FUJIYOSHIDA DIARY MAGAZINE

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藤崎 仁美

2024.04.30

草木とともにあるくらし25

4月の富士吉田

4月になり、富士吉田でもいよいよ、植物たちが息を吹き返し始めました。

次から次へと芽を出し、花を咲かせはじめています。

毎年、冬になるとすっかり静かになってしまうので、春になるたび、「春ってこんなににぎやかで色鮮やかなのだった!」という驚きとともに、春が来たよろこびで心が満たされます。

冬の間には姿も見えなくなるのに、春が来たらちゃんと自分のベストなタイミングで地上に出てきて花を咲かせている植物たち。

また、昨年と同じところに咲くものもいれば、いつからかどこからか種が飛んできたようで、増えていることもあったりする。

冬に見えなくなっても、地中ではちゃんと続いて、育まれているものがある。見えなくてもあるものがあるのだなぁと教えてくれます。

外に出て、まわりに耳を澄ましてみると、いろんな鳥が鳴く練習をしているようだったり、頭があざやかな緑色のカモが川を泳いでいたり、尾が黄色のかわいい鳥(おそらくキセキレイ)がすぐそばまで来たり、木にとまるアオサギを見かけたり、遠くからキジの独特な鳴き声が聞こえてきて、みんなまた戻ってきたんだなと嬉しくなります。

庭でも、冬には枯れていたハーブたちも、ちゃんと生きていたようで、息を吹き返しています。

昨年はじめて庭に植えたエキナセアとブラックマロウは、はじめてだったので越冬するかどうかも分かりませんでしたが、気づくと葉をつけていました。生き残ってくれていました。生命力のたくましさを感じます。

このふたつのハーブは、昨年はすごく大きくなったので、今年もまた、背丈を伸ばして大きく育ってくれる予感があります。楽しみです。

毎年咲いてくれるチューリップも、今年も元気いっぱいに咲いてくれました。見るたび、明るい黄色が、見る心にも明るさを与えてくれます。

もともと植わっていたままに、一度も球根を触っていないのですが、毎年、元気に咲いてくれています。

ほかにも、春の草花が、思い思いに咲いています。

あじさいも、梅雨時期にむけて、今から準備を始めています。

この4月は、富士吉田でも桜が満開になりました。東京や甲府と比べても富士吉田の桜は、例年、少し遅れて咲きます。

今年は海外からの観光客がものすごく多くて、桜の名所の忠霊塔はどう考えても混んでいるだろうな・・と思い、私自身は、桜を身近なところで散歩しながら楽しむことにしました。

富士吉田市内では、いわゆる観光地ではないけれど、いろんな場所で小規模に桜がきれいに咲いているところがあるので、毎年桜の季節になると通りたくなる道などがあります。

人があまりいないところで、しずかに桜を見るのが好きです。

桜を見ると、冬が終わって春が来た喜びもひとしおです。

春の風に吹かれながら、桜を見上げると、今年も春を味わえたな、と思えます。

そして富士山と桜はやっぱり似合う。

日本の美しくてなつかしいような風景だなと、富士吉田に来てから特に思うようになりました。

桜の下には、つくしもいました。

そして、桜の花と一緒に、富士山には「農鳥」が見えていました。

雪解けが進むと、富士山の右上あたりに見えてくる鳥のような模様を、地域では「農鳥」と呼んで、この模様が出てくるころを目途に、田植えをする時期を読んでいたと聞きます。

毎年、農鳥が見えるようになると、季節が移り変わったんだな、あの寒い冬がついに終わったんだな、と思えてきて、しみじみします。

富士山の雪がなくなるころには、ついに夏の季節になったんだな、とまたしみじみするのですが、それまでまだあとすこし、春の季節を楽しみたいです。

4月の草木染め

今年の4月から、「いのちの草木染め・基礎講座」という、連続4回の草木染めの講座を始めました。4月は、集まってくださった方々と、1回目の講座を行いました。

平日クラスと土日クラスとの開催となりましたが、どちらの日もいいお天気で染め日和でした。

会場として使わせてもらっている明見湖のはす池公園では、一周するだけで色々な桜を楽しめます。湖にはまだ蓮は育っていませんが、鳥が元気に泳いでいたり、地域の子供や大人が釣りをしていました。のどかで、とてもいいところです。

私の草木染め講座では、月に一度、計4回を通して、さまざまな植物を染めていく予定ですが、今回は枝を染める回でした。

ちょうど今年の春に、花を咲かせようとたっぷりつぼみをつけていたさくらんぼの桜の枝をいただくことができたので、その枝を染めていただくことにしました。

この枝は剪定されたものなので、実際にお花は咲かせることはなかったけれど、枝には春の花を咲かせようというエネルギーがたっぷりと蓄えられています。

今回はちょうど桜も咲く中、春を感じながら、桜のいのちの色を染めていただきました。

草木染めは、なかなか自分ではじめてみようと思うと情報があまりなかったり、本によって違っていて混乱したり、あるいはお鍋など用意するのに躊躇したりと、「ずっとやってみたいと思いながらも機会がなかった」というお声を聞くことがあります。

私は、草木染めには、(皆それぞれのやり方の好みはあると思うけれど)正解も不正解もないものだと思っています。安全な素材を使っていれば、キッチンでもできるし、お料理の延長のような感覚のところもある。

