FUJIYOSHIDA DIARY MAGAZINE

コミュニティ

藤枝 大裕

2020.10.10

〈装いの庭〉藤枝大裕の連載 |富士吉田市のアートレビュー 04「ハタフェスのはじまり」

昔から好きだったミュージシャンや映画監督を追っていると、1作目は初期衝動で作品をつくり、2作目でそのイメージを覆す挑戦をし、3作目でやってきたことを組み合わせたオリジナルの世界観を築き上げる。そんな流れがあると思っています。

個人的には胸を張って大成功とは言えなかった初回の「ハタオリマチフェスティバル」は、ハタオリとマチで何かをしようという、まさに初期衝動でつくり上げたものでした

2回目は地域の機屋さんとの関係づくり、コンテンツづくりを一番の目的に据えて臨みました

気持ちだけはさながら、2作目でまったく違った表現を模索するアーティストのように。

結果をいうと、それもすべてがうまくいったわけではありません。
けれど、今でもたまに、この時みたいなことをやらないの?
と言われたりするので、この回はターニングポイントだったように思います。

そんな2回目のハタフェス。個人的な企画の見どころは下記の通りです。

①工場に直接お客さんを誘客する巡回バスツアー
②ふだん日の目を見ない職人さんの仕事を紹介する、出張「産地の学校」in富士吉田
③ハタオリ工場祭のエリア拡大&ハタ印の生地売り
④〈Watanabe Textile〉の写真展・〈宮下織物〉のテキスタイル展
⑤ボランティアスタッフとの活動
⑥〈Water Water Camel〉幻の復活ライブ

①工場に直接お客さんを誘客する巡回バスツアー

第2回目のハタフェス。初回を振り返り、市役所の担当の方から
いただいた一番の改善点は、
機屋さんにもう少し積極的に参加してもらえないか? というものでした。
地域の工場に協力をお願いして…という文脈は
よく聞こえてくる言葉です。
素直な気持ちをいうと、ぼくは、
むやみやたらと工場の人を巻き込むのには反対派です。

それはなぜか?
イベントなどのエクストラな行事に参加をお願いするのは、
言ってしまったら休日出勤させていることになってしまいます。
それに見合った成果を出せる見込みが立つまでは
あまり巻き込みたくないと、今でも思っています。
イベントを持続させるには無理に巻き込むのではなく、
自然と参加したくなるかたちをつくるのが一番です。
見込みが立つようになり、主体的に参加希望が集まるのが理想です。

しかし、そうはいっても、
産業を盛り上げるための「ハタオリマチフェスティバル」。
ある程度の協力はお願いする必要があります。

とくにイベントの1回目、2回目は
このお願いのさじ加減にとても心を配りました。

なるべく工場の方々が労力をかけすぎず、お客さんにも楽しんでもらう。
2つの着地点として、そのときにぼくが考えたのは、
工場を巡るバスツアーを組むことでした

商品を担いで街に出てきてもらうのではなく、
工場をオープンにして決められた時間に見学者と交流したり、
工場を案内してもらうことに。
ちょうど毎月第3土曜日のオープンファクトリーの取り組みも
始まったタイミングでした。

機屋さんごとにワークショップやイベントの企画も実施しました。
その一覧は下記の通り。

・ハタ屋で落語会
http://hatafes.jp/2017/tanabe_rakugo/
・ALDIN×石川ゆみ『ちくちく手縫いのミニバッグ作り』
http://hatafes.jp/2017/aldinxishikawayumi/
・オーガニックコットンのお話会と布ナプキン作り
http://hatafes.jp/2017/gen_maeda_ws/
・ジャズ演奏付き特別交流会
http://hatafes.jp/2017/hadachu_jazz/
・草木染め体験
http://hatafes.jp/2017/fujichigira/
・pole-poleとニードルパンチ体験
http://hatafes.jp/2017/needle-punch/
・武藤のストールを好きな色に染めよう
http://hatafes.jp/2017/muto_stole/
・モザイク傘受注会
http://hatafes.jp/2017/makitashoten/

