3月の暮らし
私の3月は、小さな挑戦からはじまりました。
というのも3月はじめに、地元の名古屋市近郊で開催されたマルシェに出店したのでした。
所属しているオンラインコミュニティが開催するマルシェだったので、安心して参加できる環境ではありましたが、愛知県のマルシェに出るのは初めてだったので、ちょっとした挑戦でした。
当日は名古屋から少し離れた、セントレア国際空港にある展示室での開催でした。
お天気も良く、良い雰囲気のなか、無事イベントが開催されました。
私は、オーガニックコットンのネル生地を草木染めしてから縫ったコースターや、てのひらにおさまるポーチ、リネンのワンハンドルバッグ、そしてリネンやシルクのストールを販売しました。
さくらんぼの枝やクサギの実、くちなしの実、玉ねぎの皮、セイタカアワダチソウなどの植物からもらった色たち。
気に入った色を選んでいってもらえたり、以前に購入してくださった方がまたお話に来てくれたりして、とても嬉しかったです。
愛知県の大学時代の友人が来てくれたのもすごく嬉しかったですし、ほかの出店者の方々とお話ができたのも幸せで楽しい時間でした。
ちなみに今回は、自分で縫った服を着ていきました。白いブラウスです。
昨年のハタフェスで購入した静岡県の高田織布さんのリネン生地で、フリルがついたブラウスを縫いました。
型紙は本の型紙を使いつつ、袖はギャザーのものにしたかったので組み合わせを変更してつくりました。
以前から自分で草木染めの服をつくれたらいいなと思っていたので、今回も縫ったあとに草木染めをしようかと考えていました。
ですが、草木染めのストールを巻くには白いままの方が映えると感じたので、ひとまず草木染めはせず白いブラウスとして完成させました。
もう少し上手に縫えたら良かったなと思うところも多々ありましたが、マルシェに間に合って良かったです。
じつは少し前から、山梨県の中央市にてリネン服をつくっているファクトリーブランドのwafuさんが開講されている、パターンメイキングスクールに通いはじめています。
自分で考えて草木染めの服をつくりたいなと思いながら、服のパターンがつくられる過程を学んでいるところです。とても面白いし、すごくいい“気”が流れているところなので、わくわくします。
ゆくゆくは自分でパターンからつくって、「草木の色の服がつくれたらいいなぁ」と願っています。
パターンとは別に、縫う技術もまだまだ練習が必要なので、少しずつ上達できたらいいなと思っています。
さて旅の話に戻ると、今回は往復バスの時間の都合もあり、名古屋に少しゆったり滞在しました。
その中で、実家のある地域の神社のご神木に会いに行ったり。
愛知県蒲郡市の竹島へ行って、普段山梨では見られない海を見てどきどきしたり。
散歩していたら、早めに咲いている桜も見れました。
少し滞在した名古屋でも、好きな木や自然を感じられて満足でした。
山のなかの環境と愛知の環境もまた全然違うのですが、どちらの自然環境にも良さがあります。
今年はパリへの旅から1年が始まっていたり、3月もこうして名古屋へ行ったりと、例年に比べて移動が多めになっています。
「今年はちょっとした旅の行き来が多くなるのかもしれないな」という予感もある今日この頃です。
こうして県外に出てみると、戻ってきた富士北麓の環境の良さや個性がまた際立って感じられます。
名古屋近郊のマルシェも終わり、富士吉田に戻ると堂々の富士山が出迎えてくれました。
今回は名古屋までの行き帰りには、名古屋ー富士山直行便のバスを使っていたので、富士山駅に到着。他の観光客に混じって、富士山駅の駅ビル『Qsta』の6階展望デッキに行って、富士山にご挨拶をしました。
やっぱり富士山は圧倒的に美しいです。そして、富士吉田は空気が綺麗なことも肌で感じます。名古屋からの帰り道、バスで樹海を通るあたりから、なんとなく自分の感覚も変化してくるような気がするのは、標高の高さや空気の薄さ、空気の綺麗さなどの違いなのでしょうか。
富士吉田に戻ってくると、澄んだ空気と、削ぎ落されたような研ぎ澄まされたような気持ちになるから不思議です。人は、気づかないうちに土地から大きな影響を受けて、土地と共に生きているんだろうなと改めて思いました。
数日しか離れていなかったのだけど、富士吉田に戻るとすごく食べたくなる吉田のうどん。
土地のソウルフードを食べると早く心と体が土地になじめそうなので、そのままQsta地下の吉田のうどん屋さんで天ぷらうどんを頼みました。
たまたまタイムサービスだったようで、天ぷらが3つてんこもりに乗ったうどんが登場して驚きました。名古屋帰りの吉田のうどん、とっても美味しかったです。
富士山駅に着いたら一旦上の階まで行って、富士山を眺めて、地下でうどんを食べれば、富士吉田にすっかり慣れていけるので、訪れてすぐ味わいたい人にはおすすめです。