基本の流れが分かれば、ご自分でご自宅でも植物と触れ合うひとつの方法としてできます。色にいい悪いもないので、色の好みはあっても、失敗というのはないと思っています。

小難しいものではないけれど、いのちを扱うことなので、できるだけ植物や自然への感謝の気持ちを持って大切に行うことは大事にしたいと思って、「いのちの草木染め」という名前をつけて、お伝えしています。

よくよく考えてみれば、人も植物も動物も、同じ地球の上で、太陽や水、風、土に育まれて、同じ自然の摂理に生かされている。同じく、草木染めをするにも、火・水・風・土の力が合わさることが必要になります。

古代の日本の染師の人たちは、外敵や病気から守るために、薬草の色を纏うための色を染めていたそうなのですが、代々受け継がれてきたという染師の口伝には、火に心して向き合い、水や風や土、鉱物に感謝し、私たちと同じいのちを捧げてくれる植物に感謝をすることを忘れずに染めるように、という内容があるという記述を読んだことがあります。

火(太陽)も水も風も土も、普段当たり前にあるものと感じてしまうけれど、古代の人たちのような気持ちを草木染めするときだけでも意識できたら、生かされていることだけでも幸せを感じたり、人も自然の一部だと感じやすくなるように思います。

また、季節のサイクルによって植物たちのエネルギーは変化するし、人と同じく植物それぞれに個体差があったり、染める日の気温の違いや使う水の質の違いによっても変わるし、なにより、染めるわたしたちの気分によっても、手つきもかわってくる。

そんな、植物とわたしたち、自然界の要素がひとつに出会った結果、あらわれてくれる色は、同じ種類の植物で染めたとしても、まったく同じ色にはならないものです。

実際、草木染めの色見本の本などが出版されていますが、著者の方によっても掲載されている色は違うし、自分で染めてみても、まったく同じではないことも多くあります。

私が最初に草木染めを習ったとき、先生たちは答えを決めつけてしまうのではなく、「染めてみないとわからないよ」「どんな色になりたがっているだろうかと植物に耳を傾けること」というお話があり、頭で決めつけることなく、新鮮なよろこびのまなざしで植物の色と向き合っている先人でした。

わたしは、そういった草木染めと最初に出会えたから、今でも草木染めが好きなのだと思っています。

今日は、どんな植物の色と出会えるだろうか、とわくわくするような草木染め。

わたしは、講座でもそんな色との一期一会を味わってもらえたらいいなと思っています。

今回の枝は、今年の春直前ころに剪定されたばかりの枝なので、少し皮をむくと、まだ緑色でフレッシュ。

枝は、乾燥させておくとこの先の季節でも染められるので、枝があるうちはまだ染められますが、こうして実際に桜の花が咲くなかで、フレッシュなさくらんぼの枝の色を皆さんと染められることがとても嬉しかったです。

さて、講座でさくらんぼの桜の枝を染めるために、今回は準備に時間がかかるものだったので、事前に枝を煮出していきました。

(次回からは、講座のなかで煮出す作業もやっていきます)

最初は煮出しているとこんな色がでてきました。

これでも染められますが、私はここから雑味をとりのぞいたりして、もう少し時間をかけて準備しています。

そうして出来上がる染液は、このようなワインのような色になっていきました。

参加者のみなさんには、シルクの小風呂敷をさくらんぼの染液で染めていただきました。

シルクの優しい光沢のある布が、熱を少しずつ上げながら、徐々に優しく染まっていきます。さくらんぼの染液からは、少し杏のような、桜餅のような甘い香りが漂います。

途中では、染めた色を確認するために、外の自然光のなかで色を見てみます。

色とは不思議で、室内と屋外でも見える色が違うものです。

太陽を浴びた染まりたての草木の色も、キラキラと輝きます。

春の気持ちよい風にあてていると、シルクが風になびく様子を見ているのも気持ちが良いものです。

染め終わり、色を定着させて、しっかり水洗いをして、完成です。

最後に染めを終えるタイミングは、皆さんご自分で決めていただいて、それぞれの素敵な色に染まりました。

皆さん丁寧に染めてくださり、とても素敵な色となりました。

こうして、共に春の色を楽しんでいただけて、とても嬉しかったです。来月は初夏の草を染めてもらうようにしようと思っています。今から楽しみです。

桜を見て、桜の香りのなかで染めをしていたら桜餅が食べたくなったので、後日、和菓子屋さんで桜餅を購入してきました。

さくらんぼの枝を一緒に見ながら、さくらんぼ染めの布を敷物にして、桜を味わうひとときを楽しみました。

そんな、桜を満喫した4月となりました。

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藤崎 仁美

1989年名古屋市生まれ。大学ではフランス語を専攻。大学在学中、〈フジファブリック〉のイベントのために、はじめて富士吉田へ訪れる。卒業後は愛知県のエンジニアリング会社で総務を経て、社内異動によりNX(3DCAD)の講師を務める。
そのころ、仕事のかたわらで週末京都の学校に半年間通い、草木染めや手織りを体験。染織や自然と親しむ暮らしがしたいと思うようになる。そして、2015年、〈宮下織物株式会社〉へ入社するために富士吉田市へ移住。未経験から、ジャカード織物の機織り職人として6年間勤務し、2022年春に退職。
現在は、染料植物を育てて草木染めをしたり、植物と親しむ暮らしを楽しんでいる。

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