5月の富士吉田の景色
富士吉田で5月をむかえると、ひそかに楽しみにしているものがいくつかあります。
ひとつは、この時季になると市街地のとある場所で、高く泳ぐこいのぼりを見上げること。
こいのぼりイベントが開かれているのではなく、おそらく、重機会社の方が、クレーン2台を使ってこいのぼりを設置してくれているのだと思います。
数年前、運転中にたまたま目撃して、市街地のなかに突如こいのぼりとクレーンが現れたので、びっくりしたのを覚えています。
大きなこいのぼりが、空高く風になびいて泳ぐさまは、とても風情があって。
あらためてよく見ると、鯉のうろこが金色だったり青色だったり、色や柄もじつにりっぱで、かっこいいものだなぁと、しみじみします。
地域のこどもたちが、のびのびと育つことをこいのぼりに託して願った、先人たちから続く文化は、いいものだなぁ…と思うようになりました。
もうひとつ、5月になると、そわそわして富士山を眺めるようになります。
その理由は、雪解けが進むと、「農鳥」とよばれる、鳥のマークが現れるからです。
富士吉田では昔から、この「農鳥」が現れるのを見て、田植えの時期をはかっていたと聞きました。
白鳥のようなアヒルのようなマークが、なんだか可愛いらしく、知ってからは、この農鳥のマークが現れると、ついつい富士山を見てしまうようになりました。
雨が続くと、富士山の上のほうでは雪が降り、また農鳥が見えなくなったり。少しずつ変化しながら、夏に向けて季節が移り変わっていきます。
農鳥がちょっとスリムになってきました。
夏になると、富士山の雪はすべて解け、深緑の富士山の姿になるのですが、
5月は雪がまだ残っているからこそ、こうした農鳥模様を見られる、貴重な時期です。
5月の草木染め
5月は、冷涼な富士吉田でも、いよいよたくさんの草が元気よく生えてきます。
私は草木染めをするので、今年の春の草を染めたいなと楽しみにしていました。
まずは、ハルジオン。空地などにたくさん生えている、ちょっとピンクがかった繊細な花びらが可愛いお花。草刈りしないといけないところにたくさん生えていたので、その前に摘んで、草木染めをすることにしました。
ちなみにハルジオンは、じつは薬効成分もある植物です。
乾燥させた花や葉をお茶として飲むと、糖尿病予防効果やむくみ改善に効果があるのだそうです。雑草扱いされがちな身の回りの植物も、みんなちゃんと名前があり、調べてみると薬草とされていたりします。
ハルジオンが花を咲かせたもの。これから咲かせるつぼみをもっているもの。どちらも摘んで、少し短く切ってから、煮出していきます。
生きた色を染めたいので、摘んだあとは新鮮なうちに、作業をします。
雑味を捨ててまた煮たりして、色を染めていきました。
そうして、ハルジオンは、こんな色になってくれました。
春らしい、陽だまりのような黄色です。
そしてもうひとつ、楽しみにしていたのが、よもぎです。
富士吉田のよもぎは、私の実家の名古屋と比べると、生えてくる時期が1か月くらい遅れていました。ほかの植物も、大体1か月くらい時季がずれているように感じます。
5月に入り、やっと摘めるくらい大きくなってきたので、染めることにしました。
ちなみに、よもぎも薬草です。
止血効果があったり、服用すれば、浄血・造血、貧血予防、コレステロール値や腸内環境を整えたり、デトックス効果、体をあたためてくれる効能があるとされています。
昔から、人々の間で、ケガをしたときにもみこんだり、草餅にしたり、なじみ深い薬草だと思います。
そんなよもぎの若い葉っぱを摘んで、煮出しました。
煮出している間、よもぎ蒸しのような、体に良さそうな香りに包まれます。
雑味を捨てて煮出して、染液をつくり、染めていくと、こんな若草色になってくれました。
地域で育った植物を、こうして旬の季節に染められることが嬉しいです。
今しか染められない、今年の「富士吉田の春の色」でした。