機屋さんの主体的な参加をもっと、という課題の解決を、
少しは実現することができたのではないかなと思います。
(告知や案内の煩雑さはもっと改善が必要…と反省しつつ。。)

当日はこんなバスツアーも開催しました。

・織物工場を巡るバスツアー開催! 7日(土)コース一覧
http://hatafes.jp/2017/tour_7/
・織物工場を巡るバスツアー開催! 8日(日)コース一覧
http://hatafes.jp/2017/tour_8/

②ふだんは日の目を見ない職人さんの仕事を紹介する
出張「産地の学校」in富士吉田

もうひとつ、日本各地の繊維産業の地でよくいわれる課題ですが、
準備工程といわれる撚糸や整経(経糸をつなぐ技術)
染色などを担う職人の高齢化問題があります。


その課題もきちんと取り組めないかと思っていました。これには産地の学校を主催する宮浦晋也さんに協力をお願いしました。
http://sanchinogacco.com/

産地の学校は日本各地の繊維産業と連携し、
現場の知識や技術をそれを学びたい人たちに教える学校です。
ものづくりの現場に興味のある方々を対象に、
その裏側にスポットを当てる企画として提案しました。

イベントでは、ドビー織機を借りて、
織り機の構造を説明したり整経屋さんや染色屋さんの話を聞いたり。

そんな職人のものづくりの裏側を紹介する企画に合わせて、
〈Watanabe Textile〉の渡邊竜康さん
〈流しの洋裁人〉原田陽子さん
〈宮下織物〉の宮下珠樹さん
〈舟久保織物〉舟久保勝さん
〈イイダ傘店〉飯田純久さん など
機屋とデザイナーの話を聞く場も設け、
聴講者を対象に福引きも実施。

これらはとても好評で、チャンスがあればまたやりたいと常々思っています。

③ハタオリ工場祭のエリア拡大&ハタ印の生地売り

1回目の開催を受け、会場を〈新世界乾杯通り〉から
〈まるさくたなべ〉の2階へ移しました。

「吉田のまちの道具市」をおこなう神社と比べると、
出店数が限られ、どうしても規模が小さく見えてしまうからです。

そしてこのとき、その年に立ち上がった活動
ハタオリマチのハタ印」と連携して、初めての産地の生地売りを行いました。生地売りは誰もやろうとしてこなかったスタイル。
継続はやっぱり難しいのだけど、話に聞くとけっこう売れたみたい。

④〈Watanabe Textile〉の写真展・〈宮下織物〉のテキスタイル展

プロダクトのない機屋さんにどう関わってもらうかも、
1回目の振り返りのひとつでした。

中でも建築家・写真家の顔を持つ〈Watanabe Textile〉渡邊竜康さん
〈宮下織物〉テキスタイルデザイナー宮下珠樹さんの
二人は商品こそないものの素晴らしい感性を持っていたため、
そのまま魅せることを提案させてもらいました。

これが予想以上に好評で、以後、展示は重要なコンテンツとなり、
空きスペースの活用方法として定番化していきます。

〈Watanabe Textile〉は写真・テキスタイルの展示とともに、
〈流しの洋裁人〉原田さんとのコラボレーションを企画・実現。
〈Watanabe Textile〉のオリジナルボーダー生地を
初めて目にした原田さんの表情は忘れられません。

普段は海外の業者向け合同展で発表している〈宮下織物〉が、
地域の一般の人に向けて初めて開催した展示。これもとても良い反応でした。

その裏で準備はとても大変、というか手が回りきらなくて、
丸投げだったり、前日の遅くまで設営だったりと
なかなか大変ながらも思い出深い企画でした。

⑤ボランティアスタッフとの活動

自分たちだけでなく、地域の人たちみんなとイベントをつくりたい。

と、ボランティアスタッフの取り組みにも力を入れました。
街のことを知ってもらったり、みんなでワークショップの実習をしたり
当日は交代で街角に立ってイベントの案内をしてもらいました。
これもとってもよかった。

準備の活動の記録は
「ハタフェスサポーターズ便り」としてまとめられています。

ハタフェスサポーターズ結成!

