FUJIYOSHIDA DIARY MAGAZINE

土地・環境

藤崎 仁美

2022.05.21

草木とともにあるくらし 02

5月の富士吉田の景色

富士吉田で5月をむかえると、ひそかに楽しみにしているものがいくつかあります。

ひとつは、この時季になると市街地のとある場所で、高く泳ぐこいのぼりを見上げること。

こいのぼりイベントが開かれているのではなく、おそらく、重機会社の方が、クレーン2台を使ってこいのぼりを設置してくれているのだと思います。

数年前、運転中にたまたま目撃して、市街地のなかに突如こいのぼりとクレーンが現れたので、びっくりしたのを覚えています。

大きなこいのぼりが、空高く風になびいて泳ぐさまは、とても風情があって。

あらためてよく見ると、鯉のうろこが金色だったり青色だったり、色や柄もじつにりっぱで、かっこいいものだなぁと、しみじみします。

地域のこどもたちが、のびのびと育つことをこいのぼりに託して願った、先人たちから続く文化は、いいものだなぁ…と思うようになりました。

もうひとつ、5月になると、そわそわして富士山を眺めるようになります。

その理由は、雪解けが進むと、「農鳥」とよばれる、鳥のマークが現れるからです。

富士吉田では昔から、この「農鳥」が現れるのを見て、田植えの時期をはかっていたと聞きました。

白鳥のようなアヒルのようなマークが、なんだか可愛いらしく、知ってからは、この農鳥のマークが現れると、ついつい富士山を見てしまうようになりました。

雨が続くと、富士山の上のほうでは雪が降り、また農鳥が見えなくなったり。少しずつ変化しながら、夏に向けて季節が移り変わっていきます。

農鳥がちょっとスリムになってきました。

夏になると、富士山の雪はすべて解け、深緑の富士山の姿になるのですが、

5月は雪がまだ残っているからこそ、こうした農鳥模様を見られる、貴重な時期です。

5月の草木染め

5月は、冷涼な富士吉田でも、いよいよたくさんの草が元気よく生えてきます。

私は草木染めをするので、今年の春の草を染めたいなと楽しみにしていました。

まずは、ハルジオン。空地などにたくさん生えている、ちょっとピンクがかった繊細な花びらが可愛いお花。草刈りしないといけないところにたくさん生えていたので、その前に摘んで、草木染めをすることにしました。

ちなみにハルジオンは、じつは薬効成分もある植物です。

乾燥させた花や葉をお茶として飲むと、糖尿病予防効果やむくみ改善に効果があるのだそうです。雑草扱いされがちな身の回りの植物も、みんなちゃんと名前があり、調べてみると薬草とされていたりします。

ハルジオンが花を咲かせたもの。これから咲かせるつぼみをもっているもの。どちらも摘んで、少し短く切ってから、煮出していきます。

生きた色を染めたいので、摘んだあとは新鮮なうちに、作業をします。

雑味を捨ててまた煮たりして、色を染めていきました。

そうして、ハルジオンは、こんな色になってくれました。

春らしい、陽だまりのような黄色です。

そしてもうひとつ、楽しみにしていたのが、よもぎです。

富士吉田のよもぎは、私の実家の名古屋と比べると、生えてくる時期が1か月くらい遅れていました。ほかの植物も、大体1か月くらい時季がずれているように感じます。

5月に入り、やっと摘めるくらい大きくなってきたので、染めることにしました。

ちなみに、よもぎも薬草です。

止血効果があったり、服用すれば、浄血・造血、貧血予防、コレステロール値や腸内環境を整えたり、デトックス効果、体をあたためてくれる効能があるとされています。

昔から、人々の間で、ケガをしたときにもみこんだり、草餅にしたり、なじみ深い薬草だと思います。

そんなよもぎの若い葉っぱを摘んで、煮出しました。

煮出している間、よもぎ蒸しのような、体に良さそうな香りに包まれます。

雑味を捨てて煮出して、染液をつくり、染めていくと、こんな若草色になってくれました。

地域で育った植物を、こうして旬の季節に染められることが嬉しいです。

今しか染められない、今年の「富士吉田の春の色」でした。

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藤崎 仁美

1989年名古屋市生まれ。大学ではフランス語を専攻。大学在学中、〈フジファブリック〉のイベントのために、はじめて富士吉田へ訪れる。卒業後は愛知県のエンジニアリング会社で総務を経て、社内異動によりNX(3DCAD)の講師を務める。
そのころ、仕事のかたわらで週末京都の学校に半年間通い、草木染めや手織りを体験。染織や自然と親しむ暮らしがしたいと思うようになる。そして、2015年、〈宮下織物株式会社〉へ入社するために富士吉田市へ移住。未経験から、ジャカード織物の機織り職人として6年間勤務し、2022年春に退職。
現在は、染料植物を育てて草木染めをしたり、植物と親しむ暮らしを楽しんでいる。

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