藤崎 仁美

2024.06.30

草木とともにあるくらし27

6月のくらし

わたしの6月は、東京でのマルシェイベントの参加ではじまりました。

富士北麓で育った植物たちの色をひとつひとつ染めてつくった小物や、シルクやリネンのストールをマルシェでは販売しました。

さくらんぼの枝や、春の薬草たち・ハルジオン、オレガノ、よもぎの色たちを見ていただいたり、購入していただいたりと、とても嬉しかったです。

目にした色に、「この色がなんだか好きだな」と思うとき、こうした目に見えない薬草の「気」のようなものと自分が惹きあっていることもあるかもしれない。

さくらんぼは花を咲かせようとする開花のエネルギーを携えていて、

ハルジオンは春を象徴する可愛い野花であり、美白効果もある薬草。

オレガノは「山の喜び」という語源をもちヨーロッパでも幸福の象徴とされている薬草で、

よもぎは世界中で魔除けの薬草として愛されている、解毒を得意とする薬草。

マルシェという場所で、そんな植物の色との一期一会を楽しんでもらえたらいいなぁ、と密かに願いつつ、楽しい1日が無事終了しました。

たくさんの方が立ち寄ってくださり、リネンのストールのここちよさを分かってくださる方や、植物のいのちの色を喜んでくださる方、事前にオーダーストールをご注文くださり、当日はそのストールを纏って、イベント内の舞台で舞ってくださった方など、色々な方とお話できて、とても嬉しかったです。

植物の色を気に入ってくださる方は、皆さんとても優しい方ばかりでした。

来てくださった方にはもちろん、そんな方たちと出会わせてくれた植物たちにも感謝です。

そうしてわたしの6月は始まりました。

6月になると、富士山の雪もこんなに少なくなってきました。

もう前髪にも見えないくらい、雪がのこりわずかです。

そのうちにすぐ、真夏の富士山の姿になるのでしょう。

着実に時は過ぎていくのを、富士山の表情がいつも教えてくれているようです。

だんだんと夏至に近づくにつれ、庭や畑のハーブたちは、もりもりと育っています。

越冬していたハーブたちは、昨年よりもさらに凄い勢いで育っています。

これは越冬して今年も育ってくれたエキナセア。

ネイティブアメリカンにとって最も大切にされている薬草で、伝染病や、毒蛇の毒に対抗できるほど、毒を消し免疫力を上げて守ってくれるパワフルな植物です。

これはまだつぼみだけれど、つぼみから花が咲くまでの変化する様子は神秘的。

その静かなる力強さは、ぐっと惹き込まれるような頼もしさを感じます。

そんな大切なハーブが、こうして富士吉田の地に根を張り、植えてから2年目も息づいてくれているのは、ただただありがたく、なんだか心強い存在です。

同じく越冬してくれたブラックマロウのつぼみも、星のようで神々しくて、目にするたびにはっとします。らせんを描くように回転しながら、つぎつぎとつぼみが生まれていくさまは、いのちの神秘というほかありません。

畑ではラベンダーも越冬して、大きく育っていました。

さわると、やわらかくていい香りがします。

他にも、はじめて植えてみたレディースマントルや

これまでにも植えたことはあるのだけど、なかなか越冬は難しいので、今年も苗を買って植えたホワイトセージや

こちらも越冬はできないけれど、大好きで毎年植えているローズゼラニウム。緑色で肉厚な葉っぱも花も、香りも大好きなのです。今年も大好きなハーブたちが増えて、嬉しい限りです。

ちょうど花も盛りになってきたので、ラベンダーの花を少し摘んで帰って、ポプリみたいに枕に入れてみたり、ラベンダーやローズマリー、ローズゼラニウムを一緒にハーブウォーターを作ってみたり。

夏のささやかな楽しみです。

ブラックマロウも、お花を草木染めやハーブティーとして使いたいので、お花が咲いたらひとつずつ摘んでいきます。

触れるとすべすべとしていてビロードのような手触り。ブラックマロウの花びらは大人っぽい雰囲気でとっても綺麗です。

ハーブティーにすると、喉のケアをしてくれるお茶にもなります。

ひとまず、摘んでは乾燥していくことにしました。

そして、6月といえば梅仕事の季節。

今年は梅が不作だそうで梅もすごく値上がりしていましたが、シンプルな梅干しは買うとかえって高価になるし、1年の中で今しかつくれないので、今年も仕込みをしました。

痛んでしまっているものはよけて梅干しを仕込み、小さめの梅では梅シロップも仕込み、追熟しているうちに痛んできてしまったものはジャムにしました。

毎年、梅仕事ができないとそわそわしてしまうので、一旦仕込みができてほっとしました。

夏、梅雨が明けた頃に天日干しができるのが楽しみです。

6月の草木染め

緑が深くなり蓮の葉も増えてきた明見湖で、今月も草木染め基礎講座を開催しました。

連続4回の基礎講座の3回目ということで、今回はくちなしの実を染めていただきました。

栗きんとんの色としても使われるくちなしの実は、日本では飛鳥時代から染色に使われていると言われています。

染液をつくりながら、どんな色になるのか?どんな味?実の中はどうなっているのかな?と見てみたりと、くちなしを一緒に感じてみたり、色の鮮やかさを喜んでいただけて嬉しかったです。

基礎講座は4回連続の講座なので、違う植物の部分を染める体験をしていただけるように構成しています。

回を重ねるうちに復習にもなるため、だんだんリラックスして染められるようになると思うし、それぞれの植物の違いや季節、その時々の湖の自然環境の変化と、毎月の自分自身の変化にも気づいたりする機会にもなるのではと思っています。

植物のいのちの色を染める時間が、なにか心に豊かさを与えてくれるものであったらいいなと願っています。

いよいよ来月は基礎講座の最終回、4回目になります。

あっというまで寂しいようですが、来月も楽しみに準備しようと思います。

そんな充実した6月となりました。

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藤崎 仁美

1989年名古屋市生まれ。大学ではフランス語を専攻。大学在学中、〈フジファブリック〉のイベントのために、はじめて富士吉田へ訪れる。卒業後は愛知県のエンジニアリング会社で総務を経て、社内異動によりNX(3DCAD)の講師を務める。
そのころ、仕事のかたわらで週末京都の学校に半年間通い、草木染めや手織りを体験。染織や自然と親しむ暮らしがしたいと思うようになる。そして、2015年、〈宮下織物株式会社〉へ入社するために富士吉田市へ移住。未経験から、ジャカード織物の機織り職人として6年間勤務し、2022年春に退職。
現在は、染料植物を育てて草木染めをしたり、植物と親しむ暮らしを楽しんでいる。

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