藤崎 仁美

2024.09.30

草木とともにあるくらし30

少し遡りますが、8月末にはつるラボさんでの「都留の色を染める」という親子向け草木染めワークショップの講師をさせていただきました。

都留のまちの中で、つるラボさんが集めてきてくれたヤマモモの実たちと、nicotさんのみなさんやつるラボさんに来られる皆さんが頑張って集めてくださった玉ねぎの皮を煮出して、染液をつくって当日ご用意しました。

大人と子どものみなさんそれぞれに都留の色を染めていただく時間。最初に、小さなハギレで試し染めをしてもらってから、大きめのハンカチで本番の染めをしていただく流れにしました。

正解も間違いもない、自由な草木染めの柄づくりでは、どんな柄を作ろうか考えて、布を絞ってみたり、たたんではさんでみたり。そうして準備した布を、やまももか玉ねぎの染液を選んで染めていただきました。

いよいよ染め上がった布を広げていくと、皆さんそれぞれ違った柄に染まっていて、素敵でした。やまももは静かなグレー、玉ねぎは元気な黄色〜オレンジ色になりました。

誇らしげに布を広げるこどもたち、なるほどこう染まるのかーという大人の方たち、みなさんの楽しそうな姿がとても嬉しかったです。

生活している中に身近にある自然の恵みから色がもらえること、そこに手仕事の楽しさや想像をこえたものがあらわれる楽しさなど、味わっていただけていたら嬉しく思います。

夏休みの最後に参加してくださった皆さん、そして施設を使わせてくださったnicotのコワーキングスペースのteracoさん、そしてつるラボのみなさん、玉ねぎの皮を集めるのに協力してくださったみなさんに感謝です。

nicotさんはとても新しく綺麗な施設で、カフェのランチも美味しくて、わたしもコワーキングスペースを利用させていただきたいなぁと思う場所でした。

そしてもう一つ、8月末のイベントとしては、よしだの火祭りへ行きました。

北口本宮冨士浅間神社と諏訪神社のお祭りである火祭りは、富士山の鎮火祭であり、山じまいのお祭りでもあるそうです。鎮火のために、ここまで火を燃やすというのも凄いなぁ、と思って少し調べてみたら、火祭りの発祥にはいろいろと流れがあるそうで、奥深いなぁと思いました。

お神輿の道中、赤い富士山のかたちをした方のお神輿を地面にドスンドスンと落とす場面がありました。少し調べてみたら、こちらのお神輿の富士山にかわりに噴火をさせているのだそうです。

日が暮れ、すべての松明に火が点けられると、そばを通るときに服に燃え移るのではないかと思うほど、勢いよく燃えていきます。夜をかけて、松明は燃えつくされていきます。

普段、こんなにも炎を見ないのですが、火祭りでは、火のそばを通るだけでどれほど熱いのか、どんな風に燃えるのかを知ります。怖いけれども美しい、火の浄化というものがあるのだろうなと肌で感じます。

そして、火祭りが終わるころには、もう夏が終わるんだなぁ、ということをいつも強く感じます。きっと、富士吉田にお住まいの方は皆さんそう感じられているのではないでしょうか。

そして9月にすぎになると、夜の富士山にもう山小屋の光が灯らなくなるのを見て、夏が終わったことをあらためて感じるのでした。

そうして迎えた9月。

まだまだ日中は暑い日が続くものの、吹いてくる風、空の雲、聞こえてくる虫の音から、着実に秋になっているのを感じます。

稲穂もたわわに実っていてゆたかです。早いところでは稲刈りしている人も見かけるようになってきました。

いつもワークショップでお借りしている明見湖のはす池体験工房のまわりでは、コスモスが咲いてきました。風にゆれるようすが可憐で好きです。

畑では、真夏真っ盛りの時期を過ぎたおかげで少し育ちやすくなってきたのか、植えただけになっていた茄子が育ってくれていたり。

草に埋もれながらも枯れずに育ってくれていたバジルがめきめきと育っていたりして、少し葉っぱを摘んで料理に使ったり。

フェンネルはどんどん葉っぱが増えて、美味しそうな香りがします。

そのままハーブティーにしても美味しいし、魚料理に使ってみたりしました。

いつだか一度植えてから、毎年自分で育っているキクイモ。花がたくさん咲いています。

何輪か摘んで、家にも飾ってみました。花びらが強くて、茎のうぶ毛が強いところが少しエキナセアにも似ています。

草木染めに使いたくて毎年植えている、マリーゴールド・タンジェリン・ジェムの花たち。見つけたらひとつひとつ摘んでためています。花のひとつひとつはとても小さいのですが、オレンジのようなさわやかな香りがとても良く、草木染めでもとってもいい色になってくれます。

