織物工場を出入りしていて最近ハッとしたのは、「工場の匂い」
私の出身地である東京都八王子市は、富士吉田地区と同じく歴史が長い織物産地。
最近、取材のために八王子の織物工場に行くことがあったのだけれど、そこで織物工場の匂いについて気づいたことがある。
いつも行っている富士吉田の機屋さんと、八王子で訪れた二軒の工場では、工場に漂う匂いが違うのだ。
富士吉田は比較的長繊維(ポリエステルやキュプラ 、シルク)を使用することが多いけれど、八王子は短繊維(ウール、コットンなど)を頻繁に使う。もしかしたら使用する糸種の違いが関わっているのかも知れない。
匂いの記憶はいつまでたっても残っているらしく、直接感情と連動するという。たしかにふと香った匂いに、「この匂い知ってる」と昔の記憶や思い出を途端に思い出すことがある。
今回行った八王子の工場は2年ほど前から出入りしているから、この日久しぶりに工場に入って匂いを感じた時、懐かしいと思った。
記録には残せないけれど、「確かにここにある、工場が動いている」という事実を鮮明に思い出させてくれる貴重な記憶が匂いだということに気づくことができた。
数回書いているこの連載、やっと「文化人類学」っぽいことをしゃべることができた気がする。