ハタフェスサポーターズ向けハタオリ講座を開催!

ハタフェスサポーターズ便り vol.2

ハタフェスサポーターズ便りvol.3 「ハタオリマチを歩く」前編

ハタフェスサポーターズ便りvol.3 「ハタオリマチを歩く」後編

ハタフェスサポーターズ便りvol.4 「ハタオリマチのロゼットをつくろう!」

ハタフェスサポーターズ便りvol.5「ハタオリマチBBQ」

ハタフェスサポーターズ便りvol.6「看板作り」

だけど、残念ながら継続はできていません。

理由はいくつかあって、そのときに手伝ってくれた
熱意のある大学生たちがそれぞれの道を進んでいること。
それに代わる新しい世代の人たちにお声がけしたり、
楽しんでもらえるようにする事務局側のマンパワーが足りていないこと、など。
気持ちよく持続的に関わってもらえる関係づくりって意外と大変なんです。

⑥〈Water Water Camel〉幻の復活ライブ

そして、最後。なんといっても最大の目玉でした。
ハタフェスのテーマソング『LOOM』を唄う
田辺玄さん・森ゆにさんの演奏会と合わせて
企画された山梨の誇る人気バンド〈Water Water Camel〉の
一日限定復活ライブ。今考えてもよく実現したと思います。

復活の裏側にはドラマがあって、

それは、まだ何も決まってなかった
年明け1回目の打ち合わせで土屋さんが
「今年の目標はキャメル復活」と
いきなり宣言したことから始まります(笑)。

それから数ヵ月後、キャメルのメンバー須藤さんが
山梨に帰ってくることを偶然聞いたこと。
さらに、そのタイミングで福岡の斎藤キャメルさんが
ソロの全国ツアーを開始したこと、
と復活を望むハタフェス企画の3人(土屋・藤枝・赤松)から
すると非常に盛り上がる展開が起こりました。

それらを土屋さんが汲み取り、
口説き続けること数ヵ月。

まさかの実現!!

そして当日。
言葉やコミュニケーションを
超えた音楽の力に心を打たれた時間でした。
ライブ終盤は、住んでいる場所も年齢も性別も超えた
みんなが肩を組んでの大合唱。

あれはぼくが今まで参加してきた中でも
最高のステージのひとつでした。
そんなステージが小さな街の小さな小学校の体育館で
行われたものだなんてね。

最後に撮った集合写真。

横断幕は決起会的な交流会でボランティアや機屋さん、
地元の高校生とつくったものです。ハタフェスとはなんなのか、
この写真がとても象徴している気がします。

振り返ってみるとたくさんの挑戦とドラマに満ちた
2回目のハタフェスでした。

最後に余談。

当時は今みたいに泊めてもらえる場所もなく、お金もなかったため車中泊を繰り返したりしていて、あまりにも入れ込み過ぎて準備期間中ずっとものもらいを患っていました。

片目が治ったと思ったら今度は逆、治ったら、また反対のほう、となかなか凄惨な状態。しかもその目で夜中、雨の降るなか運転して帰ったりもしていたから、かなり周りの人たちに心配をかけました。

今となっては笑って話せる良い思い出です。

次回はハタオリとマチがひとつになった3回目のレビューに続きます!

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藤枝 大裕

株式会社装いの庭 代表

服飾専門学校を卒業後、撚糸メーカーに入社。企画・営業職を経て、2011年に〈手紙社〉へ参加。さまさまなイベントや店舗の立ち上げと運営に関わる。『布博』企画立案者。2016年4月、より深いところで日本の繊維のものづくりを応援するべく〈装いの庭〉を立ち上げる。2021年法人化。〈FUJIHIMURO〉ではキュレーターとして、展示や企画を立案する。

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