FUJIYOSHIDA DIARY MAGAZINE

土地・環境

藤崎 仁美

2023.02.04

草木とともにあるくらし 10

1月の富士吉田

年が明け、2023年がやってきました。

大晦日から元旦に変わる頃、近くの神社から太鼓とお囃子が聞こえてきて、いそいそと年越しの初詣に出かけました。

神社では、茅の輪(ちのわ)くぐりをさせてもらったり、人が集まってにぎわっていたり、お焚き上げの火のそばでお神楽を鑑賞したりしながら、「日本のお正月の風情が好きだなぁ」としみじみしました。

日本らしい風習といえば、7日に七草粥をつくりました。

富士吉田のこの気候では自生している七草は見つけられないと思うので、私は毎年、スーパーで七草セットを購入しています。

子供の頃は、好きなお雑煮や黒豆などのおせちと比べて、七草粥はなんとなく地味な印象を感じていましたが、大人になってからは、その滋味深さが好きになりました。

年を重ねたからなのか、それとも今の身体に合っているからかもしれません。

あらためて調べてみると、七草粥の身体への効能に驚きました。

ちょっと記載してみると…

●せり:「競り勝つ」という意味合いがあり、高血圧・貧血予防に

●なずな:「撫でて汚れを払う」という意味合いで、高血圧予防や解熱、利尿作用

●ごぎょう:「仏の体」という意味があり、咳止め、痰切り、風邪予防に

●はこべら:「子孫繁栄」の意味で、止血作用や、腹痛の薬として

●ほとけのざ:「仏様が座る安座」の意味があり、整腸作用や、高血圧予防に

●すずな:「神様を呼ぶ鈴」という意味で、消化促進、整腸作用

●すずしろ:「潔白」の意味合いで、消化促進、風邪予防に

無病息災を祈る風習の七草粥は、すばらしい効能をもつ養生食でもあると知りました。

7日には七草粥を食べるという風習を単にそのまま続けていたけれど、あらためてその意味や効能を調べてみると、大事なタイミングで食べる風習が残されていたのだなと気づかされます。

文化は先人の知恵を引き継いでいるものだと思うと、できれば風習の形式だけでなく、その叡智も理解して受け継げたらいいなと思いました。

こうしてはじまった1月。

寒い日が続くと、あたたかみのあるものが欲しくなります。

いい香りがしたらなお嬉しい。

そんな気持ちから、この頃は、茶香炉で緑茶を焚くことにはまっています。

あるとき「茶香炉が欲しいな」と思っていたときに家族からもらったのですが、とっても気に入っていて、最近は以前にも増してよく使っています。

飲みきれていなかった古い緑茶などの茶葉を、お皿にのせてキャンドルを灯すと、お茶屋さんに漂う香りのような、いい香りが漂い始めます。

ずっとそのままだと一部の茶葉だけが焦げてしまうので、時々茶葉を混ぜながら香りを楽しんでいると、最後にはほうじ茶のようになります。ほうじ茶として飲んでもいいようです。

ちょっと気分を変えたいときや、心を落ち着かせてじっくり本でも読みたいとき、または、料理の匂いが部屋に残ってしまったとき、そんなときにはぴったりです。

調べてみると、緑茶に含まれるカテキン類には、臭いのもとと結合する性質があり、そのおかげで茶香炉には消臭効果があるそうです。

また、緑茶の青葉アルコールという成分には、リラックス効果があり、お茶を熱することで生まれるピラジンという成分が、脳をリラックスさせたり、血流の流れを向上させてくれるとのこと。

そのため、茶香炉には消臭効果やリラックス効果があるといわれています。

また、火が灯されて揺らいでいるのを見ることにも癒し効果があるのを感じます。

私は、柔軟剤や強い人工的な香りは苦手ですが、こうした自然由来の優しい香りは好きです。

乾燥しているこの季節は、火の扱いには注意が必要ですが、私の冬の暮らしを豊かにしてくれているもののひとつです。

1月の草木染め

寒い日々のなかで、茶香炉以外にも毎日使っているものがあります。

それは湯たんぽ。

ただお湯を入れるだけのシンプルなものだけれど、電気毛布を使うときみたいに乾燥しないし、電気代もかからないけれど、お布団を朝まであたためてくれる優れものです。

じんわりとしたあたたかさに、毎日癒されているのですが、もともとセットでついてきていたカバーがあまり好きなものではなかったので、自分でつくることにしました。

染めるものは、年末年始にスーパーでよく見かけた、くちなしの実にしました。

くちなしの実は、おせち作りの際に、栗きんとんの色を良くするために使う人もいると思います。たくあんの色付けにも使われたりしています。

このくちなしの実は、単に色を染められるだけではなく、〈山梔子(さんしし)〉という名前の生薬として漢方でも古くから使われています。

調べてみると、くちなしの実に含まれるクロセチンという成分は、眼精疲労に効果があったり、甲酸化力が強いために血流を改善してくれたり、老化防止や、肩こりを和らげてくれたりするそうです。

また、中薬学の世界では、くちなしの実には熱を冷ましつつ、湿気をさばく性質があり、消炎・利尿・鎮静・止血・炎症由来の胸の苦しさを治す薬効があるとされています。

そんな薬効の高いくちなしの実で染めてみました。

布は、富士吉田で購入した、オーガニックコットンのネル生地を使うことにしました。布を裁断し、くちなしの実を煮だしてから、布を染めていきました。

そして染めたあとは縫い合わせて、ひもを通して、完成です。

やわらかくふわふわしたやさしいネル生地の白色も可愛いので、白色の部分も残して、くちなしの黄色との2色になるようにしました。

やさしい手触りの生地と、ほんわかしたくちなしの色が相まって、リラックスタイムに合う湯たんぽカバーになりました。

今年はこの湯たんぽと一緒に、寒い冬を乗り切っていきたいと思います。

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藤崎 仁美

1989年名古屋市生まれ。大学ではフランス語を専攻。大学在学中、〈フジファブリック〉のイベントのために、はじめて富士吉田へ訪れる。卒業後は愛知県のエンジニアリング会社で総務を経て、社内異動によりNX(3DCAD)の講師を務める。
そのころ、仕事のかたわらで週末京都の学校に半年間通い、草木染めや手織りを体験。染織や自然と親しむ暮らしがしたいと思うようになる。そして、2015年、〈宮下織物株式会社〉へ入社するために富士吉田市へ移住。未経験から、ジャカード織物の機織り職人として6年間勤務し、2022年春に退職。
現在は、染料植物を育てて草木染めをしたり、植物と親しむ暮らしを楽しんでいる。

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