CULTURE

森口 理緒

2021.05.09

ハタオリ文化人類記10「ミシンを直してもらった日」

祖母からミシンをもらった。
買おうかな、と思っていたら、「古いので良いなら」と譲ってくれた。
そのミシンは、50年も使っているものだった。
時代を感じる赤い装飾が、一周まわって可愛く見えた。
だけど、どうも調子が悪い。

「新しいの買ったほうが良いんじゃない?」
と言われたけれど、一旦修理に出してみることにした。

地元のミシン修理屋さんに持っていくと、

「ずいぶん、古いミシンだな。ジャノメ?」と、遠くからおじいちゃんの声が聞こえる。

「はい、上糸がすぐに切れて縫えないんです。直せますかね? 50年近く経った、古いミシンなんですけど」

「うん、見てみるから」

直るかな、修理代はどれくらいになるだろう。もしかしたら、買ったほうが安いのかも。

そんなことをぐずぐず考えていると、「今すぐ直せるから、そこに座って待っとけ」と言ってくれた。

私がソーイング初心者だと伝えると、ミシンを修理しながら糸や針の選び方、メンテナンスの仕方、どこが悪いのか、など色々と教えてくれる。

「50年前のミシンだから、もう使えないと思っていました」

「そんなことない。これは良いミシンだよ。直線が綺麗に縫える。ほぼ職業用ミシンにちかいから、安心して使えるよ」

店主のおじいちゃんが最後に、「うちに持ってきてよかったね〜。他のミシン屋じゃやってくれないかもしれない。最近は機械のことがわかる人、いないからね」と言っていたのが、印象的だった。

アナログでシンプルな作りの機械をいじれる人が、少なくなっているというのは、よく機屋さんからも聞く言葉だったから。

昔の機械の良さとそれを知る人が、だんだんいなくなることの寂しさを感じながら、良いものをなるべく長く使えるように、またこうやって、街の小さな修理屋さんで修理をお願いできたらいいな、と思う。

修理屋のおばちゃんが趣味で作っている刺繍ワッペン

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森口 理緒

富士吉田市繊維産業活性化地域おこし協力隊

大学在学中、山梨ハタオリ産地のWEBサイトを運営するデザイン会社〈トリッキー〉で学生ライターをしていたことがきっかけで、繊維産業に興味を抱く。大学卒業後、富士吉田市繊維産業活性化地域おこし協力隊として活動しながら、工場とデザイナーをつなげる存在になれるよう勉強中。

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