藤崎 仁美

2024.08.31

草木とともにあるくらし29

8月になりました。富士吉田もすっかり真夏です。

8月初旬、早く起きた朝にすこし散歩をしました。

夏の早朝の富士山は、透き通っていて、青空にそのまますうっと溶けていきそうな透明感がありました。

夢の中みたいな富士山です。

8月中旬になり、もう少し陽が昇ってくる時間になると、だんだんと空の青色も山の色も濃くなり、入道雲がでてきて、富士山のまわりを飾っていきます。育ってきている稲穂の色がまぶしいです。真夏は、すべてのものがエネルギッシュに見えます。

個人的には、富士山の裾野の、ドレスのドレープのような陰影が見られるのが好きです。

山頂のほうの赤土の山肌、麓のふかふかした緑色を見ると、夏の富士山らしさを感じます。

富士山の赤っぽい山肌を見ると、かつて慣れない富士登山の下山中、おそろしくいつまでも続くジグザグの下山道で半泣きになりながら、筋肉痛すぎて何度か尻もちを着いたときに手をついたときの、ざらっとした、乾いた土のつぶつぶの感触を今でも思い出します。

富士山の上の方は、あまり植物が生えていない、違う星みたいな岩々としたところで、そこから見た満月が、ものすごく綺麗だったことも覚えています。

夏の富士山を眺めるとこうしてついつい、いろいろ思い出します。

ジグザグ道をなんとか下ったあと、歩くのが遅すぎて帰りのバスに間に合わないかと思ったら、白い馬がスタンバイしていて(有料)、6合目から5合目まで乗せてもらったこと。

おそらく登山に来て馬に乗っている人が珍しくて(しかも白馬)、「あれ見てー!」と指を指されているのだけど、筋肉痛でボロボロ&山小屋なのでお風呂にも入ってなくて砂まみれなのに、お馬さんごと注目されていて恥ずかしかったこと。

馬も、人を乗せて岩を歩くのに苦戦して足元がツルツル滑っていて、それはそれで怖いというか、振り落とされないようにしがみつくのが申し訳ないやら大変だったことや、馬のおかげで無事名古屋に帰るバスに乗れたことなどが、つながって思い出されました。

運動が苦手な上に練習もしていないのに無理して登るものじゃないなぁと改めて思うけれど、あの場所でしか見られないもの、感情があったとも思います。

今では私にとっては、登頂するよりこれくらいの距離から拝んでいたい、畏れ多い尊いお山です。

地域の方は、台風の時期になると、「お山のおかげでここは台風の被害が少ない」と話されるのを聞きます。自然に「お山のおかげ」という言葉が出てくるって、大事なことだなと気づかされます。

冬になったら、こういう元気いっぱいな美しい景色は見られなくなるから、夏だけの景色を、めいいっぱい眺めました。

さて、8月になると、庭では今年も桔梗が咲きました。

桔梗の花を人生ではじめて認識したのは、染織物の学校の合宿で、高野山に行ったときでした。星のかたちをしたつぼみがふしぎで、写真を撮って、あとからこれが桔梗だと知ったのでした。名古屋ではあまり見なかったと思います。

つぼみがきれいにぱっかりと開いてくれるのがなんだかすごくて、毎年出会えるのを楽しみにしている花です。

カノコユリも咲きました。

小さめの花なのに、おしべとめしべがぐーんと長くて、生命力を感じます。

フレッシュピンクが目に鮮やかで可愛いです。

庭のオレガノも花を咲かせています。

普段はそこまで背丈は高くないのに、花が咲くころになると、茎はずいぶんと背を伸ばします。

背を伸ばしすぎてか、雨が降ると倒れてしまうので、ほかのハーブになだれかかって、庭はちょっと荒れたような見た目になるのですが、それほどまでに一生懸命に、蝶たちに花を見つけてほしいのでしょう。小さな小さなお花が、いろんな虫たちに恵みを与えています。

