FUJIYOSHIDA DIARY MAGAZINE

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藤崎 仁美

2023.11.05

草木とともにあるくらし19

10月の富士吉田

少し前まで半袖で過ごしていたのに、急に冷え込むようになった富士北麓。

10月のはじめ、富士山の頭の上に雪があらわれました。

ぼっちゃんの短く切られた前髪のような、初冠雪。

ここから一気に秋、そして冬がやってくるよ、というお知らせのようでした。

10月中旬にはさらに雪が降って、堂々たる冬の富士山に近づいていきました。

雪はもう解けないのかもしれません。夏の富士山とはしばらくお別れです。このまま冬になっていくのでしょう。

家でも朝晩がとても寒くなり、あわててこたつを出して暖をとりはじめました。灯油ストーブに手を出すのも時間の問題です。

こんな秋の季節には、冬じたくのことを考えるのが楽しいです。

毎年、富士吉田で購入しているヤクの靴下があるのですが、手触りが本当に気持ちよく、軽くて、なにより群を抜いてあたたかいので、愛用しています。

今年もいよいよ使える季節がやってきたので、しまいこんでいた温かい靴下やアンクルウォーマーなどを出してきました。

私は冬には手がすぐ冷たくなってしまうし、寒いのはとっても苦手です。でも寒い季節ほど、あたたかい幸せ感も味わえるので、苦手だけど実はちょっと好きなのかもしれません。

2月の冬本番になると、冬支度を楽しみにしていたウキウキ感も吹き飛んで、生きることに必死になるのですが…秋はまだ、秋冬を楽しむ心の余裕があるようです。

さて、時期が少し遡りますが、先月末、河口湖町の中央公民館での生涯学習講座「草木の色と出会う 草木染め講座」の第3回目の講座が無事開催されました。

1回目のさくらんぼの枝、2回目の藍の葉っぱに続いて、3回目はくちなしの実を染めていただきました。

古くから、禁色と言われるような高貴な色を染めるために使われたり、あるいはたくあんや栗きんとんのように家庭の食卓までを彩ってきた「くちなしの実」。実は漢方の生薬でもあります。

くちなしの実を眺めながらそんなお話を少しした後、くちなしの実を煮出して染液をつくり、今回はシルクコットンのハンカチを染めていただきました。

地紋のある大きめのハンカチは、とてもきれいな黄色に染まってくれました。

今回は、シルクコットンのハンカチにしたため、綿を染める際の下処理も一緒にやってみたところ少し作業が忙しくなってしまったのですが、皆さんがくちなしの色を喜んでくださって、心から嬉しかったです。

かねがね思っているのは、植物を見て触ってから煮出して色を染めていくと、その植物と自分のかかわりが生まれるということ。

くちなしの実の赤い色や触れたときの硬さだったり、煮出しているときの香り、そして染まった色の鮮やかさ。

そういった植物とのかかわりの経験値があることで、次にくちなしを自然のなかで見つけたり、スーパーで出会ったり、たくあんや栗きんとんの色を見たときに「あっ、あの知ってるくちなしだ」と意識が変わるような気がします。

体感をもって植物の色とのかかわりがあるというのは、とてもゆたかなこと。

そして、人は植物を纏ってきた歴史も長いから、植物の色を身にまとったり、体の近くにあることに安心感も感じるのかもしれません。自ら触れ、手をかけ、染めた色ならなおさら安心できるのではと思います。

そうして、親しみを感じる植物が自分の中に増えていったり、命の通うような色の記憶が増えていくことは、とてもすこやかなこと。

草木染め講座も、そんなエッセンスがすこしでもある時間となっていたらうれしいです。

4日位連続講座も、のこりあと1回。大切に迎えたいです。

10月の草木染め

10月になって、いろんなところで花を咲かせ始めていたのは、黄色のふわふわなお花がかわいい、「セイタカアワダチソウ」。

よく、「ブタクサ」と呼んでいる方もいますが、実は違う植物だそうです。

ブタクサは、花粉をとばして命をつなぐ植物なので花粉症に悩まされている方もいると思いますが、セイタカアワダチソウは蜜源植物で、虫に来てもらうことで命をつなぐ植物で、花粉は飛ばしていないのです。

ブタクサと間違われて、時々嫌われてさえいるようですが、秋の景色のなかで風にゆられている黄色のふわふわした姿は本当に美しくて、大好きな光景です。虫たちにとっても、蜜がもらえる大切な存在。

そんな「セイタカアワダチソウ」を、散歩の途中で少し拝借して、草木染めすることにしました。

だんだん寒くなってきて、なにかあたたかみのある素材に触れたくなってきている今日この頃。

マグカップを置くコースターも生地の薄いものしかなかったので、コットンのネル生地でコースターをつくることにしました。

まずは「セイタカアワダチソウ」のお花の部分をお鍋で煮出していきます。

名前にもあるように、少し泡立ってきます。

ちなみにこのセイタカアワダチソウは、日本では繁殖力が強い外来植物として危険視されたりしていますが、西洋ではハーブとして使ったり、アトピーの症状にセイタカアワダチソウでつくる入浴剤が効くという話もあるそうです。

煮出していると、お鍋をしているときの春菊のような香りがします。

そして染液ができたら、コットンのネル生地をゆっくりと染めていきました。

媒染をして色を定着させたあとは一度乾かします。

布が乾いたあとに、裁断して、大小のコースターに縫って完成です。

「セイタカアワダチソウ」は、晴れた秋の日のようなあたたかい色になってくれました。

ネル生地は手触りもきもちよく、ふかふかしているので物をやさしく受け止めてくれます。

小さい方のコースターは、マグカップを置いたり、キャンドルを置いたり。

大きい方のマットには、ティーポットを置いたり、ハーブウォーターメーカーの下に敷くのにぴったりだったので、早速使っています。

この「セイタカアワダチソウ」の色と一緒に、今年の秋を楽しく過ごしていきたいです。

そんな私の10月でした。

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藤崎 仁美

1989年名古屋市生まれ。大学ではフランス語を専攻。大学在学中、〈フジファブリック〉のイベントのために、はじめて富士吉田へ訪れる。卒業後は愛知県のエンジニアリング会社で総務を経て、社内異動によりNX(3DCAD)の講師を務める。
そのころ、仕事のかたわらで週末京都の学校に半年間通い、草木染めや手織りを体験。染織や自然と親しむ暮らしがしたいと思うようになる。そして、2015年、〈宮下織物株式会社〉へ入社するために富士吉田市へ移住。未経験から、ジャカード織物の機織り職人として6年間勤務し、2022年春に退職。
現在は、染料植物を育てて草木染めをしたり、植物と親しむ暮らしを楽しんでいる。

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