藤崎 仁美

2024.10.28

草木とともにあるくらし31

10月のくらし

10月に入り、少し前まで暑い日が続いていたのに、急に朝晩は寒く冷えることも増えてきました。家では、春先にしまい込んでいたこたつを出してきて暖をとっています。日中との気温差が激しいので、体温調節にからだも戸惑っているように感じることもある日々です。

外を歩くと、稲刈りの終わった風景をよく見られます。

稲刈りが終わってはざかけしてある景色から、一仕事終えた達成感が伝わってくるように感じたり、刈り終わってさっぱりした田んぼを見ると、秋らしいなぁと感じたりします。

秋らしいと言えば、最近では、肉眼だと富士山が赤茶色っぽい色に見えることがあります。裾野の木々が、紅葉しているのでしょうか。これも秋ならではの景色です。

ほかにも、秋らしさと言えば、神社にお参りした時に、境内で出会った実。

あとから調べてみたら、ツリバナという木だそうです。

秋になると、実がぱっくりと割れて、種が出るとのこと。この赤い実のようなものは、種のようです。こうして開けば、土にも落ちやすいし、鳥も食べやすい。完璧な設計だなぁ、と感心します。ここにもひとつ、秋を見つけました。 

畑では、今年も藍の花が咲き始めています。こうして藍の花が咲くと、いよいよ秋だなぁと毎年しみじみします。この花のつぼみがすべて咲いて、種ができる頃にはもう冬のはじまりです。冬になって、雪でも降ると、しばらく畑は雪のなかに静まるのですが、今はまだ、色々な植物が元気に息づいています。

藍の花は、ひとつひとつはとても小さいのですが、ほんのりとピンク色が差していて可愛いです。小さなミツバチやほかの虫が夢中で蜜を集めにきているのを、しばらく眺めました。

10月の草木染め

さて、10月は、草木染めのワークショップがいくつかありました。

まずは、4回連続で開催中の基礎講座。今月はそのうちの2回目クラスを開催しました。

今回は秋の旬の花、セイタカアワダチソウを染めることにしました。

こうしてふわふわの花を咲かせるセイタカアワダチソウ。その年の気温や環境によって、いつ咲いてくるのかは正確には読めないので、旬の草木染めをする際には、どのタイミングで育ってくるかなとドキドキしながら開催日との兼ね合いを考えています。

今月は、ちょうど基礎講座の日程とタイミングがあったので、その日に収穫した新鮮な花を染めることができました。

セイタカアワダチソウは、外来種で一時期爆発的に増えてしまったことや、ブタクサと間違えられやすいことから、厄介な花粉症の原因の雑草、というイメージをもたれていることも多いですが、アメリカのネイティブアメリカンの人たちにとっては大切な民間薬とされているそうです。アトピーの症状に、セイタカアワダチソウを入浴剤にすると効果があると言われています。そして、草木染めをすると、明るくて綺麗な色に染まってくれます。

今回の講座では、シルクだけでなく、リネンとコットンも下処理をして、3種類の布を染めて比べていただくことをしました。

また、媒染違いの体験もしていただいたりしました。結果、同じ黄色でも、色味の質に少し変化がありました。色の奥深さも感じていただけたかなと思います。

写真のものは、リネンのランチョンマット。それぞれに、今年のセイタカアワダチソウの色を染めてくださいました。

きっと、これから外でセイタカアワダチソウを目にしたら、これまでのような雑草には見えなくなるのではないかなと思います。私にとっては、秋の景色を彩り、美しい色をもつ素敵な植物です。

基礎講座では次回の3回目クラスでは、「実」を染めていただく予定です。回を重ねながら、草木染めを身近に、そして植物や色への親しみが増していたらいいなと思っています。

そして、10月は外部へ出向いての参加イベントが2つありました。

まず一つ目は、10月19日、甲斐市のクルミハーバルワークスさんの「ミドリのお茶会」にて、ブラックマロウの花染めのレッスンを担当させていただきました。

クルミハーバルワークスさんは、植物療法のクラスや石けん教室をはじめとした学びの場。

今回はミドリのお茶会コラボレッスンというかたちで、ハーブ染めは私、そしてコースターの作成と後半の染めた糸でつくるモビールづくりは甲府の作家さんのa.n.n_coさん、そして会場ともに、りんごの豆乳チャイなどハーブドリンクなどを提供してくださるクルミハーバルワークスさんとのお茶会イベントでした。

私が昨年に苗を植えてから、静かに育っていたブラックマロウ。越冬して、今年はみんなで染めるといいよと言わんばかりに、2年目にしてはじめてたくさんの花を咲かせてくれたのでした。

ハーブティーにすると、味のくせはほとんどなく、少し粘液質で、ほんのり甘い香りがする花たち。ブルーマロウに比べると販売されている数が圧倒的に少ないような気がします。ましてや、育てている人も、草木染めに使っている人も、あまり多くないように感じます。

今年の初夏にたくさん咲いたブラックマロウを乾燥させていたものを煮出して、当日はリネンのコースターと、ご用意したてぬぐいを皆さんと染めていきました。

絞って柄をつくってもいいし、そのまま1色に染めてもいい。何の正解もないので、自由に染めてくださって良かったです。どのてぬぐいも愛おしく、風に揺れていました。

こちらは、リネンのコースター。染める時間の差だけでも、色味に違いが出ます。染めた直後は青銅器のような色になりました。同じ植物で染めても、リネンとコットンで色味が違うのも、草木染めの面白いところです。