こちらも草木染めに使おうと育てているマリーゴールド。畑に行くたび、花が少しずつ咲いてくれているので、見つけては摘んで乾燥させています。

夏の途中まで元気だったハーブのなかには、少しずつ乾燥ぎみになったり茶色になってくるものも出てきました。季節が移り変わっていっているのが寂しいような、でもだからこそ、そのときそのときに出会えるものが愛おしいのでもあるのだと思います。

9月の草木染め

8月に引き続いて藍が元気だったので、9月も藍の生葉染めのワークショップを行いました。とくに、経験者の方向けのワークショップを多く行うことができました。

これまで基礎講座を受けてくださった経験者の方が単発のワークショップに参加されるときには、経験者特典として、染めたいものを持ち込んで大丈夫ということにしているので、藍のワークショップでもそれぞれに色々な布を染めてくださいました。

こちらでご用意したシルクのスカーフを染めていただいたり、ご自身のサマーウールを染めていただいたり。

リネンのシャツをお持ち込みされた方は、シルクの染まる色との違いを楽しんでいただいたり。

リネンのほうが、少し緑がかった青磁色になって、これもまた綺麗です。

また別の回では、ウールのストール生地や、リネンのエプロン、シルクスト―ルなどを染めていただきました。

そして、今年は、藍を染めてくださった参加者の皆さんに、希望される方には藍の茎をおみやげにお渡ししました。

ワークショップでは葉っぱのみを使うので茎が残るのですが、この茎を花瓶やペットボトルなどお水を入れたところに指しておくと、3日もすると、勢いよく根っこが生えてきます。そのまま水耕栽培で育ててもいいし、地植えやプランターに植えるとまた葉っぱを付けて成長してくれるのです。うまく育っていったら、花を咲かせ、種をつけてくれる。その種を落ちる前に収穫できれば、翌年の春にまた種まきができます。

藍という薬草の成長を観察する日々が、いろんな場所で増えていくこと、植物と人がより仲良くなっていくきっかけとなっていたら、嬉しいなと思っています。

こうして9月は、藍にふれて色を染める体験をたくさんの方と分かち合うことができました。

数年前には、いつも一人で染めていた藍の色。

だんだん、染めた色を他の方にお渡しすることが増え、今年はたくさんの方と、共に葉っぱを染める体験をしていただけたことがとても嬉しいです。

体験希望の方の藍染めが一通り終わった後は、まだ藍も元気なので、私自身の藍の染めを行いました。

シルクのストールを、たっぷりと葉っぱを使って、しずかに染めていきました。

今しか染められない、大切な色です。

こうして染めたストールも携えて、9月中旬には、山中湖情報創造館のクラフトマーケットに出店者として参加しました。

普段から山中湖の図書館を利用させていただいているのですが、とても気持ちの良いところです。

晴れている日には、図書館のまわりの自然遊歩道の道を散歩するのも良いし、図書館のなかでコーヒーが売っていて飲みながら席で本が読めたり、席から湖が見えることもあったりと、居心地が良い場所です。マーケットは、図書館と併設している研修室のお部屋を会場として開催されました。

私は、住んでいる富士北麓でこういったマルシェに出るのははじめてでした。2日間、県内外の方がそれぞれに作品を出品されていて、参加者の方々と色々とお話できたことは楽しくありがたい時間でした。

草木の色のストールや小物たちを選んで迎えてくださったり、植物でこんな色になるのねと驚いて見て行ってくださったり、とても嬉しかったです。草木染め講座にご興味のある方には講座の内容を直接お伝えできたりと、穏やかで優しい時間でした。

来てくださった方、購入してくださった方、出店者のみなさんと主催の皆さま、ありがとうございました。

草木染め講座

9月からは基礎講座の二期目もスタートしました。

4月から始めた、月に1度、4回連続の草木染めの基礎講座。

一期目の4月から7月まで開催を終え、夏の藍の単発ワークショップが終わり、9月からはまた基礎講座の二期目をはじめています。

平日希望の方、土日希望のかたとそれぞれいらっしゃるので、ご都合の合う日をお聞きして施設との兼ね合いで開催日を決めています。(まだ受付可能です)

