藤崎 仁美

2025.11.30

草木とともにあるくらし 44

11月のくらし

11月になりました。
富士山の山頂には雪も見られるようになり、冬の姿になりました。

富士山の裾野が紅葉しているのか、すこし茶色になっているように見えます。
これからますます富士山の雪が増えていくのを見ながら過ごすのが、秋から冬へ移り変わる時期の楽しみです。

11月は、山や道の木々もそれぞれ葉っぱが色づいて、紅葉がとても綺麗でした。

富士五湖周辺に住む何人かの方から、この何十年かのなかでも今年は紅葉が一番綺麗だという話を耳にしました。
そのようなときに、こうして景色を堪能できるのは幸せなことだなぁとしみじみします。

真冬になると富士五湖周辺の自然の景色はモノトーンになるので、
今のうちに、赤、黄、だいだい、茶色、緑色の自然の色彩をめいっぱい、深呼吸とともにこころのなかにたくさん吸い込みました。

本当に、日本の四季は美しいなぁと思います。
このいちょうの葉っぱも、手に取ってみるとすべすべしていて、少しだけ緑色の線が入っていたり、形もそれぞれ違ったフリルのようで、とても綺麗。
秋は、近くで見ても、遠くから見ても美しい季節です。

そんな11月のある日、ちょうど散歩中に桜の木の落ち葉を見つけました。
葉っぱはまだ落ちたばかりで綺麗なものばかり。
せっかくなので何枚かもらって帰り、落ち葉染めをしてみました。

一枚一枚葉っぱを拾っていると、なんだか子供のような無邪気な気持ちになってきます。
葉は、まだしなやかですべすべしていて、赤みがあって少し革のような質感もあります。
この葉っぱたちから染液をつくり、布を染めてみると、素敵な色に染まりました。

写真の左がシルクと、右がリネン。
それぞれの布の個性を残しながら、秋らしい色に染まってくれました。
秋をたのしむ方法がまたひとつ増えて嬉しくなりました。

ほかにも11月には、佐藤農園さんの多大なフォローのもと、参加者の皆で育ててきた日本茜の収穫がありました。

植物の根っこは、どれだけ育っているのかは抜いてみないとわからないのでドキドキします。
数年前、1人で日本茜を試しに育ててみたときには、地上部はよく育ったものの、冬に抜いてみたら根っこはとても小さくて拍子抜けした記憶があります。
根を育てることの難しさをそのとき痛感したものでした。

この日は、地上部は実がついているものもあって、ひとつひとつ摘んでいきました。
発芽率は10%くらいだそうです。黒くて小さな実もとてもかわいい。

佐藤さんが重機で軽く土を動かしてくれたあとに、根に気を付けて繊細に掘っていくと、細いひげ根が長くたくさん広がっていました。

毛細血管のような、細くて長いこの根から、茜の色が染まるのです。
切れやすい根をできる限り丁寧に掘り起こしていきました。

そしてそのあとは、当日開催されていた『氷室どよう市』の会場の一画で、堀りたての日本茜の生根でシルクの布を染める体験を皆で行いました。

屋外で寒い中の作業でしたが、皆さんそれぞれに優しく綺麗な生根の色に染まっていました。
そして残りの根は、佐藤さんにまとめて乾燥していただくことに。何から何までありがたいです。

また根が乾燥してから、どのように何を染めるか、これからじっくり考えようと思います。
こうして秋らしいことをして過ごしているうち、月半ばになると、朝晩の冷え込みがぐっと深くなり、場所によっては、霜がおりはじめました。

葉っぱの葉脈をかたどるように繊細な結晶が白く光っていて、寒々しいけれどとても綺麗です。
冬の寒さは本当にこたえるけれど、この寒冷地で冬にしか見られない、繊細ではっとする美しい景色があるから、冬も嫌いになれません。