はじまりから終わりまで、笑顔があふれる優しい時間となりました。

ハーブのまわりに集い、植物の恩恵と人との出会い、色との出会い、糸との出会いに楽しむ1日でした。クルミハーバルワークスさん、共にコラボレッスンをさせていただいたa.n.n_coさん、参加してくださった皆さんに感謝です。

そして2つ目のイベントは、10月20日。

西湖の根場のいやしの里近辺が会場となった和太鼓の祭典「コノボーノ」さんでのクロモジ染めのワークショップの講師をさせていただきました。

河口湖で育ったクロモジの枝をコトコトと煮出して、クロモジの色を喜んでもらえるよう願いながら、当日すぐに染めていただけるように準備をしていきました。

枝をじっくり煮出していると、さわやかで甘いいい香りがたちのぼります。リナロールという癒しの成分があるので、ストレス解消や安眠効果があるのだそうです。準備中は、家の中もクロモジの香りでいっぱいでした。

そしてお祭り当日を迎えました。雨も降りそうで降らずに済み、午前と午後にクロモジ染めをしていただくことができました。総勢17名の方が参加してくださり、てぬぐいやハンカチ、シルクストールをそれぞれ思うままに柄をつくり、染めていただきました。

染めている間も、癒しのよい香りが漂います。当日はクロモジのお茶を作られている方がポットをご準備してくださったので、あたたかいクロモジ茶を飲みながら、染めていきました。

肌寒い日だったので、染めている間の湯気もあたたかく感じます。しばらく動かしながら染めていき、それぞれの作品が完成しました。

染まったクロモジの色を喜ぶ声があがったり、思いもかけない柄が染めあがって驚いたり。狙いどおりに染まって満足そうな笑顔もあったり。皆さんの作品も、笑顔もとても素敵でした。

すぐ近くの特設ステージでは、各地の和太鼓のグループの方たちの熱気あふれるパフォーマンスがあったり、地域の神社の秋の大祭ということで、和太鼓とお神輿が練り歩いたり、イベント最後には主宰の和太鼓白檀さんの迫真の演奏がありました。

西湖の山に囲まれながら、のびやかに響き渡る太鼓の音は深くて心地よく、また皆さんのパフォーマンス中の凛々しさ、全身が踊るような躍動感は見ていて感動しました。太鼓って、なにか深いところで響くものがあって、いいなぁと思いました。

白檀さんをはじめとして、たくさんのご縁のつながりを大切にされているお祭りに、こうして参加させていただけて、ありがたかったなぁ、と心が温まるような気持ちになりました。

あらためて、クロモジ染めに参加してくださった皆さん、運営の皆さん、ワークショップの場所として使わせていただいたルートフィールドさんに感謝したいと思います。

セイタカアワダチソウに、ブラックマロウに、クロモジ。

今月は、秋の収穫祭かのように、植物たちの恵みの色をいろんな方と染めることができて、幸せでした。

こうしてたくさんの実りの喜びがあるからこそ、もうすぐ来る冬も、春が来るまで耐え忍べるような気がします。

今年も、あと少しで終わっていく。短い秋の恵みを、よろこんであじわっていこうと思いました。

11月のワークショップのおしらせ

11月、秋の野花の色を染めてみませんか?

秋らしい色が染められる、コセンダングサを染める単発ワークショップです。

(※植物の育っている環境によって、植物が枯れるなどなにかあった場合には、植物が変わる可能性があります。)

はじめての方も、染めたことがある方も大歓迎です。

【現在、開催決定しているお日にち】

日にち:11月23日(祝日土曜)

場所:河口湖の「僕の珈琲」さんのシェアスペース「縁舎」にて 

時間:14:00~16:00

染める植物:コセンダングサの予定(生育状況により変わる場合があります)

参加費:3,000円+染める布代 

    親子価格(お二人の場合)4,000円+染める布代 

    *染めるものはお選びいただけます(詳細はお問い合わせ時にお伝えします)

そのほかのお日にち(平日・土日)でも、ご都合の合う日を調整して開催可能です。

お気軽にお問い合わせください。

日にち:都合の合うお日にち

時間:9:30~11:30 / 13:00~15:00 どちらか

場所:明見湖はす池体験工房 多目的室2

参加費:3,000円+染める布代 

    親子価格(お二人)4,000円+染める布代

お問い合わせ・ご参加のご連絡は、公式LINE、あるいはInstagramのDMからお問い合わせくださいませ。

公式LINE 

https://lin.ee/HVPiMSg

Instagram

https://www.instagram.com/hitonoi?igsh=MTBkYXc2dDBtODFqNA==
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藤崎 仁美

〈いのちの草木染め〉主宰

出身地
愛知県名古屋市

プロフィール
大学在学中、〈フジファブリック〉のイベントのために、はじめて富士吉田へ訪れる。卒業後は愛知県のエンジニアリング会社で総務・NX(3DCAD)の講師を務める。そのころ、仕事のかたわら週末に京都の学校に半年間通い、草木染めや手織りを体験。染織や自然と親しむ暮らしがしたいと思うようになる。
2015年、〈宮下織物株式会社〉へ入社するために富士吉田市へ移住。未経験から、ジャカード織物の機織り職人として6年間勤務し、2022年春に退職。
富士吉田に移住してからは、ハーブを育てたり草木染めをする暮らしを楽しむ。
2023年から〈いのちの草木染め〉として、草木染めワークショップや基礎講座を開催するほか、作品制作、出張ワークショップなども行っている。

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