FUJIYOSHIDA DIARY MAGAZINE

土地・環境

藤崎 仁美

2022.08.21

草木とともにあるくらし 05

8月の富士吉田

いよいよ太陽が高くのぼり、晴れわたる8月。

庭では、昨年と同じ場所に、紫色の桔梗の花、そして百合の花が大きく咲いてくれました。

花たちの顔ぶれが、夏の後半へうつろいゆく四季の巡りを知らせてくれます。

庭で自生している植物たちは、ちゃんと時季が来ると、こともなげに自分で花を咲かせ、咲き終わると潔く散って、土へと還っていく。

冬には跡形もなくなるのに、翌年には、またすっと咲く。

そのたくましさ。自然のリズムに乗って執着せずに変化していく植物の生き様。

見ていると、気持ちが晴れ晴れとしてきます。

つねに「今を生きる」植物の存在はかっこいいなぁ、とあらためて思いました。

さて、気温も高く、晴れ間が多い夏の土用の時季(7月下旬から8月初旬頃)は、梅を干すのにいいタイミング。

夏の土用は、8/7の立秋までの18日間のことをいいますが、梅雨時期に仕込んだ梅を、この土用の時季に干すのには、意味があります。

この時季は、強い紫外線が梅を殺菌してくれて、天日干しにすることで保存性が増すといわれているからです。

3日間、梅を干し、一日に一度ひっくり返したり、夜露に当てたりして、我が家の梅干しは完成しました。

これで1年はおいしく梅が食べられます。大事な夏のひと仕事を終え、すこしほっとしました。

梅だけでなく、夏の山梨といえば、桃も有名です。

富士吉田では、ほとんど栽培されていませんが、山を越えた笛吹市のほうでは、山間に桃畑がずっと広がっていて、たくさんの桃が育っています。

先日、たまたま用事のついでに笛吹市内を車で通ったのですが、あちこちの桃農家さんたちが、店先で直売をされていました。

毎年「夏は富士吉田にいれば涼しいだろう…」と近隣まで出かけることも少なく、「笛吹市や甲府市は暑いだろうなぁ…」と思って行くこともなかったのですが、こんなに新鮮な桃があちこちで売られているなんて…と、驚きました。

そして道の駅に行くと、贈答用の立派な桃からハネダシの桃まで、たくさんの品種の桃が売っていました。

こんなにたくさんの品種の桃が並んでいるのを見たのは初めてだったので、桃が大好きな私は、どの桃を選んだらいいかドキドキしながら、「あかつき品種は固め」…などの説明書きを読みながら右往左往し、結局、固めのハネダシ桃を購入して帰りました。

とてもお買い得なうえ、とってもおいしかったので感動してしまいました。

夏に桃を買うなら、また山を越えて買いに行こうと心に決めました。

富士吉田に住んで7年目にして知った、山梨の夏の楽しみです。

ちなみに、購入した固めの桃は、庭で育てているレモングラスのハーブと一緒に軽く煮て、桃のコンポートをつくりました。

冷やして食べて、ほんのりピンク色のシロップに炭酸水を入れて飲んだら、とてもさわやかでおいしくなりました。

桃はそのまま食べてもおいしいけれど、こうしてコンポートにして、いろいろな味わいを少しずつ楽しむのも、夏の贅沢のひとつでいいなと思いました。

8月の草木染め

春先に種まきをして育ててきた藍の葉っぱが、太陽をたくさん浴びて育ってきました。

少しだけ種をまいた紅花も、花を咲かせ始めました。

紅花で色を染めるには、この紅の花びらがたくさんたくさん必要なので、今年はまだ色は染められませんが、こうして花を見られてうれしいです。

漢方では、紅花は健康に良いお茶とされているので、乾燥して飲んでみるのもいいかもしれませんが、匂いが強烈なので、ちょっと悩むところです。

さて、8月に染めるのは藍の葉っぱです。

この藍の葉っぱを摘んで草木染めをするのが、毎年の私の夏の楽しみとなっています。

藍は、ゴマのようにちいさなちいさな種から、ちいさな芽が出て、夏に向かって少しずつ葉っぱが育っていきます。

生命力がたくましい植物ですが、たくさんの水が必要なので、植えたばかりの頃には、枯れないように、こまめに水やりをしました。

葉っぱは、梅雨時期の雨が大好きで、雨が降れば降るほど、青々として生き生きしていきます。

今年は梅雨明けが早く、少し水が足りていない気もしましたが、葉っぱは元気だったので、摘み、染液をつくり、無事、藍の色を染めることができました。

藍は、夏がすすみ、葉っぱがある程度育っていくと、今度はつぼみをつけはじめ、花を咲かせることにエネルギーが向かっていきます。

そうすると、葉っぱの色つやがなくなり、乾燥しがちになり、きれいな色が染まらなくなってきます。

そして、藍の花が咲き、種をつけ、1年のサイクルを終えていきます。

フレッシュで美しい藍色をもらえるのは今だけ。

生葉で染めるには、葉っぱを収穫してからすぐに染める必要があるので、生きた藍を育てていないと染められない、とても貴重な色です。

また、藍は草木染めの印象が強いですが、古くから薬草として愛されてきました。

強い解毒・解熱・消炎作用があり、食あたり防止などに効果があるとされ、江戸時代の記録では、ふぐによる食中毒の対処にも藍が使われていたといいます。

私も、一度、種を煎り、お茶にして飲んでみたことがありましたが、飲みやすくおいしかったです。腹痛に、また健康茶として常用している方もいるそうです。

そんな薬草でもある藍。

今年も育ってくれたことに感謝しながら、染めていくと、こんな色を見せてくれました。

今年の8月の藍の色は、清流のように涼やかな色でした。

今年も藍と夏を過ごせてよかったです。

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藤崎 仁美

1989年名古屋市生まれ。大学ではフランス語を専攻。大学在学中、〈フジファブリック〉のイベントのために、はじめて富士吉田へ訪れる。卒業後は愛知県のエンジニアリング会社で総務を経て、社内異動によりNX(3DCAD)の講師を務める。
そのころ、仕事のかたわらで週末京都の学校に半年間通い、草木染めや手織りを体験。染織や自然と親しむ暮らしがしたいと思うようになる。そして、2015年、〈宮下織物株式会社〉へ入社するために富士吉田市へ移住。未経験から、ジャカード織物の機織り職人として6年間勤務し、2022年春に退職。
現在は、染料植物を育てて草木染めをしたり、植物と親しむ暮らしを楽しんでいる。

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