上田 潤

2022.07.15

上田潤の地域福祉とふじよしだ 24「見えない暮らし」

高齢者の生活支援〈じばサポ〉。

現状の福祉制度や民間サービスではまかないきれない、身近に、気軽に頼れる人がいない「高齢者の生活の困りごと」をサポートする活動です。

この活動を始めてから、1年が経ちました。

2022年7月12日、支援の実施回数は100回目を記録しました。

活動を通して、世の中には本当にいろいろな暮らしがあって、人それぞれ、様々な生きづらさを抱えながら、必死に生きているということを

日々実感しています。

先日、あるおじいちゃんから「入れ歯を探してほしい」という依頼がありました。

訪ねてみると、家の中にものが散乱していて、ゴミとネズミの糞だらけ。

入れ歯を探すだけと思っていた僕は、少し面食らってしまいました。

そんな僕を見て、「すまんな兄ちゃん、身体が動かねぇんだよ」とおじいちゃん。

この方は肺に疾患があり、酸素吸入器を使っての呼吸補助が必要でした。

立ち上がってトイレに行くだけでも、息苦しくなってしまうのだそうです。

ゴミを片付け、ものを整理すること2時間。

入れ歯が見つかってひと安心、2人で喜びました。

もし自分がこのおじいちゃんと同じ状況だったら、部屋をきれいに保てるだろうか。

片付けたくても自分ではできない、身近に頼れる人もいないというとき、なにを思うのか。

帰りの車のなかで、そんなことを考えていました。

後日、今度はおばあちゃんから「家の整理を手伝ってほしい」と要請がありました。

この方は、ご家族の事情で家を急遽引っ越さなければならなくなり、市営団地に入居。荷物整理の最中に転倒してしまい、入院。今は杖をついて歩くのがやっとで、荷物の整理はままならないという状態でした。

僕が初めて訪問した日は、このおばあちゃんの息子さんの命日だったそうです。

「ごちゃごちゃの家の中で心細かった私を心配して、息子があなたを連れてきてくれたのね」と。

それ以降は週に一度のペースで訪問し、お家の整理を手伝っています。

同じまちのなかに、いろんな暮らしがある。

近所に住んでいる人や、スーパーですれ違うあの人も、様々な悩みや不安を抱えながら生きている。

僕たちはつい、自分の生活のことで頭がいっぱいになってしまうけど、見えない暮らしがたくさんあることを、忘れないでいたいと思います。

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上田 潤

富士吉田市地域おこし協力隊

出身地
山梨県南アルプス市

プロフィール
大学進学を機に上京し、数社のジョブホップを経て2020年10月に地域おこし協力隊着任。 地域福祉をテーマに、高齢者の生活支援〈じばサポ〉、高齢者との日常を綴るインスタマガジン〈しわじわ〉、自宅を地域へ開放した〈ソーシャルハウス宝島〉の3事業を運営。
共生社会の実現”を目指し、人のつながりで社会課題の解決に向き合う。

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