FUJIYOSHIDA DIARY MAGAZINE

コミュニティ

上田 潤

2021.01.21

上田潤の地域福祉とふじよしだ04「社会的処方」

みなさん、こんにちは。

先日、地域福祉に関する事例収集をしている中で、「社会的処方研究所」というオンラインコミュニティを発見しました。今回は、そのコミュニティから生まれた、『社会的処方』という本からの学びを紹介したいと思います。

地域福祉ととても親和性があり、これからの僕の活動の上で、欠かせない要素のひとつだと確信しています。

社会的処方と健康の定義

◯社会的処方とは
「社会的処方」
薬を処方することで病を治すのではなく、”社会との関わり”を処方することで問題を解決しようとするアプローチ。

◯考え方
社会的処方は医療業界から生まれた考え方。昨今、薬や手術という、いわゆる”治療”のみでは、病を引き起こす原因を抜本的に解決できないということが示唆されています。医療機関に持ち込まれる問題の3割は、社会的な問題が背景にあるともいわれ、それを解決していくので、社会的処方というわけです。

◯具体的な仕組み
具体的には、患者の非医療的ニーズに目を向け、地域における多様な市民活動や住民団体などとマッチングさせることにより、自律的に生きていけるように支援し、ケアの持続性を高める仕組みです。

◯「社会的処方」のはじまり
社会的処方の発展の背景には、社会的孤立への問題意識の高まりがあります。
「社会的孤立=つながりがないこと」は病気よりも寿命を縮める、という研究結果もあるくらいで、孤立というものが、健康に対して大きな影響を及ぼすということが、近年わかってきたそうです。

「どれだけ運動をしているか」、「どれだけ酒や煙草を呑むか」、「どれだけ太っているか」といったことよりも、「どれだけ人とのつながりがあるか」ということが、健康に大きく関わるというわけですね。

◯「健康」の定義
〈世界保健機関(WHO)〉は、
「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた(良好な)状態にあること」と定義しています。

参照:『公益社団法人日本WHO協会HP』
https://japan-who.or.jp/about/who-what/identification-health/

“健康”というとき、多くの人は”肉体的・精神的に良好な状態にあること”と認識するだろうと思います。僕も地域福祉に興味を持つまではそうでした。医療の前線では、肉体的・精神的にどれだけ良好かということは、社会的にどれだけ良好な状態か、ということに起因するといいます。どうやらこれからは「社会的に満たされている=人とのつながりがある」ということが、健康にとって最も重要な要素だと、認識を改める必要がありそうです。

イギリスにおける社会的処方|リンクワーカーという仕事
社会的処方の取り組みにおいて、特に先進的な国があります。それは、イギリス。
イギリスでは、1980年頃から社会的処方の取り組みが始まったとされ、今では100以上の社会的処方の仕組みが稼働しているそうな。薬を処方するのではなく、社会との関わりを処方するということが、既に日常的に行われているということですね。ちなみに医師だけでなく、看護師や薬剤師、ソーシャルワーカーなどがこれを行う場合もあるようです。

この発展の大きなカナメを担う、「リンクワーカー」と呼ばれる人たちがいます。

リンクワーカーは、社会的処方をしたい医療者からの依頼を受けて、患者やその家族と、地域活動をマッチングさせることが仕事。イギリスでは主に非医療従事者が担っています。

また、ロンドンの貧困地域に、〈ブロムリー・バイ・ボウセンター(以下、BBBC)〉という、地域総合コミュニティ施設があります。BBBCは、住民主体で運営していて、リンクワーカーの養成プログラムにも注力しています。プログラムには誰でも参加でき、1年間で500人のリンクワーカーの創出を目指しているとのこと。

BBBCの理念は、「どんな人でも地域をよくする力を持っている」ということ。そして、地域を「解決すべき課題の塊」ではなく、「解決手段のための資源に溢れたエリア」と捉えます。住民みんなで協力すれば、困りごとは解決していけるという、とてもポジティブな考え方ですね。

この考え方に、僕は地域福祉との親和性をすごく感じています。

富士吉田市のリンクワーカーという生き方
「どんな人でも地域をよくする力を持っている」というのは、考えてみたら当たり前のことかもしれない。人はそもそも、生きて社会と関わる中で、誰か・どこかに、なにかしらのプラスな影響を及ぼしているはず。誰か・どこかに対して、プラスに作用できないという方が無理がある気がします。「社会から必要とされていない、なんていう人はいないんだよ」というようなメッセージにも感じますね。

今回、「人々はだれもが地域をよくする力」を持っていて、「地域は問題解決のための資源に溢れたエリア」だということがよくわかった。あとはここをリンクさせるだけ、ということだ。よしよし、未来は明るい。

この考えが広まっていったらいいな。いや、広めていこう!

富士吉田市初の「リンクワーカー」とでも名乗ろうか。

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上田 潤

富士吉田市地域おこし協力隊

山梨県南アルプス市出身。大学進学を機に上京し、数社のジョブホップを経て2020年10月に地域おこし協力隊着任。地域福祉をテーマに、高齢者の生活支援〈じばサポ〉、高齢者との日常を綴るインスタマガジン〈しわじわ〉、自宅を地域へ開放した〈ソーシャルハウス宝島〉の3事業を運営。”共生社会の実現”を目指し、人のつながりで社会課題の解決に向き合う。

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