これからどんどん、寒くなっていくと思うけれど、いつもそこにあるゆたかさや無数の美しさに気づいていきたいなと思いました。

11月の草木染め
11月は、いのちの草木染めの基礎講座と応用講座の3回目のクラスをそれぞれ複数回にわたって開催しました。 
明見湖では夏にたくさん花を咲かせていた蓮は立ち枯れし、まわりの木々の紅葉も進んでいます。

11月の草木のいのちの色と出会う基礎講座では、秋の実りとして『実』を染めていただきました。
くちなしの実で明るい色を染めるひとときです。

透き通ったくちなしの色が鮮やかに染まっていくのは、見ているこちらの心も染まっていくような、よろこばしい色。
お正月の栗きんとんを彩るのに使われるのも納得するような、邪気をも払うような晴れやかで喜ばしい、太陽の光みたいな色です。

基礎講座では道具は使いませんが、結んでいただくなどは自由にしていただいているので、みなさんそれぞれに自由なくちなしの色に染まっていて素敵でした。

背戸山の紅葉とも相まって、皆さんの作品も輝いていました。

屋外と室内でもちょっと色の見え方は違うかもしれません。

基礎講座のみなさんと、毎回色々なお話もしながら、実の色を染める時間を過ごせて嬉しかったです。

そして、11月のいろかたちをたのしむ応用講座では、板を使った草木染めを体験していただきました。

今回染めたのは、刈安という植物。延喜式にも登場する、日本で古来から染められている大切な植物です。

今回のいろかたちを染める方法は板を使って柄を染めるやり方で、皆さんそれぞれに柄を染めていただきました。

応用講座では、まず一度体験をして完成のイメージをつかんでいただいてから、もう1枚を染めていただくようにしているので、一回の講座で2枚の作品をお持ち帰りいただいています。

一度体験して柄を作ってその結果を見てみると、なるほどと仕組みがわかりやすくなったり、イメージしやすくなったり。
あるいは、自分はどんなものを好むのかがよりわかってきたりします。

今回は、1枚目と2枚目とで、色止め・発色をさせるための媒染に使うものも分け、使う鉱物でも色に違いが少し出ることを感じていただけたかと思います。

1枚目も2枚目も、皆さんどれひとつ同じものはなく、それぞれの柄が魅力的で素敵に染めあがりました。

柄があることで、なにかを包んだり使ったりする時にどのように見えるのか、使う楽しみもまた広がることと思います。

基礎講座と応用講座、どちらも今回は黄色い色みでしたが、刈安の方が少し和風の気配がする色となりました。

応用講座では、いろいろな板から気になるものを選び、それをどのように配置するのかによって、表現が無限に広がる楽しさがあります。
みなさんがそれぞれに、アートのようにオリジナルな素敵な刈安の色柄を染めてくださって、とても嬉しかったです。

ご参加いただいたみなさんの中で、植物のいろかたちをたのしむ新たな扉が開いていたら、私も嬉しいです。
今回も参加してくださったみなさん、ありがとうございました。

11月は、こうしてたくさんの実りの色を染める時間に恵まれたひと月となりました。

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藤崎 仁美

〈いのちの草木染め〉主宰

出身地
愛知県名古屋市

プロフィール
大学在学中、〈フジファブリック〉のイベントのために、はじめて富士吉田へ訪れる。卒業後は愛知県のエンジニアリング会社で総務・NX(3DCAD)の講師を務める。そのころ、仕事のかたわら週末に京都の学校に半年間通い、草木染めや手織りを体験。染織や自然と親しむ暮らしがしたいと思うようになる。
2015年、〈宮下織物株式会社〉へ入社するために富士吉田市へ移住。未経験から、ジャカード織物の機織り職人として6年間勤務し、2022年春に退職。
富士吉田に移住してからは、ハーブを育てたり草木染めをする暮らしを楽しむ。
2023年から〈いのちの草木染め〉として、草木染めワークショップや基礎講座を開催するほか、作品制作、出張ワークショップなども行っている。

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