FUJIYOSHIDA DIARY MAGAZINE

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北山詩織

2024.03.20

森でミネストローネ5 「森を凝縮したフォレストビネガーで季節をつなぐ」

今年は暖冬だとはいえ、朝晩はよく冷えますね。

このまちに降る、2週間も3週間も解けないままの雪は、移住して3度目の冬の今でも不思議に思います。

雪の少ない地域出身だからでしょうか、なんだか得した気分です。

さて前回少しだけお披露目したフォレストビネガーについて。

昨年2023年の夏に近くの森に入って食べられる植物をいくつか採取し、爽やかなボタニカルやその時期だけの果実をたっぷりと酢に漬け込みました。

▼フォレストビネガーの材料

酢、ヒマラヤスギ、ダンコウバイ枝葉、黒文字枝葉・実、アブラチャン実、葉山椒、クマザサ、赤松樹皮

計7種のボタニカルの様々な部位を組み合わせ、完成を心待ちにして半年間熟成しました。

仕込んだ時の鮮やかな緑から一変、完成した頃には全ての色素が抜けて成分も十分抽出されていそうな雰囲気が漂うビジュアルに。

今日はこのビネガーでノンアルコールドリンクを作る計画ですが、まずは一杯すくって味見。

第一印象は、フルーティー!

「リンゴ酢に漬け込んだっけ?」と記憶を遡るほど果実味のある香りと、後味には森の針葉樹の爽やかな風味があります。

多少は苦みや渋みなどの雑味があると思いきや、まろやかで口当たりのいいお酢に仕上がりました。

この味わいに大きく貢献しているのはアブラチャンの実ではないかと推測。

夏に実るアブラチャンの緑色の果皮には柑橘の皮に似た素晴らしい香りがあり、そのフルーティーさがフォレストビネガーの美味しさを底上げしてくれているように感じました。

「さてこのビネガーを使ってどんなドリンクを作ろうか」と思い手にしたのはダンコウバイの枝と辛夷(しんい)。

ビネガーに入れたチューリップ型の葉をもつダンコウバイの冬の姿です。

ほんのり赤く丸いものはつぼみで、3月の終わり頃に、森の中でいち早く春を知らせる黄色の花を咲かせます。

最近気が付いたのですが、ダンコウバイの枝の香りは開花前のこの時期が1年の中で最も強く、そして素晴らしいです。

枝を折って鼻に近づけると、ピンクグレープフルーツのような甘さを含んだ柑橘香があり、まるでフレグランスのような完成度でうっとりします。

辛夷は、モクレン科コブシのつぼみです。

ベルベットのような質感のふわふわした鎧に守られて厳しい冬を耐え、やがて大きな白い花を咲かせます。

中に隠れている小さな薄黄色のつぼみは、コブシの濃縮された花の香りと心地の良い苦味、そして生姜に似た清涼感があります。

下処理を終えて早速ドリンク作りを開始。

フォレストビネガーにトニックウォーターを1:3の割合で加えます。

仕上げに辛夷の花びらとダンコウバイの枝を折ってドリンクに浮かべました。

長めの枝はそのままマドラーに。

くるっとひとまわり混ぜたら、辛夷の色にリンクした透き通る1杯の完成です。

気になるお味はというと、食前に飲みたくなるすっきりと甘い味わいでとても好みの味でした。

仕上げにフレッシュの2つの植物の香りを纏わせ、より複雑になったアロマ。

それぞれの植物の主張を探して一口、また一口と飲む手が止まりません。

なんだかこの味知っているんだよな…と思っていると、夫から「グレープフルーツジュースだ」とひとこと。

たしかに、トニックウォーターの甘味と苦味のバランスにフォレストビネガーのフルーティーさと辛夷やダンコウバイのフレッシュな香りが組み合わさったこのドリンク。

味の輪郭がグレープフルーツジュースによく似ているのも納得です。

今回は夏の素材を漬け込み、冬の枝や蕾で仕上げて1杯のドリンクが出来上がりました。

自然界では交わることがない素材を『保存』の力を借りることで季節を超えて楽しむ。

それってとても豊かでまた次の季節を慈しむ心が育まれると思います。

想像以上に美味しくできたので、次はもっと“クセ強”なビネガーを仕込もうと企んでいます。

(おまけ 辛夷のガリ(甘酢漬け))

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北山詩織

〈HERBSTAND〉スタッフ

1998年愛知県生まれ。大学でプログラミングを学んだのち、食べるのが好きなことと農業の可能性に惹かれ国内のハーブ農家を訪ねる。その中で植物がもつ様々な可能性を探究するHERBSTANDとご縁があり、インターンを経て新卒で就職と同時に移住。植物たちのサイクルに合わせて、山に畑に原野に走り回る日々を送っている。富士北麓の豊かな森や湖で過ごすゆったりとした時間が休日の楽しみ。

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