そうして帰ってきた富士北麓をもっと味わおうと思い、河口湖のほうまで足を伸ばしました。
河口湖の湖面は静かにさざ波がたっているだけで、静かで穏やか。
名古屋は地元だから違和感もないしマルシェも楽しかったけれど、会場には100人以上の人が集まっていてすごい人口密度を感じていたので、この自然の静けさに癒されました。
心の中に空白が持てるこういった時間は、住んでいると当たり前にもなってくるけれど、自然が多い地域だからこその宝のようなものだとも感じました。
人や情報が集まって文化が生まれる活気ある街と、人口密度が少なめで自然ゆたかで静けさのある地域と、「両方に良さがあるなぁ」と実感したひと月でした。「それを感じられる小さな旅もいいな」と思います。
冬の終わりの草木染め
少しだけ遡りますが、2月末日に、これまで草木染め講座を受けてくださっていた経験者の皆さんと、紫根染めのワークショップを開催しました。
場所はいつもの明見湖のはす池体験工房をお借りしての開催です。気持ちの良い天気でした。
この日はちょっと寒かったのですが、個人的には寒い日で良かったと安堵していました。というのも、今回のテーマである紫根という紫草の根っこの色は、寒い時期に染めたいものだったからです。
薬効の高い生薬でもある紫根は熱に弱いので、暑い時期に染めると独特の匂いが残りやすく温度管理が必要なので、できるだけ寒い時期に染めたいと思っていました。
紫雲膏という古くから重用されている軟膏にもなっている紫根は、お肌の修復を助けてくれることから、近年では化粧水などに開発されているのも時々目にします。
紫色というとなんとなく「高貴な色」というイメージを持たれる方も多いかと思います。太古から、たとえばクレオパトラの時代から、紫色というのは色を出せるものがまず少なくて染めることも難しかったことから、位の高い人が身に着ける色とされてきていました。
日本では冠位十二階の最高位の色だったり、現代でも高僧の袈裟の色だったり。赤ちゃんや子供が身に着けるというよりも、熟練された叡智のある人が身に着けるようなイメージがあるかもしれません。
紫色は、クレオパトラが愛したものは貝紫という貝からとれる紫色だったと言われていますが、同じく紫根の色も貴重なもので、日本では万葉集のなかにも紫草の色が出てきたりします。
紫根の色と香りが病魔を祓ってくれると信じられているなど、実際に薬効も高く現在も現役でお薬として重宝されている紫根。植物としては絶滅危惧種でもあります。
自然界でも紫色になってくれるものは多くないので、貴重です。
紫根染めは基本的な草木染めのやり方とは少し違います。今回はアルコールを使って色を抽出して染めていくやり方にしました。皆さんとても丁寧に染めてくださいました。
染め終えるタイミングをそれぞれに決めていただいたら、すこしずつ色味に違いが現われました。どの色も魅力的で綺麗な色になりました。
自然光の下だとまた色の見え方が変わります。こうして見ると、葡萄色のような色になってくれていますね。
「植物がもたらしてくれる色は、どの色も人に合う色になってくれるなぁ」といつも思います。どの色にも良さがあって、奥深さがあります。
植物の色に触れることが、自然を身近に感じるきっかけになったり、自然の色との一期一会の楽しさになったりしていたらいいなぁと願っています。
私も講座の前に試し染めをしたところ、このような色になりました。紫ひとつの色をとっても、いろんな色味や表情があるから色って面白いなと思います。
そんな、自然からの恵みの紫色を味わえた時間となりました。
<草木染め基礎講座のおしらせ>
4月から「いのちの草木染め 基礎講座(全4回)」を開催することになりました。
ご興味のある方がいらっしゃいましたらぜひご参加ください。
◯いのちの草木染め 基礎講座
【開催日時】
4月・5月・6月・7月の月に1度(日時は相談)
・4回参加できる方向けの講座です。
・初心者大歓迎
【開催場所】
明見湖はす池体験工房
(富士吉田市小明見5丁目4番15号)
【内容】
毎月違う草木を染めていきます。今季はさくらんぼか桃の枝、春~初夏の草かハーブ、実、根を予定(変更の可能性あり)。講座では基本的な草木染めを染液のつくり方から体験していただけます。回を重ねて復習もできるので、講座後には基本的な草木染めがご自分でもできるようになります。
【所要時間】2時間程度
【参加費】各回受講料 3,000円 + 染める布代 1,500円
ご興味のある方は以下いずれかの方法でご連絡ください。ご質問などもお気軽にどうぞ。
●公式LINE
https://lin.ee/vEkK2pc
お名前と「草木染め基礎講座参加希望」と一言メッセージを入れてください。
●InstagramのDMにて
https://www.instagram.com/hitonoi/