織物職人を毎日ちかくで見ていると、「なぜここに時間がかかるのだろう」とか、「なぜ同じものができないのだろう」など、つくられる過程で起こる様々なトラブルや滞りなどを疑問に思うことがある。まだまだつくり手や糸、機械のことを知らない証拠だと実感している。
丁寧につくることはものづくりをする人にとって当たり前な日常だけれど、ふと使い手である自分の日常を考えてみたら、物をあまり丁寧に使えていないことに気づく。手間隙かけてつくられたものを、同じくらいの気持ちで扱う時間が確保できないほどに人々は日々忙しい。
「むかしの人は良いものが何かわかった」とよく聞かされるけれど、きっとそれは、自分がもっているものをよく観察してメンテナンスする時間があったからだと思った。
ものづくりをする人たちが発信する言語は変わらないのに、受け取る側がそのコードをわからなくなってしまった現代、テキスタイルから発せられるコトバたちをきちんと受け取り、自分が発信できたらなんて素敵だろうと思ったのでした。