庭のセージも元気いっぱい。ときどき、やわらかい葉っぱを少しちぎって、パンケーキに混ぜて焼いたり、煮出してうがい薬にしたりしています。

すっとする香りがシャキッとする、ありがたいハーブです。

そして、少し前から咲いているエキナセアは新旧入れ替わりながら、次々と咲き続けています。たくさん咲いてくれているので、数本、家で飾るために切ってきました。

オレガノの花も一緒に花瓶に飾りました。

花は、庭に自生してくれているだけでいいかと思っていたけれど、室内に花がいてくれるのは、すごく心が癒されていいなぁと改めて感じました。

ふとしたときに、生き生きした色が目に入ってくるのです。

そして、なにか、生き物の気配がするというか、花ってやっぱり人を支えてくれる、心の栄養をくれるのだなぁと思いました。

夏は花が早くだめになりやすいからもったいない、なんて思っていたけれど、花を自分たちのために飾って、花を愛でるだけの心の余裕を持っていたいと思いました。

太陽の光が強い今だからこそ、梅雨のあいだ浸けていた梅たちの出番です。太陽が続いた7月末から8月にかけて、天日干ししました。

今年は梅雨が明けてからも夕立が来ることが多かったので、晴れている間に干して、雲行きが怪しくなったら中に入れて、というのを何度か繰り返して、1日だけ夜通し干していました。

なんとか今年も当面の梅干しをつくることができて、一安心です。

ちょっと体調が不安定なとき、この梅にどれほど支えられることか。

今年は梅が不作で、毎年当たり前のようにたくさん梅干しをつくっていたことが、全然当たり前でもないことを思い知りました。(今年の梅は高かった・・)

毎年、きれいで大きな梅を作ってくださっている農家さんに、あらためて感謝だなと思いました。

個人的な小さな事件として、6月末に虫にさされた指は、8月に入っていよいよ治ってきました。ようやく病院からはもう来なくて大丈夫でしょうと言ってもらい、あとは跡が綺麗に治るのを見守っています。

考えてみれば、私の昨年の夏は足首を捻挫したり、おととしはコロナになっていたり・・

1年の前半を走り続けて、夏はそろそろ体が養生したくなる季節なのかもしれません。

指のおかげでいろいろ不便だったり無理がきかなかったりしたけれど、おかげでゆっくりすることができました。

8月の草木染め

8月はいくつか染めのワークショップを行う機会に恵まれました。

一つ目は、西湖の古民家宿 root field さんのお庭にて、和太鼓グループの白檀の皆さんに、クロモジ染めの体験をしていただきました。

お子様から大人の方まで、総勢27名の方が参加してくださり、それぞれ違ってどれも素敵なてぬぐいが染めあがりました。

どんな模様になるかな、とそれぞれイメージしながら絞り、それを富士北麓のクロモジの枝からとれた染液でじっくり染めていきました。

小さなお子さんとお母さんが一緒に染まったてぬぐいを広げて笑っているようすや、お互いのてぬぐいを見て笑いあっている皆さんの楽しそうな姿が何よりうれしい時間でした。

27名のご参加というのは今までで一番多い人数でしたが、白檀さんの先生をはじめ皆さまがサポートしてくださったおかげで、良い時間となりました。

ひとつとして同じでない、皆それぞれに違って可愛いてぬぐいが、並んで風にそよぐさまには、なんだか胸がいっぱいになりました。

和太鼓白檀のみなさま、root fieldのみなさま、手伝ってくださった皆さま、ありがとうございました。

今年の10月19日(土)・20日(日)に、西湖のいやしの里根場にて、根場地区の薬明神社の五穀豊穣を祝う秋のお祭りに合わせて、白檀さん主催の2日間の和太鼓フェスが開かれます。

県内外から、和太鼓のグループの方々が来られて演奏されるそうです。

そのイベントの一環として、秋の例大祭と同じ20日(日)に、クロモジ染めのワークショップの講師をさせていただくこととなりました。

まずはその体験会をということで、和太鼓の皆さんがお祭り当日に身につけられるようなてぬぐいを染めていただいたのでした。

10月の秋の美しい西湖で、秋のお祭りのなか、山々に響き渡る太鼓の音はどんな音でしょうか。

その音を聞きながら、五穀豊穣・自然の恵みを感じてクロモジの色を染めるひととき。

きっと素敵な日になると思っています。

またイベントが近くなりましたら、こちらにまた掲載させてもらえたらと思っています。今から、楽しみです。

さて、8月といえば、私にとってはなにより藍の季節です。

春の種まきが少し遅れていたので、育つのもゆっくりだった藍の葉たち。雨の少ない梅雨で少し心もとなかったけれど、夕立もたくさんあったおかげで、しっかりと育ってくれました。

