11月の富士吉田
寒暖差がはげしくなって、すっかり秋になった富士吉田。
まわりの山々は、少しずつ色づいてきました。
燃えるように紅葉して、枯れ葉が風に舞って土へ還り、本格的な長い冬を迎えるまでの、一番美しい季節です。
富士吉田では、紅葉の観光スポットでなくても、町のいたるところが紅葉しているので、生活しているだけでも景色が綺麗です。
少し車で行けば、林のある公園もあります。
先日は林の中に立って、しばらく紅葉した木々の景色を味わっていました。
これまでは「枯葉」というと、さまざまな曲や物語から受けたイメージもあってか、散っていくのが寂しい、というイメージが漠然とありました。
でも、葉っぱが枝から離れ、ゆっくりと舞っていき、カサ、と土へたどり着く。その様子を林の中でぼんやりと見つめていたら、それは、ただただ、とても美しい光景で。
土へ還ることは喜ばしいこと、春に芽吹くこともまた喜ばしいことだなぁ、と季節がめぐる“循環の神秘”に想いを馳せたりしました。
冬になると、このあたりでは景色から色彩がなくなるので、今だけの美しい鮮やかな色たちをこころにいっぱい吸い込んで、味わっています。
11月の草木染め
この時期になると、空地や道端に元気に生えている、黄色のお花。
セイタカアワダチソウという植物です。ふわふわの黄色のお花が、紅葉の景色のなかで一緒に咲く姿は、とても綺麗。
この植物は、花粉症の原因のひとつのブタクサと間違われたことから、花粉症のもとだと誤解されたり、空地にたくさん生えることから、あまり人気があるとは言えませんが、実は、北米からやってきたハーブ。
お花の部分に体の毒素を排出する効果があり、入浴剤として使うことで、皮膚炎やアトピーにも効果があるとされています。
また、セイタカアワダチソウは花粉症のもとになる植物ではなく、蜜源植物(みつげん しょくぶつ)として、いろんな虫たちに蜜を与えている植物です。
だんだん植物が枯れ始めてお花も少なくなるこの時期に、虫たちが越冬するために貴重な蜜をたくわえているお花です。
今月は、そんなセイタカアワダチソウを染めてみることにしました。
虫があまりついていないお花を摘んで、煮だしていきます。
先月、富士吉田で開催された〈ハタオリマチフェスティバル〉に行って、コットンウールのはぎれの布を買っていたので、その布を染めてみることにしました。
煮だしていくと、染液は、こんな色に。
ちなみに、煮ているとなんだか春菊をゆでたときのような香りがします。
染液が準備できたら、布を動かしながら、じっくり染めていきました。
セイタカアワダチソウに感謝しながら、色に出会えるのを楽しみにしながら、じっくりと染めていくと、こんな色になってくれました。
紅葉しているイチョウの葉っぱたちみたいな、明るい黄色です。
この染めた布を今度は縫って、首をあたためるスヌードをつくることにしました。
布の表と裏で染まった色が違ったので、より発色の綺麗なほうを表にして縫っていきます。
一回ねじれるように縫ったら、完成です。
紅葉のなかで調和するような、セイタカアワダチソウのスヌードができました。
コットンウールが肌触り良く、あたたかいです。
元気な黄色を分けてくれたセイタカアワダチソウ。
道などで見かけるたびに、あの色をもっている植物なんだなぁ、と
以前にもまして親近感が湧くようになりました。
住んでいる土地の植物から色をもらえるのは、やっぱり嬉しいなと思いました。
これからますます寒くなる富士北麓ですが、今年の冬は、セイタカアワダチソウの色と一緒に過ごせるのが楽しみです。