に移住する前、一時期、京都の草木染め・手織りの学校へ通っていたことがあります。

今では機械織りのお仕事に就いていますが、染めや織りをすることは初めてのことで、「季節の草木から色をもらって、絹糸を染め、手機で織る」という体験に感動しました。
当時、教室からもらってきた藍のたねを、実家でプランターにたねまきして育ててみたら、虫にたくさん食べられてしまいました。でも、ほんの少しだけ収穫できた葉っぱで、藍の色を染められたときは本当に嬉しくて。

もっとたくさん育てたいなという思いが芽生えました。

しかし富士吉田市に移住してからしばらくは、未経験の機械織りのお仕事で気持ちがいっぱいいっぱいだったので、藍を育てようと思い立つ余裕がありませんでした。

ときどき、ヨモギを染めたりしましたが、草木染めや手織りに取り組めずにいました。

ところが、結婚して農業に興味のある夫と庭で野菜を育てはじめてから、少しずつ変化がおきていきました。

私たちが小さな庭で野菜を育てていることを知った知り合いの方が、親切にも畑を貸してくださることになりました。それ以降は、夫が主導で畑の計画をして耕したり、わたしもたねまきを手伝ったりと、いろいろな野良仕事を続けるようになり、藍や紅花も育てるようになったのです。

たねは、たねとりを3年間繰り返すと、その土地に合ってくるそうです。
藍のたねが、富士吉田市の土地に慣れていったらいいなと願って、たねをまきはじめました。
ちいさなちいさな芽が出て、水やりをしているうちに、どんどん成長して、葉っぱが青々としてきます。何度も葉っぱを収穫している間に秋になり、小さくて可愛いお花が咲きます。

お花が咲いたら、ミツバチや虫たちが来て、そのうち、たねがつくられて、枯れていきます。
たねができたら、土に落ちてしまう前に、たねを収穫します。
そしてまた次の春がきたら、そのたねを土にまく、というサイクルを3年繰り返しました。

たねとりを繰り返すたびに、藍は年々たくましくなり、すっかり“富士吉田っ子”になったように思います。

毎年、夏から秋にかけて、たくさん、美しい色をみせてくれます。

わたしの、夏のいちばんの楽しみです。

そして、染めるとこんな色合いに。

ほかにも紅花を2年育てましたが、こんなお花が咲きます。

とげとげの棘がワイルドなお花です。

花びらをやさしく摘んで、染めに使います。

少し複雑な工程を経て、色を染めると、きれいなピンク色があらわれました。

ほかにも、身のまわりで植物を収穫したり、育てられない植物は購入したり、知り合いの方から染料になる木をいただいたりして絹糸を染めていったら、草木の色が集まりました。

私は植物と関わったり、植物から新鮮な生きた色を染めることに喜びを感じるので、こういう暮らしができていることがとても嬉しいです。

染めた糸を、織る

こうして染めてきた糸を織りたくなり、富士吉田市に引っ越してから、高機といわれる「手織りの機織り機」を購入して自宅に置きました。

引っ越しの際などに、織り機を目にした地域の方からも「昔、おばあさんがこういう機織り機で機を織っていてね…」など聞いて、「今の機械織りより前の時代、手織りを暮らしのなかでしていた人たちが富士吉田市にいたんだな」と知りました。

ほかの地域では、「ハタオリをしていて」といってもいまいちピンとこない人や、そもそもまったく興味のない人も多いのですが、さすがハタオリのまち。

富士吉田市では、地域の人に「ハタオリをしている」と話せば、「ハタオリというのが、昔の家族との記憶を思い起こさせるなつかしいもの」だったり、ご自身もハタオリ経験者だったりして、ハタオリの思い出話が聞けるので、なんだか嬉しいです。

富士吉田市には、ハタオリの先輩がいっぱいだな、と思いました。

また、機織り機をもつことについては、東京の知人などから、「大きくて家には置けないなぁ」とか、「織る音が下の階に響いて迷惑になるから、欲しいけど無理」など“欲しいけどもてない”とため息まじりの話をしばしば聞いていました。

でも、富士吉田市の暮らしでは、幸い、問題なく設置できているし、機械織りのハタオリの音を町の人は知っているから、その音と比べたらとても静かなので、きっと音も問題にならないのではないかなと思っています。

なので、機織りしたい人には、いい環境なのではないかと思っています。

私は、機械の機織りは6年間やってきましたが、手織りはまだまだ、初心者。
でも、せっかく染めた糸を織りたくて、下手でもいいから、試しに糸を巻いて、織ってみました。

染めた植物との思い出を振り返ったり、植物を煮て染めたときの蒸気の香りだったり、色を見たとき感じたうれしさだったりを思い出しながら織る時間は、とても楽しかったです。織った織物を、ちいさな額に入れてみました。

これまであまり意識していなかったけれど、名古屋にいたときに漠然と憧れていた暮らしは、こういった暮らしだったのかもしれないな、と思いました。

夫と畑をしながら、大好きな染料の薬草を、たねから育てて、収穫して、きれいな色を染めて。植物と親しみながら、手織りをする。

”私が叶えたかった暮らし” が富士吉田市で叶って、よかったです。

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藤崎 仁美

1989年名古屋市生まれ。大学ではフランス語を専攻。大学在学中、〈フジファブリック〉のイベントのために、はじめて富士吉田へ訪れる。卒業後は愛知県のエンジニアリング会社で総務を経て、社内異動によりNX(3DCAD)の講師を務める。
そのころ、仕事のかたわらで週末京都の学校に半年間通い、草木染めや手織りを体験。染織や自然と親しむ暮らしがしたいと思うようになる。そして、2015年、〈宮下織物株式会社〉へ入社するために富士吉田市へ移住。未経験から、ジャカード織物の機織り職人として6年間勤務し、2022年春に退職。
現在は、染料植物を育てて草木染めをしたり、植物と親しむ暮らしを楽しんでいる。

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