藍の準備も整ったので、8月から今年の藍の生葉染め単発ワークショップをはじめました。

このワークショップは、はじめての参加の方向けと、経験者向けの二種類を開催しています。

この調子だと、9月の中旬くらいまで染められるかと思っています。

8月の明見湖は、蓮の花のまっさかり。

まっすぐ天に向かって花を開かせていく花たちからは強さを、あっというまに散っていくところには儚さも感じます。

8月の前半にはまず、2日間のワークショップを開催しました。

梅雨が明けても、山だからか夏だからか、天気の変わりやすい日。

晴れていたところから、急な雨が降り、天気雨になり、また晴れていきました。そのようすがとても美しかったです。

藍の生葉染めは、フレッシュな葉っぱでないと染められない色です。

乾燥した葉っぱで同じように染めても、美しい色にはなかなかなりません。

染液をつくったら、すぐに染めます。その瞬間にしか出会えない色があるのです。

藍の生葉染めをしていると、色が生まれてくる瞬間に立ち会っているようなよろこびがあって、特別だなぁと思います。その体験を、こうしていろんな方と分かち合えることが嬉しいです。

今回は、お近くの方、静岡や神奈川からも参加にお越しいただきました。ありがとうございます。

その日に畑で収穫してきた藍の葉っぱを、茎からひとつひとつとっていって、染液をつくっていきます。

最初は緑色だった藍の液が、だんだんと変化していきます。そのうち、白だと思っていた布が、あれ?と色づいてくるのに気が付いていく。その色は生きているようで、同じ色にはとどまらず、少しずつ変化しながら染まっていきます。植物の色は生きている、と思う瞬間です。

自然界で太陽の光がさすたびに色の見え方が変化するように、染めている間の藍の色も、定まることなく変わっていきます。

そして、藍の色が染まってきた布が酸素に触れていくと、色が定まっていきます。

いつでもどこへでも移ろいゆくような色が、布に染み込み、そのなかにとどまっていく。

そうして染め終わって、水洗いすると色が澄むような感じがある。

そして布が乾いて1日くらい経つと、生きていた色は動きをやめ、おとなしく布のなかに落ち着いている。動きが止まったな、と感じます。

藍の生葉染めは、その一部始終が分かりやすく見られる感じがして、好きです。

色が生まれていく、その瞬間。

自然界の青い色を染めてみたい、という方は、9月中旬くらいまでは随時、単発ワークショップを開催中なので、インスタグラムか公式LINEまでお問い合わせください。藍の色を楽しんでいただけたら嬉しいです。

あと1か月ほど、今しかない今年の藍を、大切に染めていきたいと思います。

8月後半、9月前半にもワークショップ開催予定なので、皆さんと藍の時間を過ごせることが楽しみです。

草木染め講座のおしらせ

9月から、【いのちの草木染め・基礎講座】の二期目の参加者を募集中です。

月に1度、4回にわたって、明見湖のほとりで、草木の色を染めていきます。

毎回違った部分を染めながら、自然の摂理やつながりに想いを馳せるひととき。

植物の色との暮らしをはじめてみませんか?初心者大歓迎です。

・日時はご希望に合わせて決めていきます。

・1~3月は、対面の基礎講座はお休みとなり、次期開催は来年の4月からとなります。

・遠方からお越しの方には、(女性の方のみ)駅からの送迎も可能です。

 お気軽にお問い合わせください。

お問い合わせ・ご参加のご連絡は、公式LINE あるいはInstagramのDMから参加希望・お問い合わせください。

公式LINE 

https://lin.ee/HVPiMSg

Instagram

https://www.instagram.com/hitonoi?igsh=MTBkYXc2dDBtODFqNA==

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藤崎 仁美

1989年名古屋市生まれ。大学ではフランス語を専攻。大学在学中、〈フジファブリック〉のイベントのために、はじめて富士吉田へ訪れる。卒業後は愛知県のエンジニアリング会社で総務を経て、社内異動によりNX(3DCAD)の講師を務める。
そのころ、仕事のかたわらで週末京都の学校に半年間通い、草木染めや手織りを体験。染織や自然と親しむ暮らしがしたいと思うようになる。そして、2015年、〈宮下織物株式会社〉へ入社するために富士吉田市へ移住。未経験から、ジャカード織物の機織り職人として6年間勤務し、2022年春に退職。
現在は、染料植物を育てて草木染めをしたり、植物と親しむ暮らしを楽しんでいる。

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