祖母からミシンをもらった。
買おうかな、と思っていたら、「古いので良いなら」と譲ってくれた。
そのミシンは、50年も使っているものだった。
時代を感じる赤い装飾が、一周まわって可愛く見えた。
だけど、どうも調子が悪い。
「新しいの買ったほうが良いんじゃない?」
と言われたけれど、一旦修理に出してみることにした。
地元のミシン修理屋さんに持っていくと、
「ずいぶん、古いミシンだな。ジャノメ?」と、遠くからおじいちゃんの声が聞こえる。
「はい、上糸がすぐに切れて縫えないんです。直せますかね? 50年近く経った、古いミシンなんですけど」
「うん、見てみるから」
直るかな、修理代はどれくらいになるだろう。もしかしたら、買ったほうが安いのかも。
そんなことをぐずぐず考えていると、「今すぐ直せるから、そこに座って待っとけ」と言ってくれた。
私がソーイング初心者だと伝えると、ミシンを修理しながら糸や針の選び方、メンテナンスの仕方、どこが悪いのか、など色々と教えてくれる。
「50年前のミシンだから、もう使えないと思っていました」
「そんなことない。これは良いミシンだよ。直線が綺麗に縫える。ほぼ職業用ミシンにちかいから、安心して使えるよ」
店主のおじいちゃんが最後に、「うちに持ってきてよかったね〜。他のミシン屋じゃやってくれないかもしれない。最近は機械のことがわかる人、いないからね」と言っていたのが、印象的だった。
アナログでシンプルな作りの機械をいじれる人が、少なくなっているというのは、よく機屋さんからも聞く言葉だったから。
昔の機械の良さとそれを知る人が、だんだんいなくなることの寂しさを感じながら、良いものをなるべく長く使えるように、またこうやって、街の小さな修理屋さんで修理をお願いできたらいいな、と思う。