今月は、シルクの小風呂敷の布を、さくらんぼの枝で染める体験をしていただきました。

花を咲かせようとたくさんつぼみをつけたさくらんぼの枝は、じっくり煮出していくと、甘い香りのする赤みのある染液となります。

初回は、シルクを染めるのがどういうものかを体験していただき、段階を経ながら、シルク以外を染めるときのやり方や、枝だけでなく花や実、根っこを順々に染めていただくようにと流れを設計しています。

今回は、さくらんぼの枝。木の枝を見ていると、空に向かって手を伸ばすのびやかさと、ほかの生き物をも受け入れて支えているたくましさを感じます。

山など歩くと、小さな小さな木の赤ちゃんの芽吹いているのを見ることがありますが、とても小さくてやわらかい芽です。それが成長していくうちに、強くたくましく育っていって、鳥が休んでとまったり、虫が住んでいたり。色々な生き物を生かしている。

成長をやめず芽吹かせ花を咲かせる姿、そして自然とほかの生き物の支えにもなっている姿は、きっと人も同じなのではないかなと思っています。

そんなことも少し感じながら、枝の色を染めていくひととき。

アウトドアだけじゃない、植物とのかかわり方のひとつとして草木染めを暮らしに取り入れるゆたかさをお伝えできたらと思っています。

人間も自然の一部で、同じ地球の摂理のなかで、ひとつながりに生きていることを感じてみたり、植物から与えられたばかりの生命力のある色の美しさと出会うひととき。

植物の色はとても綺麗で、何色と呼んだらいいかわからない、色の自由さや魅力があります。植物を染める体験を通して、なにか心安らぐ時間となっていたらいいなと思って開催しています。

 

講座やワークショップでは、布を染めたあとには、自然光のもとに色を見に行きます。遠くに広がって見える明見湖に風がわたって、気持ちよい瞬間です。

一番最後の引き上げる完成のタイミングは皆さんにおまかせしています。それぞれに素敵な色に染まりました。

9月のはす池の蓮は、花は見えなくなり、葉っぱと、実と種だけになりました。

季節が移り変わったことをはっきりと教えてくれているようです。

もうすぐしたらきっとあっという間に今年が終わっていく。あの長い冬が少しずつこちらに近づいてきている。まだまだ暑い日中だけど、夜には冷える日も出てきて、遠くの方に秋冬の気配を感じるようになってきました。

富士北麓では、冬になるとハーブや植物たちは静まり返って、しばらくの間、世界がまったく変わってしまう。ハーブや植物たちが好きな私にはちょっと心寂しい期間なので、それまでに、植物たちとのくらし、やりたいことをしておこう。そうあらためて心に思いました。

イベントのおしらせ

クロモジ染めワークショップのご案内

10月20日、西湖の根場の里での和太鼓のイベント「コノボーノ」さんにて、「クロモジ染めワークショップ」の講師をさせていただきます。

https://sites.google.com/view/conobono2024?usp=sharing

河口湖で育ったクロモジの枝の色を染めていただく体験です。

和太鼓の演奏があり、美味しそうな食べ物の出店もあり、なにより美しい秋の西湖の山々、すぐそばに西湖があり、気持ちの良い日となること間違いなしだと思っています。

ワークショップは、道具もこちらでご用意しますし、お子様から大人の方までご参加可能となっています。和太鼓の演奏のない時間帯での開催なので、ご家族やお知り合いの演奏を見に来られる方も、その合間にいかがでしょうか?

本ワークショップは事前予約の先着順となっております。

以下の予約フォームよりご予約ください。

↓↓↓↓↓↓↓↓

『クロモジ染め ワークショップ』予約フォーム 

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藤崎 仁美

1989年名古屋市生まれ。大学ではフランス語を専攻。大学在学中、〈フジファブリック〉のイベントのために、はじめて富士吉田へ訪れる。卒業後は愛知県のエンジニアリング会社で総務を経て、社内異動によりNX(3DCAD)の講師を務める。
そのころ、仕事のかたわらで週末京都の学校に半年間通い、草木染めや手織りを体験。染織や自然と親しむ暮らしがしたいと思うようになる。そして、2015年、〈宮下織物株式会社〉へ入社するために富士吉田市へ移住。未経験から、ジャカード織物の機織り職人として6年間勤務し、2022年春に退職。
現在は、染料植物を育てて草木染めをしたり、植物と親しむ暮らしを楽しんでいる。

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