10月のくらし
10月に入り、一気に秋らしくなってきました。
毎年のことですが、この時期になると、朝晩と日中の気温差が大きくなります。
曇りの日も多くなり、着々と冬に向かっていることを体感しはじめる季節です。
10月は、自分が主催するイベントもあれば、東京の企画展に出かけたり、地域のお祭りへ出かけたり、お花のワークショップに参加したりと、なんだかちょっと忙しい月で、途中には少し体調を崩したりもしました。
いきなり寒くなったかと思えば、朝に厚着すると今度は日中は暑くなったりと、うまく体温調整ができていなかったのかもしれません。
そんな日はお風呂につかったり、温泉にいってみたり、ハーブティーを飲んでみたり、いろいろとできることで養生してみたりしました。夏モードだった体が、スムーズに秋冬モードへと順応してくれるといいなと思います。
そんなこんなで、動き回る日と休む日、どちらもあったひと月でした。
そんな10月は、待ちに待った植物の収穫をしました。
それは、クサギ。

葉っぱから少し独特な香りがするので『臭木』という名前ですが、そんなにいやな匂いでもありません。それよりも、お花を咲かせてから実が熟していったあとの、実がとても美しいのです。
花のガクは、だんだんと濃いピンク色になっていき、実が熟していくと、落ちやすいようにガクも開いていきます。この段階の実はとても取りやすいです。
今回は、友人の協力のもと、静岡のご実家に自生しているクサギの成長を確認してもらいました。
そしてちょうどいい頃合いを見て、ご家族の皆さんにも手伝っていただきながら、クサギの収穫をしてきました。

背が届かないところは脚立が必要だったりして、クサギの収穫はなかなか大変なんだなと知りました。
使うのは実なので、実を取り外していきます。
集まった量は嵩があるように見えましたが、実だけだと意外と少なく感じます。

乾燥してしまうと実からは色が出ないので、新鮮なうちに使うか、冷凍します。
私にとってクサギは貴重で大切なものなので、満を持して使いたいと思い、自宅へ戻ったらすぐに冷凍しました。
友人のご一家には本当に感謝です。
瑠璃色の宝石のような実には、とても美しい色がつまっています。
いつか染めるときを楽しみに、ここぞという時まで大切にとっておこうと思います。

よく晴れた日、山でただただ一心に、実をひとつずつ外しつづける時間は、まさに収穫の秋そのものでした。
10月の草木染め
9月からはじまっている基礎講座と応用講座も、引き続き2回目を開催しました。
明見湖では、蓮の葉も枯れ始め、蓮の実も茶色くなってきています。

ちょうど、少し乾燥した蓮の実が販売されていました。
日も短くなり、ここからしばらくは静かな湖の時間です。

基礎講座では、秋のお花として、セイタカアワダチソウを染めました。
今年もタイミング良く咲いてくれるかな・・とソワソワしていましたが、講座が始まるころにはちょうど良いタイミングで咲きはじめたので、ほっとしました。

自然のものは、毎年の気候の変化もあり、必ず今年も同じ植生とは限りません。
こうして無事生えてきてくれると、それだけでありがたい気持ちになります。
外来種で、ネイティブアメリカンの人たちにとっては薬草だそう。
乾燥させたお花をお風呂にいれると、アトピーのお肌の方にも良いと聞いたことがあります。

この時期の貴重な蜜源植物なので、虫たちからも大人気のお花です。
そんなセイタカアワダチソウは、煮出すと泡立ち、その名前の由来にも納得。

染まると、明るくてかわいい黄色を見せてくれました。

基礎講座では、前回のシルクを染める体験から進み、今回は綿や麻も染められるように構成しました。
草木染めでは、布の素材や織りの具合によって、微細に染まり方が変わってきます。
染めているうち、ご自身の好みも分かってきたりする。
そんな繊維との出会いも奥が深いので、その面白さも伝わればいいなと思っています。

そして基礎講座の続編である、いろかたちを楽しむ応用講座の2回目では、『輪ゴムだけでできる絞りの柄』をテーマに、五倍子という染料で染めていただきました。
五倍子というのは、ヌルデの木に虫が住むことでつくられた虫こぶ。
平安時代ごろには女性のお歯黒として使われたり、染めや薬用としても使われてきた植物です。
あまりなじみはないかと思いますが、染色をする人の間では大切な染料です。

今回は鉄の力を使って、色を定着させていったこともあり、これまでの草木染めとは違った色味が染まりました。
また、絞りの柄があることで、白と色とのコントラストも映えます。

皆さんそれぞれに、まったく違う作品となり、どれもとても素敵でした。
応用講座では、やり方のバリエーションをお伝えしたあとは自由に作っていただいています。
そうして無心になって創作したものが、ひとつとして誰かと同じものはないことが、いつもとても印象的です。

お手本があってなにかを練習するのは、もちろん技術習得の模倣としては有効だと思うけれど、
その場で感じたものをすぐに手でつくっていくこと、その時間そのものも、とても良いものだなぁと思っています。
どれだけ大人になったとしても、個性は皆さんそれぞれ素敵なもので、作品からもそんな個性のひとかけらが見えるような気がします。

それは、草木染めという植物とのかかわりがベースにあるからこそ、気負うことなく自然と創作に夢中になれるのかもしれません。


皆さんが集中して柄を作られている様子や、完成した作品をうれしく眺める、わたしにとってもそんな実り豊かな秋の暮らしとなりました。










