織物「産業」というくらいだから、ひとつひとつの工程を、機械が担うことも多い。
けれど、実は人の手で機械の動きを調節したり糸を扱ったりしている。
糸を複雑に結んだりぎゅっと締めたり、何千本もの糸を整えたりするには、機械よりも手の柔軟な動きや微妙な力加減が速くて正確だ。
もちろん、その微妙な手の感覚が織物の仕上がりに大きく影響することも多々ある。
織物産業を何十年も支えてきたおばあちゃんの手。
富士吉田地域では、おばあちゃんを「おばあ」と言うことがあるみたい。
おばあ、ちょっといいひびき。
視線と手先だけを糸に集中させ、作業スピードと同じくらいの速さで話すおばあに耳を傾けていると、必ずおばあたちが口を揃えてこう言う。
「私もいつまでできるか、わからねえから」
おばあたちはあっけらかんと言うけれど、担い手が減ったらそれまで作られていた生地がなくなってしまう日が来るのかな、なんて想像してしまうと、正直、寂しい。
だからせめて、おばあに会いに行って聞いた話を、
これからのものづくりに通じる貴重な資料として
残していこうと、思うのだ。